2015年1月26日月曜日

第110回:「禅マインド ビギナーズ・マインド」鈴木 俊隆

レーティング:★★★★★★☆

本ブログでは何度か取り上げている仏教関連の書籍ですが、今回は仏教の中でも禅に関する一冊です。禅は世界的に何度目かのブームとなっているようですが、面白いことに鈴木氏が住み、禅を実践した米国西海岸が現在のブームの根源ということだそうです。なお、本書はスティーブ・ジョブスも傾倒したというようなやや短絡的な帯に書かれた売り込みがありますが、内容の真摯さを考えればやや残念です。

さて、禅や座禅とはなんの関連もない生き方をしているのですが、座禅で思い出すのは小さなころ、多分小学1・2年の頃だったでしょうか。どういうきっかけか父親と座禅の話になり、やり方を教えてもらったことを記憶しています。私の知る限り一度も父親が座禅をした、もしくは話題にしたときは、この時を除いてないので不思議です。しかし、結構詳細に覚えており、脚の組み方、手の組み方、目を閉じるかどうか、呼吸をどうするか、浮かんでは消える雑念をどう考えるか、などなどを教えられ、それらを30年近くたった今も残っています。父親がどこで習ったのかはいまだ謎です。

そんなことで関心はありつつも、やや面倒な感じがして、更に取っ付きづらい感じもして敬遠していたのですが、近くの本屋で新書として出ていたので買ったのがこの一冊です。前置きが長くなりましたが、頭を殴られるような感じがする新鮮な一冊です。分割することで論理を組み立て、効率を上げることで高みを目指す近代的価値観とはいわゆる「ねじれの位置」に存在する考え方です。私は欧州留学などを通じてどっぷりと知らず知らずに近代的価値観に偏向していると自己認識しているのですが、その偏向ぶりがもつ息苦しさや、限界についても考えさせられる一冊です。とても不思議な本で、頭で上手く理解しようとしても理解できないことが沢山書かれています。

もう少し歳をとって、更に3回くらい読まないとしっくりこないかもしれません。しかし、手元に置いておいて、折に触れて読み返してみたいと思います。禅の対極ではなく「ねじれの位置」にあると感じる近代的価値観の真っただ中にある米国西海岸で大きな反響を読んだことがなんだか少しわかる気がします。ちなみに欧州にいたときも「マインドフルネス」(これもブームですね)実現の一環として瞑想を勧められたことが何度かあることを思い出しました。興味ある人もない人も、本当にお勧めの一冊です。平易で優しい語り口の一冊です(内容は平易ではありませんが)。

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