2012年7月8日日曜日

第46回:「挫折力」冨山 和彦

レーティング:★★★★☆☆☆

第42回の樋口氏同様に、好きなビジネスパーソンである冨山氏の本です。第5、6、36回でも著者の本をレビューしていますので、おそらくこのブログで最も頻出かもしれません。樋口氏を上回る有名人で、過去にもご紹介しているので改めての説明は不要かと思いますが、国内の独立系戦略コンサルティング会社の経営者から産業再生機構のCOOに転じ、現在は企業再生系のコンサルティング会社の代表取締役CEOをされています。

本書は2011年2月初版であり、東日本大震災の少し前の本です。非常にざっくり要約すれば、早いうちの挫折経験は成長する上で欠かすことのできない大事なものであり、積極的に(チャレンジし)挫折すべし、というものです。もちろん単に挫折して腐るのではなくて、真摯に反省し、前向きに学べ、ということも書いてあります。こう書いてしまうと、なんだそんなことかと身も蓋もない感じですが、良くも悪くもこのメッセージが本書のほぼすべてかと思います。

面白いのは、著者の挫折経験に触れた部分です。挫折例の一つとして出てくる、自信を持って司法試験を受けて落ちた(その翌年には合格していますが・・)というのはあまり適切な例とは感じられませんが、もう一つの例であるビジネススクールを出て日本に凱旋して、会社に戻ってみると大変な状況になってしまっていて、関西に携帯電話の会社を作るため出向するストーリーがいい感じです。このストーリーは著者の他の本でもかなり触れられているので本当に大変かつ有益な経験だったと思いますが、30代で出向して苦労する、といったところは世の中の私を含めた一般的な働き手にも身近な話題であり、共感もできるところです。

なお、矛盾するようですが著者の挫折経験に触れた部分は本書の半分以上というわけではなく、期待したよりずっと少なく、やや親父の説教的な部分が長いので著者に思い入れのない方などは飽きてしまう本かもしれません。それでも文中で出てくる「禍福は糾える縄の如し」(史記)や「人生は意外に長い」(著者)はなかなか良い言葉かと思いました。また、著者の父方の祖父母と父のエピソードは心打たれるものがあります。若手や中間管理職に向けて書かれた熱い本ですのでご興味のある方はぜひどうぞ。

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