2018年9月29日土曜日

第198回:「最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと」マーカス・バッキンガム

レーティング:★★★★★☆☆

ビジネス本は結構読んできたんですが、書店にいくとリーダーシップやマネジャーの役割といったジャンルの本が山ほどあります。このジャンルの本は、いわゆるソフトスキルを中心に描いているだけにつかみどころがなく、やや説教じみた内容が多く、更には書いている人によってスタンスが全く異なるのがあるあるです。要は、定説がなく客観性が得られ辛く(だからこそ諸説振りまいていろんな人が書けるジャンルなんだと思いますが)、その意味で科学というより、かなりアートの要素が強くなりがちです。

本書も正直にいってそういった特徴は一定程度ありますが、かなりの人にインタビューして実例を交えているので、相応に説得力がありますし、奇抜ではないがあまりに常識的な内容ではないという意味でとてもバランスがよく、腹落ちする内容の一冊となっていました。ちなみに、私は「タイトルが異様に長い本は漏れなく内容が残念」という経験からの確信を持っているのですが、今回はあまり当てはまらないかったようで、やはり先入観を強く持ってはいけないなと反省しています。英題は「The One Thing You Need to Know: ...about great managing, great leading, and sustained individula success」というものでした。長いですね。

本書が言いたいことはとても明快です。リーダーは、あるべき姿を「明確に」示すことが大事。そうでないと人が付いてこない、新しい未来を見せられない。マネジャーは、部下の個性や強みの違いを把握し、強みを伸ばすことに注力する必要がある。型にはめて弱みを消す努力は多くの場合報われないので、徹底的に個性や強みを伸ばす手助けをすべき。そして、個人の成功は如何に不得意なことや情熱を感じないことをしないか、そして自分の個性や強みを発揮できることを続けていくかに掛かっている。バランスをとる必要はない。ということに集約されます。

これがどこまで正しいのかというのは人によって見方が分かれると思いますが、自分を振り返ると年下の同僚などに対してはここが弱いからいろいろと手助けをしよう、強みは勝手に伸びるし、伸ばしていけるだろう、というパターンで考えていることが多かったので、この本のアプローチを取り入れてみようと思いました。実感的に弱みを消すのはなかなかうまくいかないケースが多かったです。あと、自分の弱いことややりたくないことを排除することは容易ではありませんが、なにか工夫できないかと、これも考えていきたいと思います。示唆に富む一冊だと思います。

2018年9月8日土曜日

第197回:「聖の青春」大崎 善生

レーティング:★★★★★★★

もうずっと前、村上聖(さとし)さんが亡くなったのは平成10年ということなので、20年も前になります。1998年のこと。自分はそのころテレビニュースなどで何度か天才棋士の早すぎる死を聞いたものの、当時はあまり深く気に留めることがありませんでした。29歳の早すぎる死、幼いころから病気を患いながらも、棋士として素晴らしい才能を発揮したが道半ばで、という程度の認識しかなかったものでそれきりでした。しかし、なんとなく気になって、ずっと忘れて今日に至っていたところ、この前、図書館で偶然目に飛び込んできて、思わず借りました。

本書は村上さんや師匠である森さんと深い親交を結んだ将棋雑誌の編集者が描いた一冊であり、何気なく読み始めたものの、今まで読んできた本の中で、激しく心を揺さぶるトップ3に入る衝撃を受けました。村上さんの絶え間ない闘病の中での不屈の戦い、ご両親の温かい無私の支援、お兄さんの愛情と苦しみ、師匠であった森さんの苦悩と惜しみない親のような愛情、羽生、谷川といった将棋界の綺羅星のようなライバルたち(正確には谷川さんは目標であり、ライバルとは位置付けがたいが)が生き生きと描かれています。そして見逃せないのが、昭和後期から平成初期に掛けての大阪のアパートを中心とした庶民的な暮らしや千駄ヶ谷の将棋会館のあたりの風景も描かれ、一人の人間の生きざまを描きながら、その周りの大きな愛情や勝負の厳しさ、そして時代まで切り取る作品に仕上がっています。著者の筆力に脱帽です。

