2011年8月27日土曜日

第20回:「さよなら、愛しい人」レイモンド・チャンドラー

レーティング:★★★★★★☆

記念すべき第20回目に到達しました。数少ないReaderの方に於かれては、更新があまりに遅いので、もはやストップかと思われた方もいるようですが、単に夏休み、労働時間の長さなどから本が読み終わらないのが理由です。今回は、第16回でレビューしたレイモンド・チャンドラーの(私にとって)第2作目で、前回同様に村上春樹の訳です。

結論からいうと、前回レビューした「ロング・グッドバイ」より難解かつ複雑であり、読み進めるのに難儀し、読み終わった後もいまいち全体像を把握できていませんが、文章の旨さや筋の巧妙さについては十分に堪能ができ、前回よりは低いもののこのレーティングとなりました。

おなじみ私立探偵のマーロウが主人公ですが、今回は警察と裏組織がメインの舞台となります。いきなり荒っぽい描写から始まりますが、この出来事を通奏低音として、一気にエンディングに行く様はかなり圧巻でありますので、もしチャンドラーに興味を持ってもらえた方が居たら、最初に読むことはお勧めできないですが、ぜひ手に取っていただきたい作品です。

ミステリという性質上、あまり多くを語ることは即ネタばれにつながるので、抑制したいと思いますが、最初の酒場のシーン、警察署で虫を見るシーン、船に潜入するシーンが強く頭に刻まれており、その前後のぴりっとした簡潔かつ臨場感ある文章は、さすがチャンドラーと僭越ながら思える素晴らしい文章かと思います。村上氏の翻訳は、正直に言えば「ロング・グッドバイ」ほどの輝きはないようにも思えますが、あとがきで氏が書かれている通り、原文は相当難解なのかもしれません。

非常に楽しんだのですが、3週間ほど時間をかけてしまい、やや理解不足のところがあるので、ぜひ少し経ったら読み直してみたいと思っています。また、その時にどうレーティングや印象が変わるかも書いてみたいと思います。これから読書の秋になり、読みたい本も溜まっているので、なんとか時間を工面してどんどんUPしていきたいと思いますので、引き続き宜しくお願いします。