レーティング:★★★★★☆☆
2017年7月に刊行されたビジネス書です。ロングセラーになっているようで、本屋でも平積みされていますし、日経新聞にも時折広告がでているので目にされた方も多いかと思います。ビジネス書は表面的だったり、薄っぺらいものが少なくないですが、本書は切り口が面白く、二回読んでしまいました。ちなみにページ数はそれなりにありますが、平易な文章でありどんどん読めます。
著者は経営共創基盤のパートナーということですが、20代のころに会社をやったり、大病を患ったり、海外MBAやAMPの経験もあるなど幅広い経験を生かした一冊となっています。著書のタイトルはアイキャッチとしての機能を十分果たしていると思いますが、ビジネス書にありがちなやや煽りの入ったタイトル設定なのがやや残念です。中身は、ごく真っ当です。
例えばプレゼン能力が高いとか財務諸表が読めるとか、英語ができる、そういった経営上必要なスキルをブライトサイド・スキルと定義し、他方で上下の人に影響力を与え、信頼関係を構築し、情報を収集していく力をダークサイド・スキルと定義し、その強化・活用を訴えています。そのためにはCND(調整、根回し、段取り)を付けるとか、一つ上の上司とのホットラインを作るとか、情報収集のためのシナプスを張り巡らすなど色々と書いてあり、それぞれは一定以上の年数を経たビジネス・パーソンであれば実感として良くわかるものではないかと思います。
本書はいろいろな会社のミドル向けに描かれており、20代が読んでも正直ピンとこないかもしれません。20代はむしろ率直にブライトサイド・スキルを身に着けることに集中した方がよいかもしれません。また、本書を50代で読んでも逆にすべて知っている、またはもう遅いという話かもしれず、年代的には35~45くらいの方にお勧めです。簡単そうに見えますが奥深い一冊で、売れている理由が分かる気がします。
このBlogの目的は、シンプルです。ただ、私が読んだ本を評していくこと、それだけです。ちなみにジャンルの限定はなく、ただ一つのルールは、私が最初から最後までリアルタイムに読んだ本、それを書評することだけです(従って、昔読んだ本や全て読まなかったものは対象外)。
2018年3月31日土曜日
2018年3月25日日曜日
第185回:「こころの読書教室」河合 隼雄
レーティング:★★★★★★☆
この本は2度目のレビューとなります。第126回(2015年10月)に読んでレビューをしていますが、2週間ほど前に外出直前になにか本をもっていこうと思ってカバーのついた文庫本をカバンに入れていったのですが、その本がこちらでした。一度読んだ本のカバーはとることを習慣としているのですが、この本は当時忙しかったのかそのままとなっていました。
この本は河合さんの最晩年に描かれた本で、厳密には語り下ろしを本にしたものです。児童文学などを中心に紹介しながら心というものを解き明かしていくコンセプトですが、記憶にあったよりずっと深いものをテーマにしており、改めてその優しい語り口に心打たれるものがあります。臨床を扱う心理士/学者として、なにより患者であったり不調に抱える人に対するとても優しい目線をもっています。また、無意識が顔を出してしまうことがある、というスタンスでそれによる支障をそのまま受け止め、むしろそこから汲めるものが人生を豊かにするという姿勢をもっており、さすがユング派の大家という感じです。
本が数十冊紹介されており、どれも面白そうなのですがいまそのうちの一冊を読んでいます。もう1冊読んでみたいと思うのですが年度末もありやや時間がとりにくく、GWあたりにでもゆっくり読んでみたいと思います。最近は帰りの電車で疲れてぼーっとスマホを眺めることが多かったのですが、文庫は手に取りやすく、河合さんの優しい語り口にずいぶん癒されました。2回目ですが、前回より深く理解できた感じがします。もう一度数年後に読みたい一冊です。
この本は2度目のレビューとなります。第126回(2015年10月)に読んでレビューをしていますが、2週間ほど前に外出直前になにか本をもっていこうと思ってカバーのついた文庫本をカバンに入れていったのですが、その本がこちらでした。一度読んだ本のカバーはとることを習慣としているのですが、この本は当時忙しかったのかそのままとなっていました。
