2015年9月21日月曜日

第124回:「人生を変える「習慣」の力」齋藤 孝

レーティング:★★★★☆☆☆

夏に「七つの習慣」を読んで以来、習慣というものに関心を持つようになりました。たしかに日々の様に無意識に実践するからこそ、その積み重ねは人生に大きな影響を与えるのは確実であり、ちょっと気を付けたいと考えています。

最近気を付けたいと思っているのは、摂取カロリーと運動です。20代は好きなものをどれだけ食べても太らず、ライス大盛りとか飲み会の後にラーメンなど普通にやっていたのですが、30代を過ぎると徐々に食べたものが2週間~1カ月後に如実に体脂肪率と体重に跳ね返ってくるようになったことを発見しました。毎週一度はジムで体組成計に乗っているのですが、本当にストレートに日々の生活が反映されます。仕事や会食などで帰りは概して遅く、また出張で思うように休日も時間が取れないので、まとまって運動するのは週1のジムが限界とすれば、なんとか口から入れるものを制限するしかありませんが・・。

さて、本書は齋藤先生が体験的に獲得したいくつかの優れた習慣について紹介しているものです。どれも分かりやすく、また先生が認めているように他の先生の本でもっと詳細に紹介されたりもしているものが大半ですが、幾つか真似してみようかと思うものもあります。備忘も兼ねて、一部だけ列挙します。

1.手帳を一日10回見る
2.疲れたら3秒吸って、2秒止めて、15秒吐く
3.自分のストレス許容量を把握する(何人会うか、何時間働くかを決める)

意外と少ないですが、他にも沢山の習慣が紹介されています。どれも面白いヒントに満ちているので、人によってこれはよいなと思うのは異なると思いますが、それぞれに読み甲斐があると思います。仕事をするときにストップウォッチで測る、というのもよさそうですが、あまり自分にプレッシャーをかけないためにもこれはやめておこうかと思いました。なにより職場でひかれそうですし。

2015年8月23日日曜日

第123回:「のぼうの城」和田 竜

レーティング:★★★★★★☆

今月一度レビューした和田さんのデビュー作です。こちらも本屋では当時かなりのヒットでしたし、盛んに新たな時代小説ということで宣伝されてましたのでご存知の方も多いかもしれません。遅ればせながらやっと読みました。

舞台設定は1590年の羽柴秀吉軍の壮大な小田原攻めの一環として、石田三成が大谷吉継などを率いて忍城(現在の埼玉県行田市付近)を攻める話です。忍というキーワードからなんとなく人じゃものなのかなどと想像していましたが、城攻めでありとても変わった城主(正確には城代)をめぐる話です。読んだばかりの「村上海賊の娘」と比べてしまうのですが、テンポが速く軽やかな展開です。このデビュー作からすでにキャラクター描写が際立っており(ある意味分かりやすい)、毎度和田さんの小説の最後の後日談の部分を読むとせつない気持ちにさせられ、それだけ各登場人物に自然と入れ込んでしまっていることに気づきます。

歴史好きの方にはなにをいまさらという話かもしれませんが、戦国時代は善悪を超えて今とはかなり違うパラダイムが流れていたようです。侍にとっては武士道や生き様、武辺、名誉といったものがとても大事であり、忠義や忠誠も強調される一方、頻繁な裏切りや裏切りの約束、金銭や俸禄による雇用(主)の変更があったりとかなりのフレキシブルさも見られます。また、農民も元武士であったものや、無力さと団結することによる力の結集が表裏一体であったり、割と利害関係で明確に領主と結ばれていたり、封建時代ならではの思考や行動様式が見られるようです。この部分はどんな歴史小説を読んでもいまだに尽きず新しいものが出てきて、とても不思議ですし興味があります。

さわやかな一冊であり、2日程度で十分読めますので関心ある方はぜひ手に取ってみてください。

2015年8月22日土曜日

第122回:「流星ワゴン」重松 清

レーティング:★★★★★★★

今年ドラマ化された一冊なので、タイトルを聞いたことがある方、ドラマは見たという方も多いのではないでしょうか。有名な重松さんの一冊であり、遅ればせながら読みました。実は高い評判を聞いていながら重松さんの作品を読むのは初でした。きっかけはドラマが面白いと聞いて何話か断片的にみたことです。香川 照之さんが出てるということでみたのですが、正直前提知識ゼロで設定の意味がよくわからず、やめてしまいました。しかしあの不思議な設定は何なんだろうということが気になり読んでみました。

