2015年3月22日日曜日

第114回:「点と線」松本 清張

レーティング:★★★★★★★

昭和33年に刊行された松本氏の代表作の一つです。本来あまりミステリーは読まない(好きな人はミステリー本当に好きですが)たちなのですが、松本清張はもはや歴史的大御所に属し、文章がとてもかっこいいのです好きです。と書きながら白状すると、羽田空港で出発前に買ったのですが、数ページ読むまで以前読んだことがあることに気づきませんでした・・。しかし、どうも以前読んだ時は最後まで読まなかったようで、このブログでチェックしても記録がなく(基本的に最後まで読んだものは全てアップしてます)、今回読んでも後半は記憶になかったのでそういう意味では初めて読んだといってよさそうです。結論から言って、とても面白く、話の謎だけではなく昭和中期の独特の雰囲気が描写されていて、その観点からも貴重な一作と言えると思います。

話はとても有名ですし、ネタバレを避けるために詳細には触れませんが、時刻表を中心としたトリックです。松本氏のミステリは単なる謎ではなく社会性をもった広がりがあることで著名ですが、本作も安田という人物と役所の距離が大きな背景として機能します。面白いのは色々な謎を2名の刑事が執拗に追うのですが、その都度本当に破りがたい壁にぶち当たるところです。さらに2名というのがポイントで、励まし、考察するものと発奮し、行動するものがある種2人で一つの人格を作り上げ、犯人を追い込んでいくところがユニークで、物語に深みを与えていると思います。

また、ここに描かれる料亭、結核療養、長距離列車、航空会社、博多などはいずれも生き生きとした戦後復興を果たしつつある社会を映し出しており、なぜかとてもおしゃれな感じがします。主人公というべき刑事がちょくちょく美味しいコーヒーを飲みに行くのも、当時としてもとてもハイカラなのではないでしょうか。ブルーボトルコーヒーとはまったくちがう本当に味のあるコーヒーの香りがする一冊です。

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