2013年6月20日木曜日

第70回:「ティファニーで朝食を」カポーティ 訳:村上 春樹

レーティング:★★★★★★★

世の中には本当に素晴らしい小説が沢山あるわけで、読めども読めども追いつきません。この書評を始めてもう2年以上ですが、それでも読めたのはたったの70冊です。その前から、それこそ小さなときから沢山の本を読んできましたが、それでもこんなメジャーな作品もカバーできていないわけで・・。もちろんメジャーであれば良いということではなく、一人ひとりには好みが確固としてあるので、その人にとって良い本、楽しい本を見つけられれば良いわけですが、年月を経て生き残っている作品というのは多くの人が認める普遍的な面白さや意味があるわけで、その意味で限られた人生の中で読める本が限られている以上、悪くない選択だと思います。

さて、カポーティの作品自体読んだことがありませんでしたが、訳者が書いている通りこの作品はヘプバーンが主演した映画で知っている方が多いのではないでしょうか。私は映画も見ていない(もちろん知ってはいましたが・・)ので、本当に初めてでしたが、結論から言って凄く面白かったです。正直言ってストーリーには余り惹かれないのですが、主人公のもつ繊細さ、もろさ、ニューヨークの雰囲気、寒そうな秋の描写、そういったものが生き生きとし過ぎていて、すごい作家なんだと実感しました。加えて、一緒に収録されている「花盛りの家」、「ダイアモンドのギター」、「クリスマスの思い出」いずれも秀逸で、とくに最後のクリスマスは表題作より良いのではないかと思います。

作風としては、全体的に切なく、やや暗いトーンが全編を流れています。流れは少し早く、ゆったりしていませんが、そこが緊張感があって好きです。しかし、暗いということでいうとアメリカのメジャーな作家は、だいたい暗い気がするのですが気のせいでしょうか。私は海外文学を本当に読んでないので偉そうなことは言えないのですが・・。ここはちょっと注意して今後読んでみたいと思います。

近々、カポーティのもう一つの代表作(ただしノンフィクション)の「冷血」も読んでみたいと思います。

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