読んでの感想ですが、これは反則だろうというものです。テーマは一読して分かるとおり父と子(とりわけ息子)です。男性、特に30~40代で自分に息子が居る方にはぐっと身につまされる本ではないでしょうか。正直読み進むのが辛いところが何度もあります。世代、生と死、運命といったものをまざまざと提示してきます。父親と息子の関係はとてもとらえどころがなく、微妙な感じです(母親と娘も違った意味でそうだと思いますが)。わが身を振り返っても解説で見事に書かれているように接している総時間数が圧倒的に足りない気がしましたし、コミュニケーションが(一般的な話ですが)やや両方とも下手だったりするので、ますます疎遠になりがちです。

本書の秀逸なところは単に親子関係を描写するだけではなく、死者の視線を通してこの世界を描くことで、逆説的に生きること、一生懸命生きることについて描いていくところです。そしてそれを可能にする車がワゴンになるのですが、このワゴンに関する下りは何度も泣けるところがでるので公共交通機関では読めません。本書はいわゆるお涙ちょうだいではないのですが、切実な叫びを沢山含んでおり、とてもよい意味で文学的ですし映画的でもあります。

日ごろ見過ごしていること、聞き流していること、なんでもないと思っている時間、父の、息子の目線に立って考えること、そういう凡庸ですが大事なことを思い出させられ、大げさに言えば日々を大切に生きていかないといけないと思われられる一冊です。とてもよい一冊で、お父さん世代はもちろんのことで10代、20代の方にもぜひ読んでいただきたいと思います。

2015年8月3日月曜日

第121回:「村上海賊の娘(上)(下)」和田 竜

レーティング:★★★★★★☆

図書館で昨年予約してからほぼ1年待ったでしょうか。区全体ですが、なんと1,000人近くが先に予約を入れており、(複数冊あるので)1年近くで手元に届きました。数年かかるかと思っていたので、その意味ではかなり早いでしょうか。『のぼうの城』などで有名な著者ですが、これもまた不覚にも一度も読んだことがなかったのです。

結論から言うと、(上)巻ではなかなか文体や描写のあっさりとした感じ、妙にしつこくて残酷な戦闘描写にやや閉口する感があり、個人的には相当低い評価をしていました。しかし・・・(下)巻に読み進めていくにつれて不思議なものでキャラクターが生き生きと動き出し、絡み合い、壮大なフィナーレに向かっていくその技量に随分驚き、最後の方ではすっかり主人公のファンになってしまう始末でした。イメージとしてはかなり軽いテンポでさくさく進んでいき、相当漫画チックな展開をします。これは著者が元々脚本だということに起因するものと思われ、色々と話題の百田尚樹さんの本ととても近い感じです。

しかし僭越ながら高く評価したいと思うのはこの題材の選び方です。基本的には毛利家、村上海賊、本願寺の顕如、鈴木孫一あたりがメインで出てきますが、渋い木津川合戦をテーマとしており、資料が少ないであろう海賊や海戦を主題に据えています。陸の物語、信長や秀吉、家康から見た歴史は多数ありますが、本作品は信長の敵であった本願寺の更にその支援をせんとする者の視点から描かれており、さらに海賊らしい風習や考え方が随所に表れてきます。

テンポが良くどんどん読み進めることが可能で、しかしながら独自の視点から歴史を活写している本作品は文章全体の粗さや会話の単調さを勘案してもとても面白いエンターテイメントと言えると思います。戦国モノが好きな方にはぜひお勧めです。

2015年7月25日土曜日

第120回:「完約7つの習慣」スティーブン・R・コヴィー

レーティング:★★★★★★★

もう初版が日本で出てから10年以上が経ちます。当時は大ヒットした一冊ですし、その後も現在もまで類書やシリーズが出続けているので相当な人気なのでしょう。私も書店などで繰り返し目にしていましたが、特に手に取ることもなく、なぜかあまり関心もありませんでした。しかしながら今さらなぜ図書館で借りてこようかと考えたかというと、先日ある海外の空港に居たところ、空港の小さな本コーナーでかなりプッシュされていて、日本に戻ったらちょっと読んでみようかという気になったのでした。

さて、内容はサブタイトルの「人格主義の回復」といういかめしいものほどは難しくないですが、よく生きる、ということはどういうことか、またそこに働く原則や有益な習慣とはなにか、ということについて書かれています。通常、生き方や働き方について書いた本というのは、こうすると上手くいくよ、とか、こうすると仕事がどんどん出来るよ、といった行動や考え方を指南するものですが、本書はまず生き方と原則だろう、というところから始まり、ざっくり言えばそれが全てです。面白いのは行動や考え方をどうするかというよりは、普遍的な原則があって、それに照らしてどういう行動や考え方が望ましいか書いている点です。すなわち、自分の行動や考え方を変えれば全て上手くいく、という安直な指南とは一線を画しているのが売りです。さて、自分の備忘録として、下に書かれていた習慣を列挙しておきたいと思います。