この本は河合さんの最晩年に描かれた本で、厳密には語り下ろしを本にしたものです。児童文学などを中心に紹介しながら心というものを解き明かしていくコンセプトですが、記憶にあったよりずっと深いものをテーマにしており、改めてその優しい語り口に心打たれるものがあります。臨床を扱う心理士/学者として、なにより患者であったり不調に抱える人に対するとても優しい目線をもっています。また、無意識が顔を出してしまうことがある、というスタンスでそれによる支障をそのまま受け止め、むしろそこから汲めるものが人生を豊かにするという姿勢をもっており、さすがユング派の大家という感じです。
本が数十冊紹介されており、どれも面白そうなのですがいまそのうちの一冊を読んでいます。もう1冊読んでみたいと思うのですが年度末もありやや時間がとりにくく、GWあたりにでもゆっくり読んでみたいと思います。最近は帰りの電車で疲れてぼーっとスマホを眺めることが多かったのですが、文庫は手に取りやすく、河合さんの優しい語り口にずいぶん癒されました。2回目ですが、前回より深く理解できた感じがします。もう一度数年後に読みたい一冊です。
2018年2月24日土曜日
第184回:「息子と狩猟へ」服部 文祥
レーティング:★★☆☆☆☆☆
著者の書くノンフィクションや出ている映像が好きで、よく目にしていた(レビューもしています)ので、楽しみに手に取った一冊です。おそらく著者初めての小説作品ではないかと思いますが、出来ばえとしては率直に言って良くなく、何が言いたいのか分からず、ただひたすらに暗い話でありとても残念でした。2作品が収められていますが、結局、狩猟 とは何なのか、サバイバルすることとはなんなのかということを中心に話が展開していきますが、重要な人物(たとえば息子)の言動が非現実的であったり・・・あまりにがっかりなので今回は手短に。
著者の書くノンフィクションや出ている映像が好きで、よく目にしていた(レビューもしています)ので、楽しみに手に取った一冊です。おそらく著者初めての小説作品ではないかと思いますが、出来ばえとしては率直に言って良くなく、何が言いたいのか分からず、ただひたすらに暗い話でありとても残念でした。2作品が収められていますが、結局、狩猟 とは何なのか、サバイバルすることとはなんなのかということを中心に話が展開していきますが、重要な人物(たとえば息子)の言動が非現実的であったり・・・あまりにがっかりなので今回は手短に。
2018年2月17日土曜日
第183回:「空白の五マイル」角幡 唯介
レーティング:★★★★★★★
現代には稀な冒険家の話。世界中の殆どの場所が踏破されつつある現代において、そもそも冒険というものが成立しづらくなっているわけですが、著者は冒険の現代的な意味を問いながら、ツアンポー峡谷という中国とインド国境付近の最後の楽園とされた土地について書いていきます。本書(文庫)は2012年に出ていますが、著者の角幡さんは近著(エッセー?)もあるようなので、そちらも遠からず読んでみたいと思います。
本書は前回レビューに続いて星7つです。大学時代に心底感動した本が『この地球を受け継ぐ者へ―人力地球縦断プロジェクト「P2P」の全記録』(石川 直樹)だったのですが、その本とはまた違った趣で強い印象が残りました。まずP2Pは、世界的なプロジェクトに選ばれた若者たちが衝突を繰り返しながら協力してエクスペディションを行っていくものでした。衛星携帯やブログといった当時最新のテクノロジー満載で、ほぼリアルタイムで旅の様子が発信されていく形であり、全体として明るく、夢と希望に満ちたものでした。翻って今回レビューした一冊は、大学の探検部時代からツアンポーに取りつかれた人が、大学時代のツアンポー峡谷踏査の構想を3回に分けてかなえていき、その手法も基本的には単独行、傷だらけ、サポート僅か、予測不可能な事態が連続して生きて帰れるのかどうか、という厳しいものです。また、著者の大学の先輩がツアンポー峡谷のカヌーで亡くなったエピソードから始まるように、常に死と生と冒険という重いテーマを抱えています。
