2012年3月4日日曜日

第36回:「経営分析のリアル・ノウハウ」冨山 和彦・経営共創基盤

レーティング:★★★★★☆☆

久々に新刊(2月17日発売)を購入しました。冨山氏は第5回、第6回でもレビューしているので、ご興味のある方はそちらも参照いただきたいのですが、産業再生機構で辣腕を振るった企業再生家であり、現在は著者に名を連ねている経営共創基盤のCEOを務めています。

本書は一通りの財務分析や経営分析をした経験のある人がぶつかるであろう問題意識に応える内容となっており、新書ながら非常に密度の濃いものとなっています。私もとりあえず一通り読みましたが、ゆっくり咀嚼しながらもう一度近々読んでみようと思っています。さらりと書いていることが、かなり大事であったりして、マーカーをとりあえず手元に準備するつもりです。

財務分析や経営分析をする時に、迷ってしまうところやすっきりしないところは色々ありますが、一つは踏まえるべき業界や会社の文脈に照らしてどう財務分析の数値を判断するかということがあります。また、財務分析はできたんだけど、なんで高い利益率を誇っているのかいまいち判然としない場合もあります(利益率が低かったり、マイナスなのは比較的読み取りやすいのですが)。たぶん、その会社の商売の仕組みが見えていないことに起因するものだと思います。特にこの後者の部分、会社が行っている日々の業務が明確に描けないと見た目はもっともらしくても、随分苦しい分析になりがちな気が実体験からしています。

以下の項目は、特に面白いものでした。
「リアル経営分析はテーラーメイド」
「その数字から企業小説を書けるのか」
「規模が効く業種と効かない業種」
「業界構図の変化の陰には、必ず経済構造の変化がある」
「規模、範囲、そして「密着」の経済性」
「そもそも勝ちパターンがつくりにくいビジネスもある」
「分けるはわかる、管理会計の重要性」

やはり実務家の本は、教科書的な通り一遍の解説を超えて、豊富な実例を踏まえた含蓄があります。もっと詳細なものを読んでみたい気はしますが、エッセンスをぎりぎりまで詰め込んだ新書とという感じで、非常に読み応えがありました。お勧めです。

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