2012年9月17日月曜日

第50回:「永遠の0(ゼロ)」百田 尚樹

レーティング:★★★★★★☆

以前から気になっていたものの、読む機会なくもうほとんど忘れてしまっていた一冊です。先日、とある大先輩が読まれ、強烈に薦めてくださったので、これは読まねば!と思い立ちました。結論から言って、非常にメッセージ性の強い半ばノンフィクションのような話ですが、非常に強く心を打つものがあり、ぜひ感受性の強い中高生なども含めて、多くの方にお勧めしたい一冊でした。

ネタばれを慎重に避けないといけない一冊なので、概略だけ記載すると、自分のルーツ探しを始めた司法浪人の青年が、零戦の名パイロットであった「祖父」の足跡を辿るうち、数奇な昭和前期の歴史とそこに翻弄されながらも懸命に生きた人々の生き様に触れて・・、という話です。これだけ書くとふうん、という感じですが高い力量と熱量を持って書かれている一冊であり、濃さが違います。

優れた本である理由はたくさんあるのですが、自分なりにまとめてみると、①見方がバランスのとれたものとなっており、いたずらに著者の主張のごり押しではないこと、そうではありながら②多くの取材に基づいて事実に即した記載が多いので説得力があること、③太平洋戦争を大きなテーマとして流れを追いつつも、兵士たちの戦前・戦後を複雑かつ非情な社会との関係を踏まえて描いていること、④小説らしさ(フィクションの部分)を失っていないこと、かなあと思います。④の部分が少し強く出てしまっている(最後に)ため、レーティング満点をためらったのですが、④の部分がないと逆に中途半端な本になってしまっていたはずなので、非難しているわけではありません(私が非難できるようなレベルを遥かに超えた意欲作です)。

しかしこの本を読んでいると、(いつかも書きましたが)自分が如何に幸せな時代に生きているのかを痛感します。色々な人が感想を書かれていますが、読んでいくのがつらい場面が良く出てきます。10代後半で読んだ(毀誉褒貶ありますが)「きけわだつみのこえ」を思い出してしまいました。本書で繰り返し指摘されているとおり、あの戦争は現代に通じるさまざまな病理をショーケースのように含んでいて、複雑な気持ちになります。ぜひ読み継いでいきたい、読み継いでいくべき一冊かと思います。著者の新刊も話題になっており、こちらは図書館で予約待ちなので、借りられる日が非常に待ち遠しい状況です。

ところで気づいてみると投稿も今回で第50回となりました。めざせ千冊という心意気でやっているのですが、なかなか簡単に稼げるものではないですね。。。気長にやっていきたいとおもいますので、引き続きたまに覘いて戴ければと思います。

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