2014年10月13日月曜日

第102回:「Twelve Y.O.」福井 晴敏

レーティング:★★☆☆☆☆☆

第44回江戸川乱歩賞を受賞した作品です。何回かレビューしている福井さんの1998年刊行の一冊(読んだのは文庫版)で、時系列でいうとこれまでにレビューしたものより、更に前の作品となります。

さて、レビューですが、正直に言ってかなり残念でした。すでに書いたとおり、レビュー済みの二冊より前の作品ということもあり、かなり文章の癖が悪く出ており、話もリアリティに欠け、まとまりがありません。もっといえば、江戸川乱歩賞に値するのか微妙な作品です。ここら辺の事情は、解説の大沢在昌氏の文に詳しく出ていますが、他の作品が相当不作の年だったのかもしれません。

内容は福井さんの話に典型的な非公然組織のメンバーが様々な陰謀に巻き込まれ、そして巻き込み・・という話ですが、率直に本作以降の作品とかなり似通ったテーマとメッセージであり、もう少し作品ごとの変化を期待していた身としては残念です。また、例えば米国の描写も非常に単調で、わりと明確に反米的なメッセージが出ており深みに欠けます。福井さんの作品が相当好きな方は別として、基本的にあまりお勧めできない一作です。なぜ大沢さんがここまで押されたのかも良く分かりません。