2014年5月6日火曜日

第93回:「熱く生きる」天野 篤

レーティング:★★★★★☆☆

著者の名前をどこかで聞いたことが・・という方は多いのではないでしょうか。今上天皇の心臓手術を2012年に執刀した心臓血管外科医で、現在、順天堂大学医学部の教授です。私は2012年の手術の時に、その経歴を紹介するエピソードを聞いて関心を持ち、おそらくその年か2013年だったか定かでないのですが、NHKの『プロフェッショナル』で特集されており、強く感銘を受けました。気骨のある、血の通った人柄に大変な魅力を感じました。

その偉業や経歴については様々なところで紹介されていますので、ググれば一発で出てくると思いますが、若くしてお父さんが心臓病に罹り、それを治したいという思いもあって医師を志します。優秀な進学校に居たのですが成績は振るわず3浪、(医学部としては)決して優秀とは言えないある私学に入り、医者となります。その後も伝統的な医師のヒエラルキーに安住することなく腕を磨き続け、比類ない治療件数と手術実績を残し、順天堂教授に上り詰めます。これだけでも一つの現代版のサクセスストーリーとして面白く読めますが、3浪時の意外な放蕩のエピソード、お父さんを救えなかった無念、コンプレックスを基にした強烈な努力とプライド、(偉くなっても)患者を第一に考え向き合い続ける姿勢など、まさにプロフェッショナルの題材にうってつけという感じです。

平易な文章で書いてあり、すらすらと読めますので、おそらく3時間もかからないと思いますが幾つか面白いなと思った点を残しておきます。
・医師は大変な金銭的、社会的コストの上になる職業であり、全力で患者に奉仕しないといけない(際限はあります)。
・エリート医師でもそれに見合う努力をしていないモノが多すぎる。自身は泊まり込みを続けて平日は殆ど家に帰らないスタイルでやってきた(推奨はされていません)。
・患者に言われた「人の3倍努力すると、神様はなにかくれる」をモットーとして、今も糸の結び方などを日々練習している。医師は医師道だと思っている。
・オフポンプ(人工心臓不使用)手術が現在の主流であり、積極的に取り組んできた。また、感染症の低減も世界トップクラス。6,500回以上執刀。


自分なりに魅力を感じた点を纏めれば、①オリジナルな信念を持って実践している、②そのための努力を継続している(場数の多さが成長を速めている)、③心が通っている、④適度な遊びがある(麻雀やゴルフetc)というところでしょうか。興味を持たれた方はオンラインで見られるのかもしれませんが、上記のNHKプロフェッショナルを見るとより厳しくも温かい人柄が伝わるかと思います。医者の不養生ではありませんが、食生活などがかなり厳しい感じだったので、ぜひご自身も大切に長く医療に携わって頂きたいと思った一冊です。

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