2015年9月21日月曜日

第125回:「小太郎の左腕」和田 竜

レーティング:★★★★★☆☆

最近よくレビューしている和田さんの一冊です。奥付を見ると2009年(単行本)発行ということで、著者にとっては初期の作品になるのでしょうか。これは「村上海賊の娘」のようなスケールの大きさはありませんが、こじんまりとしていながら味わいのある一冊です。著者の好きな火縄銃、忍といった主題がふんだんに出てきており、後の作品につながる内容であることが分かります。

最初はある小国が国境付近で衝突するシーンから始まります、そこで一方が敗退し、籠城に備えた準備を始めます。同時に戦いがおこった付近には気難しい爺さんと天才的な技能を持つ若者が居て・・・という展開です。この若者の技量がやや超人的すぎるところが、かなりリアリティを減殺していますが、著者は大胆に超能力的な人や技量というものを描くので、そこは確信犯的なものがあるのだと思います。伝統的な歴史ファンからしたら、歴史小説とは言えない、という声が聞こえてきそうですが・・。

この一冊で面白いのは、日本において如何に早く火縄銃が普及したかというところです。種子島に伝来してから相当早く複製が可能となり、堺では量産からほどなく全国への流通ルートが確立されたということなので、当時から日本の工業と貿易が高度に発展していたことを実感します。読みやすい一冊なので5時間程度で十分に読めるお勧めの一冊です。

0 件のコメント:

コメントを投稿