2020年2月11日火曜日

第230回:「親鸞(完結篇)」五木寛之

第229回:「親鸞(激動篇)」五木 寛之

レーティング:★★★★★☆☆

前回レビューした親鸞3部作の真ん中に当たる激動篇となります。まさに文字通り激動ですが、流刑となり京を追われた親鸞が妻の故郷である越後で暮らし始め、その後、故あって東国に移り住むまでの数十年をカバーしています。越後での暮らしは楽なものではありませんが、妻と力を合わせ、また外道院などある意味高い仏性を持った人物たちと出会いながら、つつましいながらも幸せな生活を送り、子宝にも恵まれていきます。通して読んでいくと、この時期が人間の生活という観点では一番充実していたのではないかと思われる暮らしぶりです。

本日も野村監督が亡くなられたというニュースがありましたが、親鸞も終生の師であった法然が逝去したことを受け、自らの本願を探し、かなえるため、当時はまだ発展途上にあった東国に渡ることを決意します。都とも越後ともかけ離れた生活が始まりますが、筑波山の見える草庵にて、ここでも夫婦で力を合わせて生活を行い、幸いにして多くの信徒や信者を得ることに成功します。他方、1部作目から通奏低音になっている信仰の先鋭的な側面がちらちらと出てきて、まるで親鸞の思索や思想が突き詰められればられるほど、それへの反感もまた大きくなっていくようであり、3部作目への伏線がうまく引かれていきます。

2部作目ですが、中だるみせずどんどん読めます。