レーティング:★★★★★★★
なかなか読みごたえのある一冊でした。レーティングは6か7かで悩みましたが、これだけクオリティを落とさずに真正面からユングの心理学を解説しながら、分かりやすさと神話や小説、映画といったイメージにあふれ、理解を助けられる本はそうそうこれからもでないであろうことは確かなので、惜しむことなく7としました。
著作集1より踏み込んで、ユング心理学のエッセンスの一部である「影」と「イメージ」について論が展開されます。前半は「影の現象学」ということで、「影」の定義や解説を行っていき、影が自我に与える影響、また影自身の世界について解説を行っていきます。このなかで非常に面白かったのは「影の逆説」という部分で触れられる道化についての考察です。王の影の部分を引き受けるスケープゴートとしての「道化」という認識が基本にありますが、科学というよりは文学や歴史といった領域も巻き込む論となっています。
後半は「イメージの心理学」ということで、様々なイメージの持つ意味について論が展開されます。例えば、熊は●●の象徴といった安易なひも付けは一切排しつつ、あるイメージから導かれる多様な意味や意義を探っていく内容となっています。ここでも神話や文学といったものが数多く出てきますが、特に「創造の病い」や「ライフサイクル」(特に直線と円環)といったところは秀逸だと感じました。
一般受けする本ではありませんが、非常にフェアに書かれていると思いますので、関心ある方はぜひ一読されることをお勧めします。
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