2011年5月22日日曜日

第14回:「裸でも生きる」山口 絵里子

レーティング:★★★★★☆☆

2007年9月に発刊された本書。サブタイトルの「25歳女性起業家の号泣戦記」が良く表しているとおり、ある女性の生い立ちと起業に至る実話です。著者であり起業家の山口さんはメディアに頻繁にカバーされているので、見た・読んだという方も多いかもしれません。現在、株式会社マザーハウスの代表を務めています。

以前からだいぶ気になって、マザーハウスのサイトや山口さんのインタビューなどを読んでいたのですが、この本を読んで、随分と驚き、応援したい気持ちになりました。小学校での経験、中学校での非行(詳細はさすがに省かれていますが・・)の記述は壮絶で、一人の少女が背負った傷やそれに向き合った心の強さをひしひしと感じます。高校時代は柔道に明け暮れるのですが、このチョイスもなかなかユニークであり、練習スタイル?も随分と気合いが入っていて、(本人は否定されるでしょうが)ただものではないんだなあ、と感じます。

その後、慶應大学に進み、名門ゼミに入るところで一気に社会的、経済的な関心が高まり、IDB(米州開発銀行)でインターンを行い、バングラデシュに行くこととなります。そこから起業に至っていくのですが、ずいぶん中身の濃い話なので、ぜひ一読されることをお勧めします。

全てが著者の実体験であり、包み隠さず明らかにしていることで圧倒的なリアリティがありますし、著者の意思の強さと自分で考える姿勢には学ぶべきものが沢山あります。特に先が見えない状況で努力し続けるという点。高校時代の柔道は、全くの素人から3年間、体も壊しながら勝てるアテなどない中で想像を超える練習を継続しています。起業してからも、バングラデシュの工場で色々なことが起こるのですが、業務の継続が困難な状況で自分の思いを貫徹していきます。

株式会社マザーハウスがカバンを作り、日本の消費者に売り込めた(最初は150個限定)こと自体が奇跡のようなことで、ここまで失敗に至っておかしくない理由がざっと数十はあります。著者は、ものづくりなどしたこともなく、会社も経営しておらず、バングラデシュには適当な製造の人材の不足し、政情も不安定で・・でもそういう全てのことを「できない/しない理由」とせずに、自分の使命とやり方を信じて突き進んだのは見事としか言えません。先(ペイオフ)の見えない努力は回避したいものですし、社会人になって成算が見えないものに自分を捧げるのは相当の勇気が居るものですので、そういう「蛮勇」(というと失礼ですが)を読んで、正反対の生き方として学ぶものが多々あります。熱い本です。

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