<私的成功>
第1の習慣 主体的である(インサイド・アウト)
第2の習慣 終わりを思い描くことから始める
第3の習慣 最優先事項から優先する(第Ⅱ領域)
<公的成功>
第4の習慣 Win-Winを考える
第5の習慣 まず理解に徹し、そして理解される
第6の習慣 シナジーを作り出す
第7の習慣 刃を研ぐ

とまあこんな感じでして、並べてみると「はーそんなもんか」と思われるかもしれませんが、読んでみるととても説得力があり、少なくとも私は殆どのことが実践できていません。すべてを真面目に実践しないとだめだというものではないですが、1、2、4、5、6あたりは殆どできてない感じがあります。ここらへんは個人的な実感でしかないのですが、自分を振り返るよい切っ掛けとなります。

この本の素晴らしいところは、無駄に社会的な成功ばかりにとらわれずに書かれているところです。そういう意味ではすごく地味で地に足がついた内容となっています。(だからこそ世界的にヒットしたのだと思いますが。)社会人になったばかりのころに、カーネギーの「人を動かす」を尊敬する先輩に勧められて読んで、とても感動した覚えがありますが、こちらの一冊はかなり体系だって理論的になっています。カーネギーの一冊ほどエモーショナルではありませんが、読みやすく、十分な事例を踏まえた高い説得力があります。

こちらは文庫もでているので購入したいと思います。久々に手元に置いておきたい一冊を読めました。

2015年7月20日月曜日

第119回:「最後の将軍」司馬 遼太郎

レーティング:★★★★★☆☆

更新タイミングに間が空きがちですが、本はちゃんと・・・少ないながら読んでいます。本作は5月に読んだのですがスーツケースに置きっぱなしにしており、先週やっと読み終わっていたことに気づきました。どうも仕事がかなりの私の時間を取ってしまっており、ゆっくりとPCの前に座ることができていない状況です。

さて、本作はお馴染みの司馬遼太郎さんの一冊で、長さ的には中編という感じでしょうか。徳川幕府第15代にして最後の将軍である徳川慶喜の話です。司馬さんの作品を始めとして、幕末ものには必ず徳川慶喜が登場しますが、そのユニークなキャラクターについて詳細に触れられることは稀で(登場人物の一人なので仕方ないところですが)、江戸城の無血開城の下りで勝海舟と共に登場するか、その前の京に登る登らないで優柔不断な姿を見せたなどといったやや批判的な描写がなされることが多いと思います。しかしながら、この一冊は堂々と徳川慶喜だけをフィーチャーしており、珍しいモノもかと思います。

そして読んでみるとかなり面白いです。水戸藩のいわゆる水戸学について触れつつ、将軍の出自が解き明かされていき、また時には少し不思議な行動様式についても謎解きをするように話が展開します。また、将軍をやめてからのエピソードも興味深いものがあります。決して最後まですんなりした説明もないですし、釈然としない感じも残ります。そして司馬さんもそれを承知で謎や不可解な部分はそのままに無理な講釈をせずに筆を進めていきます。

特異な時代には本当に様々なプレーヤーがきら星のように出てきますが、幕末を彩るプレーヤーの中で、その地位などは別にしてもとても強い輝きを放っているように感じます。将軍だからという部分はあるでしょうが、徹頭徹尾、人がどうおもうかや人に好かれたい、そういう動機が頭にないような強い意思を感じます。まさに善悪の彼岸という印象です。

2015年6月13日土曜日

第118回:「もう、怒らない」小池 龍之介

レーティング:★★★★☆☆☆

最近お坊さんの本がちらほら書店に並びます。昔からそういう本は書店に並んでいたのですが、どちらかというと仏教関連の解説などが中心でしたが、この10年くらいでしょうか、瀬戸内寂聴さんの影響か、どちらかというと生き方に関する本が増えてきた気がします。平凡に言えば、1995年以降の日本社会の変容やグローバル化に伴い、人々の不安が増してきているということがあるかと思いますが、それに留まらず仏教を始めとした大昔からの「智慧」というものに再び脚光があたっている気がします。

さて、この著者はかなり有名になった同年代のお坊さんなのですが、今回初めて著作を読みました。結論から言って平易に仏教の考え方を紹介しながら、分かりやすくどうやって怒りというものが生じるかについて説明がなされます。月並みではありますが、不安や恐れ、無力感、妬みや嫉みなどがそのもとであり、また怒りというものが衝動的な強い情念であり、それ自体に中毒的な作用があることが紹介されます。

さらっと読める一冊ですので、日ごろ怒りを感じることの多い方はお勧めです(かなりいると思いますが)。そして、面白かったのは、目を閉じて自分の体の位置や姿を感じる、更に自分の感覚器が感じていることを認識する、そして自分の気持ちの動きについて感じる、という一連のステップです。これは昨今はやりのマインドフルネスにも通じる感覚かとおもいます。