2019年8月10日土曜日

第224回:「黄砂の籠城」松岡 圭祐

レーティング:★★★★★★☆

随分前回のレビューから時間が空いてしまいました。更新頻度が落ちるときは本があまり読めていないという時もあるのですが、それ以上に仕事やらで忙しくなってしまい、なかなか家でPCを空ける時間が取れないという時が多いです。7月は色々とバタバタでしたが、やっとお盆になり一息。数冊のストックがあるので順にレビューしていきたいと思います。

さて、松岡さんの本はまだ読んだことがなかったのですが、ミステリーを中心に書かれてきた作家が書下ろしで新たなジャンルに挑んだのがこの一冊ということです。あるブログを読んでいたら、本当に面白いので読んでほしいという熱いポストがあり手を出してみました。文庫で上下2冊ですが、非常に面白くてぐいぐい読んでしまいました。

題材は歴史で習う所謂「義和団事件」であり、義和団の乱とか義和団の変などといったりもします。時は清王朝の末期、1900年のことです。予てからの日本を含む列強の中国への駐屯が進む中で、欧米諸国は宣教師を通じたキリスト教の布教に力を入れていましたが、その欧米人やキリスト教のアプローチに強く反発した宗教結社の義和団が中核となり、キリスト教会を手始めに列強の権益に反対し、ついには西太后が列強に宣戦布告をし、北京の公使館地区である東交民港を義和団と清朝軍が包囲し、壮絶な籠城戦を行っていきますが、この過程が描かれています。

その籠城戦の中では、会津という歴史的な宿命を負ってしまった藩出身の柴五郎が陸軍軍人として連合国の作戦立案、籠城戦でとてつもない働きをします。そのこと自体知りませんでしたが、日本人は一致団結して、また義勇兵も含めて献身的に働き、籠城戦成功に大きな役割を果たしたと言われています。やや一方的な日本礼賛と思えるところもなくはないですが、筆致は抑え気味でわりと客観的なのではないかと思います。また、この間の他国(特にイギリス、ロシア)とのやりとりや内紛、スパイなどは息を握る展開であり、ものすごい戦いがあったのだなと痛感しました。歴史ものとしてもエンタメ大作としてもとても面白く読めると思います。お勧めです。

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