2011年12月4日日曜日

第31回:「大河の一滴」五木 寛之

レーティング:★★★★★☆☆

師走は、文字通り忙しい月と言われていますが、私も例外ではなく、なんだか11月後半からばたばたとしており、平日も休日もなにかしらがあり、本をじっくり読む時間が取れません。そんな中で、この本と河合隼先生の本とSteve Jobsの伝記(英語版)を並行して読むというめちゃくちゃな読書スタイルをとっていたので、どれもいつもに輪をかけて進んでいませんでしたが、一番読みやすい本書をなんとか読み終わったというところです。某消費者金融ではありませんが、読書も計画的にすることが必要そうです。

さて、この本は1998年に出版され、大ヒットとなったのでタイトルを耳にされた方も多いかと思います。ただし、年代としては私の世代よりは、当時40~50代以上に受けたものと思われ、内容としては渋いものです(しかしながら、若い人も読んで感じることは等しくあると思います)。

具体的な内容的ですが、やはり重いものが多く、親鸞などを引き合いに出しながら現代の問題(犯罪、自殺、心の問題etc)について答えではないものの、一つの見方を提示しています。著者も書かれている通り、この本では割と素直に「こうではないか」という一つの見立てが示されていて、いつもは「なになにではないだろうか」と問いかけるスタイルの多い著者にしては珍しいスタイルかと思います。

うーんと思ったのは、この本が出版されベストセラーになった13年後の2011年、現在の日本が突きつけられている問題の多くは概ね(当時から)変わらず、その深刻さの度合いが増しているものもある(多い)ということです。本書では繰り返し自殺の問題(これは当時より数で言うと増えています)、不況や貧富の格差の問題(これも目立って改善はしていないかもしれません)が触れられていますが、これらのイシューは変わらず今日も残っています。また、自然災害(阪神大震災、当時)についても残念ながら今年は東日本大震災が起こってしまい、今、この本が再びこの本が書かれることがあれば、原発やエネルギーといった話も追加されてしまいそうです。

フェアに言えば、本書でしばしば触れられている犯罪は、統計的には減少しているようです(警察庁によれば、刑法犯罪の認知件数は平成14年を境に一貫して減少してきています)。もちろん犯罪の性質といったものは加味していませんが・・。

最後にあとがきを読んではたと気づきましたが、本書は幻冬舎から出ています。色々と型破りで有名な見城 徹氏は著者と実は長い長い付き合いだそうで、氏に口説き落とされて本書を書いたようです。幻冬舎の設立は1993年ということなので、少し経ってからの出版ですが、この本も幻冬舎が飛躍するのに大きく寄与したことは間違いなさそうです。こういう普段見えにくい著者と編集者の交流ややりとりが垣間見れるのは、興味深いところです。

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