2015年6月13日土曜日

第118回:「もう、怒らない」小池 龍之介

レーティング:★★★★☆☆☆

最近お坊さんの本がちらほら書店に並びます。昔からそういう本は書店に並んでいたのですが、どちらかというと仏教関連の解説などが中心でしたが、この10年くらいでしょうか、瀬戸内寂聴さんの影響か、どちらかというと生き方に関する本が増えてきた気がします。平凡に言えば、1995年以降の日本社会の変容やグローバル化に伴い、人々の不安が増してきているということがあるかと思いますが、それに留まらず仏教を始めとした大昔からの「智慧」というものに再び脚光があたっている気がします。

さて、この著者はかなり有名になった同年代のお坊さんなのですが、今回初めて著作を読みました。結論から言って平易に仏教の考え方を紹介しながら、分かりやすくどうやって怒りというものが生じるかについて説明がなされます。月並みではありますが、不安や恐れ、無力感、妬みや嫉みなどがそのもとであり、また怒りというものが衝動的な強い情念であり、それ自体に中毒的な作用があることが紹介されます。

さらっと読める一冊ですので、日ごろ怒りを感じることの多い方はお勧めです(かなりいると思いますが)。そして、面白かったのは、目を閉じて自分の体の位置や姿を感じる、更に自分の感覚器が感じていることを認識する、そして自分の気持ちの動きについて感じる、という一連のステップです。これは昨今はやりのマインドフルネスにも通じる感覚かとおもいます。