2016年7月9日土曜日

第149回:「警察庁国際テロリズム対策課ケースオフィサー(上)(下)」麻生 幾

レーティング:★★★★☆☆☆

前回(第148回)に続いて麻生さんの警察庁ものです。文庫版(2009年刊行)を読んだのですが、ちょうど1週間前にバングラデシュにおけるイスラム過激派によるカフェ襲撃で多くの日本人、イタリア人他が亡くなりました。とても残酷な犯罪で、犯人グループは立てこもると非ムスリムや外国人を狙って危害を加えていったようです。外国において希望をもって仕事に当たっていた方々の無念さは計り知れません。

本作は、その事件後の報道でも出てきた警察庁のカウンター・テロリズム活動の話です。あとがきによれば、どうも当事者にかなり取材した形跡があり、もちろん取材源秘匿の観点からも相当デフォルメやフェイクを入れているにせよ、日本初の国際過激派を追っていた話などはかなりリアリティがあります。また、主な舞台は9.11直後の日本ですが、おそらく当時は相当警察中心に緊張が高まったのは想像に難くありません。これから東京オリンピックもありますし、いろいろな形でテロ防止ということは切実な課題として日本でもクローズアップされるのではないでしょうか。

さて、作品としては前回レビューしたものよりはわかりやすく、上下巻と長いことからもわかる通り、二つの時代を一人の刑事の視点から統合していく意欲作となっています。中東の乾いた感じとヒロイン(?)もマッチしており、とても雰囲気のある作品といってよいかと思います。他方、二つの時代を交互に行き来していく形で物語が進行し、著者特有のとびとびの記述が目立つ部分があり、それなりに丁寧に読んでいても物語の筋が相当分かりにくい部分があるのも事実です。この点がもう少し改善されれば、文句なく星5つかなと思うのですがそこは残念です。そういうのは繰り返しですが編集者がきっちりと指摘して改善していかないといけないと思うのですが。

これで警察小説は一つ区切りをつけて、また違ったものを読み進めています。6月は妙に忙しくてなかなか読書が進みませんでしたが、7、8月はたくさん読むものがたまっているのでドンドン行こうと思います。

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