2019年2月24日日曜日

第207回:「数の風景」松本 清張

レーティング:★★★★★★★

松本清張といえば昭和の大作家ですが、昭和後期にもかけて長く活躍し、多くのミステリーを中心とした作品を遺しました。現在、光文社文庫から順次「松本清張プレミアム・ミステリー」として再発行されており、その一冊です。多作な作家でしたが、どの作品も違うテーマであり、また読みごたえも十分です(本作は542ページ)。

本作は銀山跡地が発端として始まる話であり、電力会社やその用地の取得の問題、さらには謎の女性の大学教授や自動車メーカーも絡んで、飽きさせない展開です。なんどか主人公の行動の根拠となる推論が惜ししめられますが、読者はその妥当性はいかほどか迷いながら読むことになると思いますが、そこが謎の提示であり、確認のポイントとなっており、試される感じがあります(私は外しました)。また、松本さんの作品の素晴らしさは日本の各所の美しい風景を余すことなく描写し、そこに流れる昭和の旅情といったものを十分に感じられるところです。こうして読んでみると、昔、田舎の宿に行ってもテレビ、新聞、雑談、大人であれば酒とタバコくらいしか娯楽がなかったということです。今は、電波が通じていればネット三昧なのかもしれませんし、マッサージチェアなんてものもあるところもあり、これを風情がなくなったとはいいませんが、少なくともライフスタイルが変わったとはいえます。

この光文社のシリーズはものすごい冊数が出ているので、なかなか時間が取れない毎日ではありますが、少しずつ今年は読み進めていきたいと思います。

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