2013年4月7日日曜日

第64回:「IGPI流 セルフマネジメントのリアル・ノウハウ」冨山 和彦

レーティング:★★★☆☆☆☆

やたらとカタカナの多い書名で、なにやら気恥ずかしい感じですが、タイトルと中身がうまく一致しない本で、内容は当事者企業に勤める社員にとってM&Aがどういう意味を持ち得るか、ということをまとめた本です。タイトルに社名を付しているとおり、冨山氏がCEOを務める会社は社業の一つとしてM&Aアドバイザリーを行っているのですが、その宣伝も兼ねています。

まず前半、M&Aは集団転職である、というところから始まり、個々の社員のキャリアを良くも悪くも一変させる可能性があることを説きます。そして昔から言われてきたものの、やはり難しいと言われる買収先の人材確保、登用、インセンティブ付けの重要性が語られます。冨山氏の会社はM&Aに関与する場合は、人材DDをかなりやるそうです。

次に後半、そういうM&A多き時代に生きるには、二つのスキルの組み合わせ、たとえば法務に明るい営業マン、エンジニア出身の財務マン、といった形が望ましい、また英語はしゃべれて当たり前(だめなら即猛然と努力するようにとのこと)などビジネスパーソン一人ひとりの生き方や心構えについての記述がなされていきます。ここらへんは大前研一氏(あまりちゃんと読んだことがありませんが)などが書いていそうなことです。

ざっくり内容を書いてきましたが、どこらへんにがっかりしたかというと、まず書いている内容があまりに普通でどれもどこかのビジネス本やメルマガに書いてあることばかりです。また、M&Aの性質やインパクトについて前半記載し、そのなかでのビジネスパーソンの生き方について後半記載しているのですが、どちらも分量、掘り下げ方ともに中途半端です。特に前作(第36回でレビュー)がコンサルタントとしての鋭い知見に富んですごく面白かったのですが今回は残念です。

共感、発見があったのは、「会社と付かず離れず、適度な距離を保つ」、「金銭的にも会社に縛られすぎない」(会社の住宅ローン、財形、社宅など)、「転職も出向も経験になる」などでしょうか。原点回帰した次回作に期待したいと思います。

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