2015年4月26日日曜日

第115回:「蒼い描点」松本 清張

レーティング:★★★★★☆☆

このところ仕事がやや忙しく、また今後も8月くらいまで忙しくなりそうなので、暫く読書がやや停滞することが見込まれます。しかし、絶対的な読書時間の不足に加えて、今回レビューする1冊は本当に長く、文庫本1冊なのですがほぼ800ページほどもあります。とても面白かったのですが、この圧倒的なまでの長さが必要であったのかは正直疑問であり、星マイナス1としました。しかし、いつもどおりとても面白い一冊でした。なんと現在までの4回もドラマ化されているそうです。

さてWikipediaによれば、本作はロマンティック・ミステリーと呼ばれているそうで、若い男女二人が事件の真相解明に動くのですが、絶妙な距離感で心の揺れを伴いながら話が進んでいきます。複雑な謎解きとは別に、この側面がとても繊細に瑞々しく描かれており、恋愛小説のような読み方も可能です。また、すぐれた話には欠かせない要素ですが、人物の造形がとてもよくできていて、飽きることがなく、また登場人物が多くてもとても苦痛だということにはならないよう工夫されています。

内容については言及をしてしまうとネタバレになるので、1点だけ。舞台の多くが箱根なので、もしGWや夏休みに箱根に行かれる前後や最中に読むととても面白いかもしれません。特にどういう名所がということはありませんが、何度もいまでもお馴染みの箱根の有名どころが出てきますので、なんとなくあそこの地理感覚が頭にあると、より面白く読めるかもしれません。

昨今は時間がないのと、個人的に経営学関係のものは大体読み終えた(すごく不遜な認識であることはよく理解していますが)というか、しばらく読む気が起きないので、暫くこういったミステリー、とりわけ多作な清張さんの作品を読み進めていこうと思います。昭和中期の文学作品は特別な香りがあってとても素敵だと思います。