2017年7月16日日曜日

第171回:「獲物山」服部 文祥

レーティング:★★★★★★☆

服部さんは、いま一番面白いのではないかという方の一人です。私が知ったのは昨年だったか2年前くらいにある登山雑誌で目にしてからですが、その前から相当有名な方であり、K2(パキスタンの最高峰、8611M)を登頂しており、日本屈指のアルパインクライマーでありました。しかしながらその後、装備(人工物)を使って上る現代的な登山に疑問を感じ、ごく最小限のもの(米、調味料、鍋、釣り竿、猟銃等)だけをもって、山で狩猟、最終をしながら登山を行うとてもレアな『サバイバル登山』という分野を実践されています。私は読んでいませんが、雑誌『岳人』(モンベルが運営)の編集部に勤務されてながら、いろいろな媒体に寄稿したりテレビにも出演されています。

本書は、雑誌「フィールダー」に連載された記事を1冊にまとめたもので、とてもきれいなビジュアルと構成が特徴的です。どうしても狩猟の話が大きく、仕留めた動物(主に鹿)の画像が結構出てくるので、苦手な人はあまり手に取らない方がよいかもしれません。いろいろ驚きがあるのですが、この人は野人のような人で、野生の植物、動物をなんでもタブーなしに食事にしていきます。自衛隊のレンジャー訓練なども楽勝でこなせそうですが、そのタフさには刮目します。また、単に狩猟や登山をしているわけではなく、とても思索的、哲学的な一面が見られます。そこが単なる野人としての本ではない深みや魅力をだしています。生身の動物に手をかけ、生きること、食べることを探っていく言葉には、とても強い説得力やイメージの喚起力があります。

服部さんの本をもう1冊読んでいますが、サバイバル登山は手探りで進化を遂げているようです。とても面白く、しばらく服部さんの本を一連読み進めていきたいと思います。なお、作家としても評価されており、作品「ツンドラ・サバイバル」にて第5回梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞を受賞されています。とにかく型破りであり、少しでも関心を持たれた方は一読をお勧めします。

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