2019年4月21日日曜日

第213回:「分離の時間」松本 清張

レーティング:★★★★★☆☆

またまた松本清張プレミアム・ミステリー(光文社文庫)シリーズです。今年から読みはじめ、かなり面白くてのめり込んで読んでいますが、ここでややひと段落を入れようと思います。どんなに面白い作家でも続けすぎると文体に少し飽きてしまうことがあり、その感じがしてきています。いうまでもないことですが、それは作品のクオリティとは全く違う話であり、本作も松本さんの新たな作風に出会える鮮烈なものでした。

今回は代議士が主要な登場人物となっており、その死の謎を追う二人の一般人が主人公となります。松本さんの作品では一般人がひょんなことから事件に関与し、私利私欲を捨ててその事件を追いかけてしまうというパターンが結構ありますが、今回もその系統です。他方、時間の分離という非常に面白いコンセプトで、今風に言えば時間のロンダリングでしょうか、巧妙に何をしているのかわからない時間を作ってしまうというところから話が始まります。犯人にとっては何をしているのか悟られないという利点がある一方、アリバイを明確に残せないという点では結構弱いのではないかと思います。しかし、それにつけても松本さんの作品が書かれた昭和の時代と今の日本では防犯カメラの有無というのが犯罪捜査上、多きな違いをもたらしているように思えます。刑法犯の検挙率がどう変わってきているのかわかりませんが、犯罪の発生数は大きく下がり、検挙率はかなり上がっているのではないでしょうか。

話がそれましたが、本書には珍しくもう一話収録されています。これも社会派の内容ですが、「速力の告発」という作品で車社会、とりわけ交通事故を題材としたものです。連日痛ましい事故が続いていますが、アイサイトのような衝突防止装置を早期に義務化しないといけないのではないでしょうか。これから高齢者による事故は減ることはないでしょうし。

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