2019年12月31日火曜日

第227回:「小説帝銀事件」松本 清張

レーティング:★★★★★☆☆

またまた前回の投稿から2か月ほど空いてしまいました。この10月から年末までは仕事を始めて以来といってもよいかもしれないほど色々な案件が同時進行し、深夜残業ということはありませんでしたが、あらゆる方面に気を回さないといけずとても忙しかった実感があります。また、夏から時間のかかる趣味に取り組んでおり、そちらに会社帰りの電車の中の時間などを大きくとられています。そんな中ではありますが、3冊ほどストックがあるので、一部は年明けに掛かってしまいそうですが、順にレビューしていきたいと思います。

標題の作品は今や昭和の遠い昔の作家になってしまいましたが、大家である松本清張さんの作品です。帝銀事件というのは聞いたことはあったのですが、昭和23年1月26日に起きた帝国銀行の都内支店職員に対する毒薬投与の事件であり、大変衝撃的な内容となっています。本書ではGHQの影響が強く示唆される書き出しとなっていますが、本書を通読しても真相はよくわからず、捕まった方が真犯人であったのかどうかも含めて謎が多いところです。1点分からないのは、GHQの関与とは陰謀説的にはありそうですが、いかなる動機がありえたのかという点です。帝銀が占領政策に反対するようなことをしていたとは思えませんし、731部隊関係者が関与していたとしても積極的にGHQに協力する動機は思い浮かびません。松本さんはこの事件について「帝銀事件の謎」という本も書いているそうですので、そちも読んでみたいと思います。

例年本離れ、雑誌離れが叫ばれますが、確かに家計の使う本への消費額は実感としてもかなり減っている気がします。親の世代に比べて図書館や古本屋も充実していますし、簡単なコンテンツならネットで拾える(除く小説)ようになってきました。本を読むことが良いことだという単純な価値観は持っていませんが、電車やバスで本を読む人々の姿が本当に皆無になりつつあることは寂しい気がします。よい本があればしっかり書店で購入し、少しでも出版界の支えになりたいと思います。

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