読んでいて本当に驚くのが切実な動機をもってツアンポーに入り、限られた食料を持ちながら沢の遡行、藪漕ぎ、クライミング、雪との闘いを乗り越えていく強さです。自らの生を放り投げたような粗削りな旅ですが、恐れおののきながら進んでいく様はとても感動的です。また、ツアンポーの複雑な歴史や文化自体もとても興味深いですし、更には旅の最後で見せられる官憲のやさしさといった部分もぐっときます。私は、本作で出てくる人(1人だけ)とお会いし、一緒に食事を1度だけさせていただいたことがもう16年ほど前にあります。とても強烈な印象を受けた方で、眼の力が強く、今でも忘れられない方です。この本を読んでいて期せずして再びそのご活躍ぶりを目にして、まったく予期しない感銘も受けました。
現代には稀な冒険家の話。世界中の殆どの場所が踏破されつつある現代において、そもそも冒険というものが成立しづらくなっているわけですが、著者は冒険の現代的な意味を問いながら、ツアンポー峡谷という中国とインド国境付近の最後の楽園とされた土地について書いていきます。本書(文庫)は2012年に出ていますが、著者の角幡さんは近著(エッセー?)もあるようなので、そちらも遠からず読んでみたいと思います。
本書は前回レビューに続いて星7つです。大学時代に心底感動した本が『この地球を受け継ぐ者へ―人力地球縦断プロジェクト「P2P」の全記録』(石川 直樹)だったのですが、その本とはまた違った趣で強い印象が残りました。まずP2Pは、世界的なプロジェクトに選ばれた若者たちが衝突を繰り返しながら協力してエクスペディションを行っていくものでした。衛星携帯やブログといった当時最新のテクノロジー満載で、ほぼリアルタイムで旅の様子が発信されていく形であり、全体として明るく、夢と希望に満ちたものでした。翻って今回レビューした一冊は、大学の探検部時代からツアンポーに取りつかれた人が、大学時代のツアンポー峡谷踏査の構想を3回に分けてかなえていき、その手法も基本的には単独行、傷だらけ、サポート僅か、予測不可能な事態が連続して生きて帰れるのかどうか、という厳しいものです。また、著者の大学の先輩がツアンポー峡谷のカヌーで亡くなったエピソードから始まるように、常に死と生と冒険という重いテーマを抱えています。
読んでいて本当に驚くのが切実な動機をもってツアンポーに入り、限られた食料を持ちながら沢の遡行、藪漕ぎ、クライミング、雪との闘いを乗り越えていく強さです。自らの生を放り投げたような粗削りな旅ですが、恐れおののきながら進んでいく様はとても感動的です。また、ツアンポーの複雑な歴史や文化自体もとても興味深いですし、更には旅の最後で見せられる官憲のやさしさといった部分もぐっときます。私は、本作で出てくる人(1人だけ)とお会いし、一緒に食事を1度だけさせていただいたことがもう16年ほど前にあります。とても強烈な印象を受けた方で、眼の力が強く、今でも忘れられない方です。この本を読んでいて期せずして再びそのご活躍ぶりを目にして、まったく予期しない感銘も受けました。
2018年2月12日月曜日
第182回:「外道クライマー」宮城 公博
レーティング:★★★★★★★
久々の星7つ、とても型破りで面白い一冊でした。那智の滝を登った人が捕まった事件はニュースになりました(2012年7月)が、その時に目にされた方もいるかとおもいます。私も当時は山登りにも沢登り(こちらはやったことありませんが)にも興味がなく、沢ヤはなんでこんなバカな、罰当たりなことをするんだろうと思って気にも留めませんでした。しかし、なんとその逮捕されたうちの一人がこの著者と知って驚くとともに、更にこの本の面白さに驚いたところです。
宮城さんは、クライマーとしてヒマラヤなどで高い実績を上げつつ、そのクライミング技術に磨きを掛け、国内外で沢登りをするいわゆる生粋の沢ヤということです。仕事も那智の滝で逮捕されてからやめてしまい、今はクライミングやライター、登山ガイドなどをして過ごしているそうです。本書の面白さは、宮城さんと仲間の沢ヤのキャラの濃さと飾らない生き方につきます。常識をはるかに超えたような挑戦をただふらりとやってしまうその生き方は、とても市井のリーマンには真似もできないところであり、それがゆえにあこがれる部分があります。
