2012年11月11日日曜日

第59回:「働く君に贈る25の言葉」佐々木 常夫

レーティング:★★★★★☆☆

ビジネス書で昨今かなり人気のある佐々木氏(元東レ経営研究所社長)の本です。就職したての甥への手紙という形式をとりながら、著者が社会人生活で大切だと思ったこと、大事にしているエピソードなどを書いているものです。

数年前だったと思いますが、著者の今までの来歴を書いた短いものを読んで衝撃を受けました。普通のビジネス・パーソンならとっくに挫折してしまうだろうなというような(主として)プライベートの難しさを抱えながら、仕事も家庭も放りだすことなく、妥協することなく取り組み、東レで大きな成功を収められました。相当に厳しい局面があったと思いますが、それを乗り切るバイタリティであり覚悟は尊敬に値します。なかなか本を読む機会はなかったのですが、今回手に取ってみました。

書いてあることは、誰も異を唱えない普通のものばかりです。しかし、そのシンプルというか真っ当さ(それを実践すること)こそが難しいのかもれません。たとえば「書くと覚える、覚えると使う。使うと身に付く」とか「せっかく失敗したんだ、行かさなきゃ損だよ。」などです。

内容を余り書くとただのネタばれになってしまうので控えますが、特に面白かったチャプターは、「欲を持ちなさい。欲が磨かれて志になる。」、「「それでもなお」という言葉が、君を磨き上げてくれる。」、「逆風の場こそ、君を鍛えてくれる」と「運命を引き受けなさい。それが、生きるということです。」あたりです。どれもこれも書いてみると陳腐極まりなく聞こえますが、佐々木氏の努力を重ねた半生のエピソードと一緒に語られるときわめて説得力があります。レーティングは普通ですが、ビジネスパーソン全般にお勧めの一冊です。

第58回:「リストラクチャリング」ローランド・ベルガー・アンド・パートナー・ジャパン

レーティング:★★★★☆☆☆

人間の健康と一緒で、企業の業績も浮沈がありますが、企業の浮き沈みは時に従業員や取引先、株主などに大きな影響を与える社会的なイベントとなります。昨今、一部業界について企業業績に関する厳しい報道がなされたり、また大きな(他のセクターの)企業が国の関与もあり再生を遂げたりと、様々なリストラクチャリングに関係するニュースが多くなってきている気がします。

2000年前後のバブル崩壊後の不良債権積み上がりの時期、大手の金融機関を始めとして多くの破たん事例があり、毎週どこかで企業が行き詰っているように感じました。あのころほど暗い雰囲気はありませんが、そのあたりからどうして企業の業績は悪化するのか、一時的な悪化と大きな問題につながる悪化を隔てるものはなにか、また悪化したらどうすれば復活できるのか、そういうことへの興味が続いています。

本書は2001年発行なので、そんな厳しい経済状況に追い込まれ、金融機関の資産サイドを整理、融資先を再生させることが大きな社会的課題となっていた時期の本です。コンサルティング会社が出す本に典型的なことですが、分かりやすく、多少の事例を交えながら(ただし、公開情報を超えない浅いもの)、モデル的な対処について解説しています。本書は、真っ当に「止血」(キャッシュの流出阻止)、「描く」(成長シナリオの創出)、「進む」(シナリオの実行)という流れでポイントを書いています。この辺りは実際に数多くの事例を手掛けているはずなので、細かいコツまで含めて書いてあり、ここまで目配せしているのかと勉強になります。

他方、ルフトハンザ、日産等のケースも言及がありますが、こちらは新聞に書いてある程度の記事であり、あまり新しいところはなく、それを目当てに買うとがっかりされるかもしれません(もとい、すでに本屋には売ってない本かもしれませんが)。これ以上を知りたかったら、コンサルティングを申し込んでね、ということかもしれません。