2011年3月13日日曜日

第6回:「指一本の執念が勝負を決める」冨山 和彦

レーティング:★★★★★☆☆

鼓舞される本だった。2007年6月刊行なので第5回のレビュー作「会社は頭から腐る」より少し前に刊行されたもので、正直言って「会社は頭から腐る」と重なる部分は大きいものの、この作品はよりパーソナルなメッセージが多く親しみを持ちやすい。また、前作がどちらかというと産業再生機構での仕事をカジュアルに振り返るという面があったのに対して、本作はもうすこしビジネスパーソンの生き方や著者の今後の展望(新たな会社を立ち上げた直後)を語るところに重点が置かれています。

経営という仕事を俯瞰したとき著者がこだわるのは、どこまで執念を持って粘り強く仕事に取り組み、周りの人を興味を持って観察し、ガチンコ勝負(数十回出てくる)できるかという点。例えば二十代は睡眠も貯金も必要ない、とか三十半ばまでは(仕事では)ガキとか刺激的であるが歯切れの良い言葉が多く出てきます。個人的には睡眠も多少の貯金も必要だったのですが、心意気としては著者の書いているところに共感できます。

(著者は自ら書いていますが)典型的な偏差値エリートですが、そこにはとどまらずロジカルに考え抜いて「自分の」人生を生きることの大切さについて力説します。特に第3章は、著者がどう勉強してきたかについて書いており、例えば20代前半の社会人の人などには(時間も沢山あるし)一つのモデルとして参考にできるのではないでしょうか。

最後に欲を言えば、守秘義務があって書けないことが多いのだとは思いますが、再建に当たって経験した修羅場についてもっと深く、具体的にかいてあると一層ガチンコ勝負の大切さが浮き上がってくると思われます(携帯電話事業の話などは秀逸)。前作は同僚から本の話を聞きましたが、実はこの本も尊敬する会社の大先輩から、伺った本です。

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