2018年1月27日土曜日

第181回:「絵から読み解く江戸庶民の暮らし」安村 敏信監修

レーティング:★★★★★☆☆

日本史が昔から好きで、ちょこちょこと関連の本を読んでいます。今回はほとんど知識のない江戸時代の本です。例えば由井正雪の乱とか、忠臣蔵とか、寺子屋での教育が普及し、世界有数の教育大国であったとかそういう断片的な知識しかないので、一度読んでみたいとおもっていたところ、期待を裏切らない一冊でした。本作は、タイトルのとおり浮世絵を中心とした各種の絵や出版物から江戸の庶民の生活について説明する本であり、肝心の絵が小さい、白黒であるという点を除けばとても読みやすく、構成も飽きさせない優れた一冊だと思います。ちなみに監修の安村さんは美術館の館長を務められ、現在は美術品屋を経営している方のようです。

備忘もかねて面白かった点を書くと、江戸の町はざっくりいって50万人の武士を養うために50万人の町人が居る世界有数の大都市であったこと、現在と同様に生粋の江戸っ子は少なく、奉公や参勤交代といった形で地方から来た人が大半であったこと、すでに浄水が武蔵野のあたりから引かれており、下水は整備されていないもののし尿は農業にリサイクルされていたこと。火事が多く、地震や台風、火山など天災も多かったことから、宵越しの金は持たないといった「いき」の土台が生まれてきた。天ぷらやすしは庶民の街角のスナックであり、食べ物にもブーム(桜餅)があったり、大食いバトルまであったということ。他方、住まいは長屋が密集し、現代より町人はよっぽど狭いところでの生活をしていたこと、そういう長屋のなかで手工業を行ったり、勤めに出て行ったりしたこと。庶民は浮世絵を見たり、相撲を見たり、大山など近隣の自社に講単位で出かけて楽しんだこと。意外にもかかあ天下の家が多く、離婚や勘当も結構あったこと。寺子屋はとても工夫されており、テキストもかなりの種類があったこと。おしゃれは当時から重要視されており、バサラ、傾奇といった突飛な格好の人もかなりいたこと。

通読して、独自の文化をはぐくみ、質素、いきであることを旨としながら、祭りや花火といった熱さをもっていた江戸の町人にとても親近感を持ちました。なんだ、結局時代が変わってもやってることはあまり変わらない、という印象です。技術は進歩しているかもしれませんが、夏になれば人々は花火に群がり、お祭りに出かけ、冬にはお寺に初もうでにいって、相撲やコンサートを見に行きます。路上ですしは売っていませんが、ケバブをつまんだり、漫画を楽しんだり、日帰りで箱根に出かけたり。驚くほと人々の行動様式は変わっていません。江戸でも現代でもいろいろな楽しみを見つけながら、簡単ではない世の中を必死に生きた先達が居るということはとてもうれしく、励まされるものがあります。ぜひ武士の暮らしについても読んでみたいと思います。

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