本書は那智の滝での逮捕事件から始まり、メインとなるタイのジャングル46日探検、台湾の大渓谷(チャーカンシー)、称名滝の登攀といった構成です。どれも濃密な体験であり、沢や滝をひたすら遡上するという旅は私には面白さが分かりませんが、とにかくそれに魅せられて力を合わせて(合わせてないときも多いですが)進んでいく姿は痛快です。特にタイのジャングルは壮絶で生死の境目に来たというような局面がいくつか出てきます。本当はミャンマーにいきたかったのに、途中で予定を変更してタイに行ったり、いきあたりばったりですが、クライミングについてはそれなりに周到な準備をしたりと緻密なんだか緻密じゃないんだかよくわかりません。
世間の常識から大きく外れた生活ですがこういう本がちゃんと出版され、また多くの読者がついているところに日本の社会の多様さというか健全さを感じます。表現含めてとても面白く、最初の索引からかなり笑えますのでとてもお勧めです。
久々の星7つ、とても型破りで面白い一冊でした。那智の滝を登った人が捕まった事件はニュースになりました(2012年7月)が、その時に目にされた方もいるかとおもいます。私も当時は山登りにも沢登り(こちらはやったことありませんが)にも興味がなく、沢ヤはなんでこんなバカな、罰当たりなことをするんだろうと思って気にも留めませんでした。しかし、なんとその逮捕されたうちの一人がこの著者と知って驚くとともに、更にこの本の面白さに驚いたところです。
宮城さんは、クライマーとしてヒマラヤなどで高い実績を上げつつ、そのクライミング技術に磨きを掛け、国内外で沢登りをするいわゆる生粋の沢ヤということです。仕事も那智の滝で逮捕されてからやめてしまい、今はクライミングやライター、登山ガイドなどをして過ごしているそうです。本書の面白さは、宮城さんと仲間の沢ヤのキャラの濃さと飾らない生き方につきます。常識をはるかに超えたような挑戦をただふらりとやってしまうその生き方は、とても市井のリーマンには真似もできないところであり、それがゆえにあこがれる部分があります。
本書は那智の滝での逮捕事件から始まり、メインとなるタイのジャングル46日探検、台湾の大渓谷(チャーカンシー)、称名滝の登攀といった構成です。どれも濃密な体験であり、沢や滝をひたすら遡上するという旅は私には面白さが分かりませんが、とにかくそれに魅せられて力を合わせて(合わせてないときも多いですが)進んでいく姿は痛快です。特にタイのジャングルは壮絶で生死の境目に来たというような局面がいくつか出てきます。本当はミャンマーにいきたかったのに、途中で予定を変更してタイに行ったり、いきあたりばったりですが、クライミングについてはそれなりに周到な準備をしたりと緻密なんだか緻密じゃないんだかよくわかりません。
世間の常識から大きく外れた生活ですがこういう本がちゃんと出版され、また多くの読者がついているところに日本の社会の多様さというか健全さを感じます。表現含めてとても面白く、最初の索引からかなり笑えますのでとてもお勧めです。
2018年1月27日土曜日
第181回:「絵から読み解く江戸庶民の暮らし」安村 敏信監修
レーティング:★★★★★☆☆
日本史が昔から好きで、ちょこちょこと関連の本を読んでいます。今回はほとんど知識のない江戸時代の本です。例えば由井正雪の乱とか、忠臣蔵とか、寺子屋での教育が普及し、世界有数の教育大国であったとかそういう断片的な知識しかないので、一度読んでみたいとおもっていたところ、期待を裏切らない一冊でした。本作は、タイトルのとおり浮世絵を中心とした各種の絵や出版物から江戸の庶民の生活について説明する本であり、肝心の絵が小さい、白黒であるという点を除けばとても読みやすく、構成も飽きさせない優れた一冊だと思います。ちなみに監修の安村さんは美術館の館長を務められ、現在は美術品屋を経営している方のようです。