小学校の大半を病院で過ごす生活の中、将棋に傾倒していった村上さんは、文字通り人生すべてを将棋に捧げ、最後は一戦一戦ごとに文字通り命を削りながら棋戦を行いました。その思いの強さや執念、病気から培った独特の生命観。そんな中でも、人生を楽しめた北海道旅行や麻雀などで遊ぶこともできたエピソーがあったのは、本に明るさを添えています。自分は村上さんとは境遇が全く違うけれど、それだけ真剣に前向きに人生を生きているのかと考えると非常に心もとないものがありますが、命の大切さや高い目標に向かった真剣に物事に取り組むことの重要性を改めて思い起こさせてくれます。一級品の作品であり、高校生や大学生にぜひ読んでほしい一冊です。

2018年9月1日土曜日

第196回:「グリード ハゲタカⅣ」真山 仁

レーティング:★★★★☆☆☆

たまたま同じような時期に読み終わったので、久々の一日2回分アップとなります。なぜか最近は気分的に本を読みたい、読める感じがするので読書の秋を先取りでいろいろと読みたいものを読んでいきたいと思います。さて、本書は今更説明不要なハゲタカシリーズの第四作です。第三作(日本の大手自動車メーカーが舞台)は読んでいないのですが、先にこちらを読んでしまいました。現在(もう終わったかな)テレビドラマでハゲタカがやっており(今度はNHKではない)、それに触発されて久々に読みたいと思い借りましたが、テレビドラマは全く見ていません。それは別としてテレ東でやっている「ラストチャンス再生請負人」をたまに見ますが、結構面白いです。仲村トオルはいつまでも若々しくてかっこいいですね。

本書に戻ると、いつも通り主人公の鷲津が率いる買収ファンドが主役となりますが、今回はリーマンショックを舞台としてニューヨークやワシントンDCで話が進行していきます。もう10年前かと思うと感慨深いですが、ちょうどリーマンが倒産寸前となり、どこまで投資銀行が潰れるのか、AIGはどうなるのか、商業銀行ももしかしたらというような話が毎日のように飛び交い、非常に切迫感があったことを覚えています。リーマンが破たんし、従業員たちが小さな段ボールや荷物をまとめて出ていく映像は強く頭に残っています。今回はそういう投資銀行とアメリカの名門企業が対象として出てくるのですが、リーマンショックの説明や描写が長く、肝心の買収がゆっくりとしか進まないので、ハゲタカの真骨頂の一つである息詰まるハイペースでの進行とはなっていないのが、やや残念でした。しかしながら、全体としてはメッセージ性もあり、またスケールの大きさも十分の読み応えある一冊です。

ハゲタカシリーズは本作がメインモノの最新作ですが、2015年に外伝という大阪を舞台とした作品が一作あるようです。著者の真山さんは大阪出身ですので、土地勘もあるでしょうし、面白い作品に仕上がっているのではないかと思います。ぜひ読んでみたいところです。

第195回「より速く、より遠くへ!ロードバイク完全レッスン」西 加南子

レーティング:★★★★☆☆☆

今回もソフトバンク新書の一冊です。全く知りませんでしたが、西さんは38歳で全日本選手権(2009年)を初優勝された遅咲きのロードレーサーであり、いまも現役で活動を続けているプロ選手ということです。もともとトライアスロンをされていたようですが、自転車が合っているということで特化し、2009年ころまでは派遣社員と二足の草鞋を履いて活動をされていたとのこと。

そんな西さんがアマチュアであり、かつどんどん能力を高めたい、あわよくばレースにも出てみたいというロードバイク乗り向けに書かれた一冊となります。とても平易な文章で段階を追って説明がありますし、さらには日中働いている人を想定した現実的な内容であるため、とても参考になります。どうやって50Km、100Kmと距離を伸ばしていくか書いており、さらに家ではローラーを使って平日こなし、また休息を十分に取ることは強調されています。また、疲労が心拍数である程度わかるというのは目からうろこであり、自分も実際図ってみたい気になりましたが、いかんせんツールをどうするのかと基礎心拍数からまず図らないといけないので、なにか探してみたいと思います。

初級からステップアップしていこうという方にはうってつけと思われます。今の自分にはここまでやる時間が残念ながらないので、すこし余裕が出来たらいろいろとトライしてみたいところです。