2015年7月20日月曜日

第119回:「最後の将軍」司馬 遼太郎

レーティング:★★★★★☆☆

更新タイミングに間が空きがちですが、本はちゃんと・・・少ないながら読んでいます。本作は5月に読んだのですがスーツケースに置きっぱなしにしており、先週やっと読み終わっていたことに気づきました。どうも仕事がかなりの私の時間を取ってしまっており、ゆっくりとPCの前に座ることができていない状況です。

さて、本作はお馴染みの司馬遼太郎さんの一冊で、長さ的には中編という感じでしょうか。徳川幕府第15代にして最後の将軍である徳川慶喜の話です。司馬さんの作品を始めとして、幕末ものには必ず徳川慶喜が登場しますが、そのユニークなキャラクターについて詳細に触れられることは稀で(登場人物の一人なので仕方ないところですが)、江戸城の無血開城の下りで勝海舟と共に登場するか、その前の京に登る登らないで優柔不断な姿を見せたなどといったやや批判的な描写がなされることが多いと思います。しかしながら、この一冊は堂々と徳川慶喜だけをフィーチャーしており、珍しいモノもかと思います。

そして読んでみるとかなり面白いです。水戸藩のいわゆる水戸学について触れつつ、将軍の出自が解き明かされていき、また時には少し不思議な行動様式についても謎解きをするように話が展開します。また、将軍をやめてからのエピソードも興味深いものがあります。決して最後まですんなりした説明もないですし、釈然としない感じも残ります。そして司馬さんもそれを承知で謎や不可解な部分はそのままに無理な講釈をせずに筆を進めていきます。

特異な時代には本当に様々なプレーヤーがきら星のように出てきますが、幕末を彩るプレーヤーの中で、その地位などは別にしてもとても強い輝きを放っているように感じます。将軍だからという部分はあるでしょうが、徹頭徹尾、人がどうおもうかや人に好かれたい、そういう動機が頭にないような強い意思を感じます。まさに善悪の彼岸という印象です。

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