2015年12月16日水曜日

第131回:「大人の流儀」伊集院 静

レーティング:★★★★★☆☆

今年初めて読んだ作家の一人が標題の伊集院さんです。第116回に伊集院さんの「いねむり先生」をレビューしており、その時に出会いについて書いていますので、もしご興味ある方はそちらも参照頂ければと思いますが、今回は小説ではなくエッセーです。これが連載されている週刊現代は読まないので、本になるまで知りませんでしたが、かなり人気のあるエッセーシリーズのようで、本書は2009年~2011年1月まで連載されたものを一冊にしています。

小説でのやさしい語り口とは異なり、このエッセイの面白いところは伊集院さんのこだわりが満載で、包み隠さず語られているところです。それでこそエッセイなわけですが、悪く言えば独断と偏見に溢れており、私はとても好きですが、人によってはかなり不快になるかもしれません。女性や若い方などはかなりむっとされるような記述もそれなりにあります。実際、女子供は寿司屋にいくな(私が言っているわけではなく、本書にほぼそのまま書かれています)といった章については、かなり議論が起きたようです。

内容についてはさらりと読めるものでして、実は2冊目、3冊目も既に読んだ(既に本日時点で5冊目が発売されています)のですが、いずれも2時間くらいあれば十分です。本書は色々と面白い話がでているのですが、銀座の料理屋の話などは個人的に殆ど(一部の飲み屋を除いて)銀座にご飯を食べに行くことがないので興味深く読みました。湯島、上野あたりも良く出てきます。

しかしなんといっても本書のハイライトは、巻末に付されている「愛する人との別れ」です。ご存知の方も多いかもしれませんが、伊集院さんは故・夏目 雅子さんと結婚・死別されています。その時の出会いから、奥様の病死、その後の25年が淡々とした筆致で語られ、この淡々とした中ににじみ出る故人への愛情や生き続ける悲哀に胸を打たれます。この章については、偉そうにこれ以上コメントするのも野暮というものですが、ぜひ一度読んでいただきたいと思う名文です。

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