2019年3月4日月曜日

第208回:「湖底の光芒」松本 清張

レーティング:★★★★★★☆

前回に続いて、松本清張さんの長編ミステリーです。めちゃくちゃ面白い一冊です。前回の作品とは異なり、主に諏訪湖畔を舞台とした作品であり、昭和中期の圧倒的な熱量をもった企業の競争と、そこで次々と捨てられる下請会社たちの悲哀を余すことなく描いています。正気と狂気と誠実さと裏切りが交錯し、とてもドラマチックな作品となっています。

書き出しは衝撃的で、いきなり倒産した企業の債権者集会から幕を開けます。書き方は悪いですが、昭和中期は倒産法制もあるはあるものの透明性をもって機能しておらず、司法の秩序が十分に浸透していなかったようで、いきなり陰謀を感じる書き出しとなります。そこから未亡人社長と誠実な腕のいい部下、伸び盛りのカメラメーカーが出てきて・・という流れですが、書いてしまうとネタバレになってしまうので、ここらへんで止めておきたいと思います。

しかし、松本清張さんの作品がいまだにこうして新版として刊行されなおすというのは、それだけ人気があり圧倒的な筆力があるということかと思います。このシリーズは相当の作品数があるので、次々と飽きずに読んでしまいそうです・・。

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