2011年2月19日土曜日

第3回:「チーム・バチスタの栄光」海堂 尊

レーティング:★★★★★★☆

あまり説明の必要がないくらい知名度の高い作品かもしれません。第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞、しかもぶっちぎりの評価だったそうです。後続のシリーズを含めて大変な売れ行きでしたし、発売した2006年当時のメディアによるカバーも非常に多かったのが印象的です。

当時から関心を持っていたんですが、ミステリーって一回読んだらもう一度読もうと滅多に思わないし、買うのもなーと読まずじまいになっていました。周りにも(あんなに売れたのに)読んだと言う人が不思議に一人もおらず、また、医療?大学病院もの?が元来苦手で(山崎豊子の「白い巨塔」に至っては1冊目の三分の一も読めませんでした)ためらっていました。そんななか、昨年末に某巨大チェーンの古本屋に行ったときに文庫版上下が105円でたたき売られており(すみません)、重い腰を上げて購入しました。

読んでみると冒頭のレーティングのとおりですが、これは面白いな~の一言です。まず、人物の設定と描写が極めて優れていて、一貫して出てくる田口講師は村上春樹の「1Q84」の牛河を明るくしたような味があるし、白鳥技官は(好みは別れると正直思いますが)キャラ立ちという意味ですばらしく、著者の思い切りに敬意を表したいと思います。

また、各所で指摘されていることですが、著者は現役の医師であり、医療問題がかかえる様々な構造的な問題や、見えにくい問題を随分丁寧に書いており、広い意味での社会的問題意識の高いミステリーでもあります。医師が人の生死を小説にすることには、やや抵抗がある向きもあるかもしれませんが、著者の問題意識が広く社会に投げかけることが出来ている事実を考慮すれば余り問題にならないのではないかと思います。

後続のシリーズ(2作)もぜひ読んでみたいと思います(そしてレビューします)。

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