備忘もかねて面白かった点を書くと、江戸の町はざっくりいって50万人の武士を養うために50万人の町人が居る世界有数の大都市であったこと、現在と同様に生粋の江戸っ子は少なく、奉公や参勤交代といった形で地方から来た人が大半であったこと、すでに浄水が武蔵野のあたりから引かれており、下水は整備されていないもののし尿は農業にリサイクルされていたこと。火事が多く、地震や台風、火山など天災も多かったことから、宵越しの金は持たないといった「いき」の土台が生まれてきた。天ぷらやすしは庶民の街角のスナックであり、食べ物にもブーム(桜餅)があったり、大食いバトルまであったということ。他方、住まいは長屋が密集し、現代より町人はよっぽど狭いところでの生活をしていたこと、そういう長屋のなかで手工業を行ったり、勤めに出て行ったりしたこと。庶民は浮世絵を見たり、相撲を見たり、大山など近隣の自社に講単位で出かけて楽しんだこと。意外にもかかあ天下の家が多く、離婚や勘当も結構あったこと。寺子屋はとても工夫されており、テキストもかなりの種類があったこと。おしゃれは当時から重要視されており、バサラ、傾奇といった突飛な格好の人もかなりいたこと。
通読して、独自の文化をはぐくみ、質素、いきであることを旨としながら、祭りや花火といった熱さをもっていた江戸の町人にとても親近感を持ちました。なんだ、結局時代が変わってもやってることはあまり変わらない、という印象です。技術は進歩しているかもしれませんが、夏になれば人々は花火に群がり、お祭りに出かけ、冬にはお寺に初もうでにいって、相撲やコンサートを見に行きます。路上ですしは売っていませんが、ケバブをつまんだり、漫画を楽しんだり、日帰りで箱根に出かけたり。驚くほと人々の行動様式は変わっていません。江戸でも現代でもいろいろな楽しみを見つけながら、簡単ではない世の中を必死に生きた先達が居るということはとてもうれしく、励まされるものがあります。ぜひ武士の暮らしについても読んでみたいと思います。
日本史が昔から好きで、ちょこちょこと関連の本を読んでいます。今回はほとんど知識のない江戸時代の本です。例えば由井正雪の乱とか、忠臣蔵とか、寺子屋での教育が普及し、世界有数の教育大国であったとかそういう断片的な知識しかないので、一度読んでみたいとおもっていたところ、期待を裏切らない一冊でした。本作は、タイトルのとおり浮世絵を中心とした各種の絵や出版物から江戸の庶民の生活について説明する本であり、肝心の絵が小さい、白黒であるという点を除けばとても読みやすく、構成も飽きさせない優れた一冊だと思います。ちなみに監修の安村さんは美術館の館長を務められ、現在は美術品屋を経営している方のようです。
備忘もかねて面白かった点を書くと、江戸の町はざっくりいって50万人の武士を養うために50万人の町人が居る世界有数の大都市であったこと、現在と同様に生粋の江戸っ子は少なく、奉公や参勤交代といった形で地方から来た人が大半であったこと、すでに浄水が武蔵野のあたりから引かれており、下水は整備されていないもののし尿は農業にリサイクルされていたこと。火事が多く、地震や台風、火山など天災も多かったことから、宵越しの金は持たないといった「いき」の土台が生まれてきた。天ぷらやすしは庶民の街角のスナックであり、食べ物にもブーム(桜餅)があったり、大食いバトルまであったということ。他方、住まいは長屋が密集し、現代より町人はよっぽど狭いところでの生活をしていたこと、そういう長屋のなかで手工業を行ったり、勤めに出て行ったりしたこと。庶民は浮世絵を見たり、相撲を見たり、大山など近隣の自社に講単位で出かけて楽しんだこと。意外にもかかあ天下の家が多く、離婚や勘当も結構あったこと。寺子屋はとても工夫されており、テキストもかなりの種類があったこと。おしゃれは当時から重要視されており、バサラ、傾奇といった突飛な格好の人もかなりいたこと。
通読して、独自の文化をはぐくみ、質素、いきであることを旨としながら、祭りや花火といった熱さをもっていた江戸の町人にとても親近感を持ちました。なんだ、結局時代が変わってもやってることはあまり変わらない、という印象です。技術は進歩しているかもしれませんが、夏になれば人々は花火に群がり、お祭りに出かけ、冬にはお寺に初もうでにいって、相撲やコンサートを見に行きます。路上ですしは売っていませんが、ケバブをつまんだり、漫画を楽しんだり、日帰りで箱根に出かけたり。驚くほと人々の行動様式は変わっていません。江戸でも現代でもいろいろな楽しみを見つけながら、簡単ではない世の中を必死に生きた先達が居るということはとてもうれしく、励まされるものがあります。ぜひ武士の暮らしについても読んでみたいと思います。
2018年1月3日水曜日
