2011年7月30日土曜日

第19回:「私を離さないで」 カズオ イシグロ

レーティング:★★★★★☆☆

イギリスのブッカー賞作家、ということで日本で随分有名なカズオ イシグロさんの長編小説です。私はもう10年以上前になりますが、カズオ イシグロの「日の名残り」という作品の映画(アンソニー・ホプキンス主演)を見て、作者を知りました。それから随分と時間が経ちましたが、(私にとって)二つ目の作品として読んでみました。

各所のレビューで書かれている通り、ネタばれのリスクが高いのでもってまわったような書き方しかできませんが、最後の1/3でこの小説の凄さをじわじわ感じました。最初は、なにか現実感を失ったような、しかし凄くリアルな子供たちの生活が描かれていきます。正直言って、前半は進みが遅く、繰り返される会話ややりとりがなんのためにあるのか良く分からず、もったいぶっちゃってさ、と若干がっかりしながら読み進みました。

しかし、後半(の後半)に急展開して、今まで語られなかったことがより鮮明になり、息苦しいような展開になっていきます。設定されたシチュエーションはまったく凡庸ではないのですが、実は不変的で切実なテーマについての話だということに気づかされます。

作品としては重苦しく、密度が濃いので読むのにはパワーが必要でした。仕事の後、電車に乗ってさあ読むか、という気になかなかなりません。それだけきちんと向き合うことが必要な良い作品なのかもしれませんが、なかなかにヘビーです。カズオ イシグロの作品は沢山読んでいないものがあり、追って読んでいきたいと思います。

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