2018年4月21日土曜日

第187回:「風の歌を聴け」村上 春樹

レーティング:★★★★★★☆

四月に入って少しいろいろと落ち着くかと思いきや、なんだかんだと忙しさが続き、時間が空いてしまいました。そんな中で家に転がっていて、本当に久々に読んだ一冊です。当ブログでも何回も触れていますが、私は世にいうハルキストなので、原点に返ってもう何度目になるかわからないこの一冊を読み返してみました。記憶が概ね正しければ、おそらく5回目くらいだと思います。

本書は村上春樹さんが世に出た一冊で、群像新人賞を受賞し、文庫版は1982年に出ています(単行本は1979年)。1982年、まだ昭和50年代ですね。懐かしいというか、まだ幼かったので断片的な記憶しかない時期ですが、ずいぶん遠くに来たものだという感じがします。

言わずと知れた文学界に衝撃をもたらした散文ともポエムともいえない作品です。ラジオ、昔の記憶などが断片的に挿入され、ジェイや鼠は本名すら明らかになりません。主人公だってそうです。そしておぼろげにわかるのは、神戸と思しき地元に帰省してきた大学生の話だということ。とても危うい年代の強い感受性と無鉄砲さと、奇妙な老成の仕方が混ざり合ってとても独特な作品として仕上がっており、2018年の今読んでもとても新鮮でまだまだその輝きを放っています。

これを読むと初期のほかの作品、「ダンス・ダンス・ダンス」や「ノルウェイの森」も読みたくなります。2000年代の作品も素晴らしいのですが、初期はまったく違った新鮮さを感じる文体でいつよんでもワクワクします。