第180回:「最高の休息」久賀谷 亮
レーティング:★★★★★☆☆
前回レビューしたマインドフルネス関係の類書ですが、米国で医師をしている精神科医の本です。入門編的になじみやすいエピソードを展開しつつ、専門知識を交えた解説を加えていくスタイルで、最近(といってももうしばらくそうですが)はやりの形をとっています。古本屋で買ったのですが、昨年さかんに新聞などで宣伝されていた一冊であり、中古でも1000円近くと値を保っているところをみると結構人気がある一冊のようです。
世の中のマインドフルネス本は、そのやり方や効能にフォーカスしているのに対して、本書は脳科学的なアプローチで疲労の正体が身体的というより脳からくるものであることを丹念に説き起こしています。そして慢性疲労症候群など幅広い疾病に脳の疲労というものが関連していること、そしてマインドフルネスのプラクティスによりどのような脳への変化が期待されるかが書かれています。実証的なデータを引用しながら、とても中立的に書かれていますので、これさえやれば健康になるとか、これさえやればみんなハッピーという軽率さがないところがよいところでしょう。
面白いのは競争が人を疲弊させるという下りです。アメリカにいる著者は競争を叩き込まれるアメリカ人の生き方に共感しつつも、深い憂慮を抱いていることが分かります。しかし競争的な社会や環境であっても、疲労の感じ方にはとても大きな個人差があるということであり、要はどういう考え方をするか、感じ方をするかという受け止め方が重要であることが説かれています。今年の目標の一つとして、いろいろな気付きをもって生きていくことを大事にしたいと思います。
さて、昨年は18冊と本ブログ開始(2011年)以来、最低の読破数となってしまいました。単純に最大の理由は仕事や育児に追われて時間がなかったことにつきますが、平日も帰りにスマホばかりみてしまって読書量が減ってしまった面もあります。本としては趣味寄りの軽い本が多かったために、今年はもう少し(今読んでいるものも含めて)古典的なものや超大作にも取り組んでみたいと思います。
前回レビューしたマインドフルネス関係の類書ですが、米国で医師をしている精神科医の本です。入門編的になじみやすいエピソードを展開しつつ、専門知識を交えた解説を加えていくスタイルで、最近(といってももうしばらくそうですが)はやりの形をとっています。古本屋で買ったのですが、昨年さかんに新聞などで宣伝されていた一冊であり、中古でも1000円近くと値を保っているところをみると結構人気がある一冊のようです。
世の中のマインドフルネス本は、そのやり方や効能にフォーカスしているのに対して、本書は脳科学的なアプローチで疲労の正体が身体的というより脳からくるものであることを丹念に説き起こしています。そして慢性疲労症候群など幅広い疾病に脳の疲労というものが関連していること、そしてマインドフルネスのプラクティスによりどのような脳への変化が期待されるかが書かれています。実証的なデータを引用しながら、とても中立的に書かれていますので、これさえやれば健康になるとか、これさえやればみんなハッピーという軽率さがないところがよいところでしょう。
面白いのは競争が人を疲弊させるという下りです。アメリカにいる著者は競争を叩き込まれるアメリカ人の生き方に共感しつつも、深い憂慮を抱いていることが分かります。しかし競争的な社会や環境であっても、疲労の感じ方にはとても大きな個人差があるということであり、要はどういう考え方をするか、感じ方をするかという受け止め方が重要であることが説かれています。今年の目標の一つとして、いろいろな気付きをもって生きていくことを大事にしたいと思います。
さて、昨年は18冊と本ブログ開始(2011年)以来、最低の読破数となってしまいました。単純に最大の理由は仕事や育児に追われて時間がなかったことにつきますが、平日も帰りにスマホばかりみてしまって読書量が減ってしまった面もあります。本としては趣味寄りの軽い本が多かったために、今年はもう少し(今読んでいるものも含めて)古典的なものや超大作にも取り組んでみたいと思います。
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