2012年3月18日日曜日

第38回:「私的整理の実務」高木 新二郎・中村 清

レーティング:★★★★☆☆☆

世の中では多くの会社が生まれ、倒産(、そしてその一部は再生)しているわけですが、その倒産プロセスは大きく二つに分けられます。一つは法的倒産処理手続きであり、もう一つは私的倒産処理手続きとなりますが、前者は破産、会社更生、民事再生といったものであり、ニュースでもある程度聞くカテゴリかと思います。後者については、その名のとおり債務者と債権者が私的なプロセス(法廷等が関与しない)で債権債務関係を再編するものであり、それが故に事例が公に公表されることが少なく、世の目に触れることも少なくなります(通常、私的整理と呼ばれます)。

本書はその私的整理について法的な位置付け、考え方、判例を紹介しながら、実務の流れについて詳細を記したものです。私的整理は外部機関の関与がないため、公平性の担保や詐害行為の防止が難しいことが特徴ですが(他方、迅速な処理が可能)、どの程度までが裁判所によって認められ、否認されるかについて判例をベースに解説されています。世に法的倒産処理に関する本は多いですが、私的整理に関する(特に実務面の)本は非常に少なく、その意味で貴重な情報源として使えます。ちなみに著者の一人の高木氏は、弁護士(元裁判官)で倒産・事業再生の大家であり、この本を書いた後になりますが産業再生機構の産業再生委員長も務められました。

このように優れた一冊なのですが、本書は平成10年(1998年)に書かれており、その後、倒産法制が大幅に改正されているため、幾つか今はピンとこない記述がある点は要注意です。ぜひ、アップデート版が刊行されることを望みます。

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