2018年2月12日月曜日

第182回:「外道クライマー」宮城 公博

レーティング:★★★★★★★

久々の星7つ、とても型破りで面白い一冊でした。那智の滝を登った人が捕まった事件はニュースになりました(2012年7月)が、その時に目にされた方もいるかとおもいます。私も当時は山登りにも沢登り(こちらはやったことありませんが)にも興味がなく、沢ヤはなんでこんなバカな、罰当たりなことをするんだろうと思って気にも留めませんでした。しかし、なんとその逮捕されたうちの一人がこの著者と知って驚くとともに、更にこの本の面白さに驚いたところです。

宮城さんは、クライマーとしてヒマラヤなどで高い実績を上げつつ、そのクライミング技術に磨きを掛け、国内外で沢登りをするいわゆる生粋の沢ヤということです。仕事も那智の滝で逮捕されてからやめてしまい、今はクライミングやライター、登山ガイドなどをして過ごしているそうです。本書の面白さは、宮城さんと仲間の沢ヤのキャラの濃さと飾らない生き方につきます。常識をはるかに超えたような挑戦をただふらりとやってしまうその生き方は、とても市井のリーマンには真似もできないところであり、それがゆえにあこがれる部分があります。

本書は那智の滝での逮捕事件から始まり、メインとなるタイのジャングル46日探検、台湾の大渓谷(チャーカンシー)、称名滝の登攀といった構成です。どれも濃密な体験であり、沢や滝をひたすら遡上するという旅は私には面白さが分かりませんが、とにかくそれに魅せられて力を合わせて(合わせてないときも多いですが)進んでいく姿は痛快です。特にタイのジャングルは壮絶で生死の境目に来たというような局面がいくつか出てきます。本当はミャンマーにいきたかったのに、途中で予定を変更してタイに行ったり、いきあたりばったりですが、クライミングについてはそれなりに周到な準備をしたりと緻密なんだか緻密じゃないんだかよくわかりません。

世間の常識から大きく外れた生活ですがこういう本がちゃんと出版され、また多くの読者がついているところに日本の社会の多様さというか健全さを感じます。表現含めてとても面白く、最初の索引からかなり笑えますのでとてもお勧めです。

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