2017年10月22日日曜日

第177回:「米中もし戦わば」ピーター・ナヴァロ

レーティング:★★★★★★★

トランプ政権における国家通商会議の委員長であり、学者でもある著者の一冊です。もともとは経済学者ということですが、今回の一作は経済、外交、地政学、軍事戦略など多くの領域にまたがる、冷静でありながら本質的な分析をわかりやすく提示しています。

まず、世界地図を中国からみることで、軍事や貿易戦略の観点から、どうやって一次列島線が中国によって設定されたかが描かれます。中国にとっては、海洋進出を実現し、シナ海を中心に軍事プレゼンスを高めて、海洋支配を固めていくことは、単に拡張的な思想に基づくだけでなく、国家存続の観点からも緊要性が高いことが明かされていきます。このあたりは、内外の豊富な中国研究を活かしながら、とても明快で事実に基づいており、その見事さを感じます。色々な見方を比較検討して妥当性を評価しているあたりも、説得力を増す要素となっています。

あと知らなかった点が多々あるのですが、とりわけ、アメリカが先端技術や兵器の開発をしつつ、核兵器を含めて軍縮を進める中で、中国はハッキングをフル活用しながら技術のキャッチアップを進め、対艦ミサイルや宇宙兵器においては米国を上回るレベルに来ているということです。物量も味方につけ、ひと昔のように旧式兵器ばかりということは事実ではなくなっているということです。

米中関係の今後についてはかなり悲観的なことが書かれていますが、なんとか両国が折り合いをつけて平和に共存してほしいところです。もちろんその最前線にいる日本にとっても重大な影響があるので、いろいろなことを考えさせられる一冊でした。なんとか次の世代が英知を発揮して、平和を追求してほしいと思います。

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