2018年12月30日日曜日

第204回:「隠蔽捜査」今野 敏

レーティング:★★★★☆☆☆

最近、本を読むのは結構体力というか知力というか、要は力が居ることなんだなと実感します。10代の頃はそれこそ一日中読んでも大丈夫だったし、一週間に大げさではなく数冊というペースで読めていました。今はそんな時間が日々取れないことは別にしても、結構集中して読むと疲れを感じることがあり、202回、203回及び今回のようなやや軽めというかエンタメ系の読み物に走ってしまいます。難しい哲学の本なんて読んだら、五分で寝てしまいそうです。

さて、本書は今野さんという方の小説で、この方の本は初めて読みます。吉川英治文学新人賞受賞作で、もともとは2005年に刊行とのこと。どうしてこの本を選んだかですが、この前古書店にいってぶらぶらと見ていたら綺麗なのに安くなっており、お試しということで買ったものです。最初の方は慣れない文体で、なんだかあまり盛り上がらない感じでしたが、主人公(警察官僚)の意外な家族の悩みが露呈してから、一気に話が面白くなりました。後半は文字通りぐいぐいと一気に読んでしまいました。

本書で今年のレビューは最後となりそうです。振り返るとしめて25冊ということで、最少であったら昨年よりはぐっと回復しましたが、このブログを始めてからはかなり少ない水準となりました。来年はもう少し時間が取れそうな感じもあり、好きな本をどんどん読み続けていきたいと思います。

2018年12月25日火曜日

第203回:「オレたちバブル入行組」池井戸 潤

レーティング:★★★★★★☆

第96回でレビューをしていますが、ほぼ3年ぶりくらいに再読しました。正直にいって読んでいる間中、なんか読んだ気がかなりするなと思いつつ、面白いのでそのまま読んでしまいました。2度目ですが、改めてよくできている一冊だと思いました。

内容ですが、支店長の強引な決定により融資を決定した取引先が、突然倒産。いろいろと調べているとどうも計画倒産の疑いがあり・・というものです。本作は様々なテーマを織り込んでおり、下請けに甘んじる中小企業の困難さ、銀行の支店に圧し掛かるプレッシャー、その中でいかに正義を貫くか、またどうして道を誤るか、更にはいちかばちかの中国進出など現代的なテーマを多数読み取れます。

年末年始にはこういうさらりと読めるエンタメものを読むのが結構好きです。また、出張などにもっていくにも重くなく良いかと思います。

第202回:「銀翼のイカロス」池井戸 潤

レーティング:★★★★★★☆

久々に池井戸さんの一冊を読みました。いわゆる半沢直樹シリーズの第4冊目で、JALの再生を扱った一冊です。基本的には、JALの債権者である半沢直樹属する東京中央銀行が、政権が作ったタスク・フォースに債権放棄を迫られるが・・というお話です。この関係ではよく半沢シリーズで出てくる金融庁もいつもどおり出てきます。たぶん著者の問題意識、すなわち恣意的な航空行政、自身を顧みなかった航空業界、人気取りに走り正当性を失った時の政権などが強く念頭にあり、現実をデフォルメしながらもなぞる展開となっており、相当の取材をしたうえで批判的に状況を読み解いていきます。

中堅中小企業を取り扱った半沢直樹シリーズの前作までとは異なり、本作はダイナミックに政府、行政、ほかの債権者などのプレーヤーが出てくるので、スケール感がありとても面白い内容となっています。最近は半沢シリーズ新作が連載されているのかどうか知りませんが、ぜひまた大きなテーマを取り扱ってもらえると面白いものが仕上がるのではないかと思います。これを書いている12/25現在、日経平均が1000円以上下げていますが、2019年はどういうマーケットになるのでしょうか。システミックなリスクや戦争といった大きな顕在化した地政学リスクがなければ大きく底割れすることはないような気がしますが、来年もボラタイルなマーケットになりそうな気がします。