2016年5月22日日曜日

第146回:「外事警察」麻生 幾

レーティング:★★★★★☆☆

本屋に行くと警察ものや軍事ものがたくさん並んでいるのに気が付きます。90年代より格段にこのジャンルは拡大している気がしており、とりわけ今回レビューする外事警察のような公安やテロ対策について取り扱っている本が多いと思います。悲しいことではありますが、9.11以降、世界的にテロは時代のキーワードとなってしまい、テロの恐怖は潜在的に日本人にとっても根強いものとなっています。そういった関心にこたえる作品が多く作りさだれています。

本書は、まさにタイトルのとおりの外事警察について取り扱っているものです。外事警察とは警察の中で海外関係の対テロや対謀略関係を担うセクションとのことです。話はイスラム関係を題材としていますが、そのこともさることながら、普段触れることのない一端を垣間見られるところが面白いところです。しかしながら、当然厚いベールに包まれている外事警察なので、小説に書いていることがどこまで本当かが全然わかりません。著者の麻生さんはこの関連の作品を多く書かれているので、相当取材はしていると思いますが、それでも壁は厚いでしょうし、それなりのフェイクなどもわざと入れているのではないかと思います。

また、警察の中でも強力な実力部隊であるSATも複数回出てきて、作品中で重要な位置づけを占めます。私が麻生さんの作品で唯一読んだことのある『宣戦布告』(もう10年ほど前でしょうか)でも、外国からの不法侵入に対して自衛隊がいかに出動できないかが描かれていましたが、現在でもその状況はほとんど変わっていないでしょうから、SATは一つの警察力の頂点としての象徴的な意味合いがあるのでしょう。

作品全体は真面目なトーンですが、とても読みやすく娯楽大作という感じです。決して下品ではありませんし、メッセージ性もあります。NHKで映像化されたようですが(見てませんが)、たぶんきっちり映像化すれば結構面白い作品になったのではないかと想像します。飛行機の行き帰りで読んだのですが、(ポジティブな意味で)あまり頭を使わずにどんどん読めるので楽しいです。ちょっと他にも読んでみようと思える作品があるので今年どこかでトライしたいと思います。

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