2016年2月3日水曜日

第137回:「ユニコーン」原田 マハ

レーティング:★★☆☆☆☆☆

副題は「ジョルジュ・サンドの遺言」であり、その名のとおり19世紀フランスの作家ジョルジュ・サンドと彼女が魅入られたタピスリーの話です。単行本で読みましたが、小説というよりは、国際線の機内誌にありそうなちょっと長めでおしゃれな感じの小文といった感じです。そういうセッティングで読めば特に文句もないのですが、残念ながら文章の密度はとても低く、おそらく私が1300円+消費税を出して買っていたら、たぶん率直に怒っていただろうなという一冊です。

前作の「楽園のカンヴァス」が素晴らしかったのに、そう違わないタイミングで刊行されたこの書下ろしがなぜこういうクオリティなのか大変不思議です。文体や主題からして作者ご本人が書かれているのは相違ないと思うのですが、物語があまりに短く、余韻も深みもあまりなく不思議です。おそらくですが作者はジョルジュ・サンドについて良く調べ、関心を十分に持っているのに、自身が知っていることをあまりに捨象してしまい、サンドの本当に一部分だけ切り取ってしまっていて、結果としてほとんど伝わらない文章になったのではないでしょうか。

図書館で借りるにしてもあまりお勧めはできません。作者のファンであれば読む価値はあるかもしれませんが、それでも相当時間を持て余している方のみでよいものと思われます。

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