2015年12月7日月曜日

第130回:「女のいない男たち」村上 春樹

レーティング:★★★★★☆☆

2014年4月刊行の村上さんの短編集です。正直に言って相当のハルキストだった私としてはそこまで期待していなかったのですが、期待水準とほぼ同様の一冊で良くも悪くも驚きがありませんでした。大作家に対して大変上から目線で失礼ですが、ファンであるが故の高慢としてお許しください・・。
まず私の理解では、村上さんは初期の短編が素晴らしく、本当に何度も再読したものですが、阪神大震災を題材とした『神の子どもたちはみな踊る』から極端に短編の質が落ちた感じがしています。もちろん凡百の作家からみたら十分な水準だとは思いますが、初期の神がかり的な切なさや悲しさ、不思議さは(ストーリーがたとえ似ていても)再現できていません。本作もその意味では予想どおりでした。

さて、作品は様々なタイミングで発表された以下のものです。

1 ドライブ・マイ・カー
2 イエスタデイ
3 独立器官
4 シェエラザード
5 木野
6 女のいない男たち

個人的な短い感想としては、木野が雰囲気が良く感じられて好きでした。登場するバーのあたり(実在)は閑静で、とても雰囲気のあるところで足を運ばれて方も多いのではないでしょうか。少し怪談めいた感じもあって乙です。独立器官もとてもよいです。それはないだろうと思わせながらも、どっかでそういうおじさんが居てもおかしくないよな、ちょっとうらやましいよなと感じさせる短編。あとは初期の短編に少し雰囲気が似ているのがイエスタデイです。ありがちですが三角関係に近い状況になり、だいたいにおいて有能で綺麗な若い女性が出てきます。そしてそれに翻弄される若い男子たち。。。

こう色々と書いているとなんだかんだ偉そうに書きましたが、楽しんだ一冊でした。しかし、村上さんはあきらかに長編作家になってきているというのが私の確信ですので、ねじまき鳥を大きく超える長編を書いて頂きたいと心から切望しています。

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