2018年6月2日土曜日

第189回:「羊をめぐる冒険」村上 春樹

再び村上さんの足跡を辿る第3弾です。本書は村上さんの長編作家としての立場を確立したといっても過言ではない初期の初長編であり、内容としても前2作に比べてぐっとシリアスになり、深みを増しています。また、カルト集団や歴史的な物語(特に昭和初期の満州)がモチーフとして出てきます。本書の主な舞台は都内と北海道ですが、私はこれを読んだ高校時代は北海道に行ったことがな、強い憧れを抱いたのを覚えています。その分、札幌や函館、小樽に行く機会が得られたのは本当に嬉しかったです。

本書の面白さは、現世のものと現世でないものが融合して出てくるところです。詳細は書けませんが、(下)で出てくる丘の上での邂逅は本当に感動的であり、歴史的なシーンだと思います。また、いろいろと回収されない謎があり、たとえば「ガールフレンド」はなぜどこに行ってしまったのか、「羊」という不気味な存在の狙いは何なのか、どうして「羊男」という形をとる必要があったのか・・・。

それなりの長さなので久々に読みましたが、下巻からは2002年2月にロンドンに一人従兄を訪ねて行った時の栞がでてきましてこれまたとても懐かしくなりました。どうもその時に機内で読んでいたようです。映画のチケットの半券でもうそんな映画を見たことも忘れていましたが、雨に濡れた寒い夕方に映画館に行ったことを思い出しました。イヌイットの映画でした、なんでこの映画を見に行ったのか。

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