2011年11月3日木曜日

第28回:「日出る国の工場」村上 春樹/安西 水丸

レーティング:★★★★☆☆☆

皆さんは一度読んだ本について、読んだこと自体を思い出せなくなることってあるのでしょうか?私は、大体の本は内容は覚えていなくとも、読んだという事実については思い出せることが殆どなのですが、たまにどうしても、「読んだ気がするんだけどな・・・でもちょっと読んでも、読んだかどうか思い出せない・・・」という本があります。第15回でレビューした本(こちらは再読の比較的早い段階で読んだことを思い出しました)もそうですし、今回レビューする本も同様です。今回は、なんと最終章に来るまで、以前読んだことを確信をもって思い出すことができませんでした。

そもそもある本を読んだことが思い出せないというのは、よっぽど適当に読んでいたか、内容に記憶に引っかかるようなインパクトなり意外性が相当欠如していた、ということかと思います。これを読んだのはもう10年ほど前ということまで思い出しましたので、どっちが(もしくは両方が)理由かいまや良く分かりませんが、どちらかというと後者の理由の気がします。

ところで本の内容は、著者の二人が様々な工場見学を行い、雑感を記すというゆるいものです。「ゆるい」のですが、別に批判的にそういっているわけではなく、ユーモアもペーソスもあり、そして1980年代の日本の戦後経済成長の最高潮の興奮も感じられる本になっています。大学生だった当時は工場見学など殆どしたこともなく(小学校で楽しみにしていた某大手製パン会社の工場見学は、風邪で欠席)、余り面白さがわからなかったのですが、社会人になって各種の工場等にお邪魔をする機会に恵まれたため、今読んでみると面白い内容となっていました。

軽く読める本で、ちゃんと時間が取れるならば1日で十分と思われます。旅行の移動時間などリラックスして読めるときにどうでしょうか。また、安西さんの絵が(いつもながら)洒脱で良い感じです。面白いのは、CD工場(当時最先端バリバリであったCDがもはや絶滅危惧種とはいかないまでも、劣勢に立っているのは時代の流れの速さを感じます)と牧場でしょうか。経済動物というコンセプトが出てきますが、なかなかにシビアで牛乳もありがたく飲まないといけないなと感じるかもしれません。いずれにせよ、ひっさびさの再読ですが、それなりに楽しかったです。そこそこのお勧めです。

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