レーティング:★★★★★☆☆
日本史が昔から好きで、ちょこちょこと関連の本を読んでいます。今回はほとんど知識のない江戸時代の本です。例えば由井正雪の乱とか、忠臣蔵とか、寺子屋での教育が普及し、世界有数の教育大国であったとかそういう断片的な知識しかないので、一度読んでみたいとおもっていたところ、期待を裏切らない一冊でした。本作は、タイトルのとおり浮世絵を中心とした各種の絵や出版物から江戸の庶民の生活について説明する本であり、肝心の絵が小さい、白黒であるという点を除けばとても読みやすく、構成も飽きさせない優れた一冊だと思います。ちなみに監修の安村さんは美術館の館長を務められ、現在は美術品屋を経営している方のようです。
備忘もかねて面白かった点を書くと、江戸の町はざっくりいって50万人の武士を養うために50万人の町人が居る世界有数の大都市であったこと、現在と同様に生粋の江戸っ子は少なく、奉公や参勤交代といった形で地方から来た人が大半であったこと、すでに浄水が武蔵野のあたりから引かれており、下水は整備されていないもののし尿は農業にリサイクルされていたこと。火事が多く、地震や台風、火山など天災も多かったことから、宵越しの金は持たないといった「いき」の土台が生まれてきた。天ぷらやすしは庶民の街角のスナックであり、食べ物にもブーム(桜餅)があったり、大食いバトルまであったということ。他方、住まいは長屋が密集し、現代より町人はよっぽど狭いところでの生活をしていたこと、そういう長屋のなかで手工業を行ったり、勤めに出て行ったりしたこと。庶民は浮世絵を見たり、相撲を見たり、大山など近隣の自社に講単位で出かけて楽しんだこと。意外にもかかあ天下の家が多く、離婚や勘当も結構あったこと。寺子屋はとても工夫されており、テキストもかなりの種類があったこと。おしゃれは当時から重要視されており、バサラ、傾奇といった突飛な格好の人もかなりいたこと。
通読して、独自の文化をはぐくみ、質素、いきであることを旨としながら、祭りや花火といった熱さをもっていた江戸の町人にとても親近感を持ちました。なんだ、結局時代が変わってもやってることはあまり変わらない、という印象です。技術は進歩しているかもしれませんが、夏になれば人々は花火に群がり、お祭りに出かけ、冬にはお寺に初もうでにいって、相撲やコンサートを見に行きます。路上ですしは売っていませんが、ケバブをつまんだり、漫画を楽しんだり、日帰りで箱根に出かけたり。驚くほと人々の行動様式は変わっていません。江戸でも現代でもいろいろな楽しみを見つけながら、簡単ではない世の中を必死に生きた先達が居るということはとてもうれしく、励まされるものがあります。ぜひ武士の暮らしについても読んでみたいと思います。
このBlogの目的は、シンプルです。ただ、私が読んだ本を評していくこと、それだけです。ちなみにジャンルの限定はなく、ただ一つのルールは、私が最初から最後までリアルタイムに読んだ本、それを書評することだけです(従って、昔読んだ本や全て読まなかったものは対象外)。
2018年1月27日土曜日
2018年1月3日水曜日
第180回:「最高の休息」久賀谷 亮
レーティング:★★★★★☆☆
前回レビューしたマインドフルネス関係の類書ですが、米国で医師をしている精神科医の本です。入門編的になじみやすいエピソードを展開しつつ、専門知識を交えた解説を加えていくスタイルで、最近(といってももうしばらくそうですが)はやりの形をとっています。古本屋で買ったのですが、昨年さかんに新聞などで宣伝されていた一冊であり、中古でも1000円近くと値を保っているところをみると結構人気がある一冊のようです。
世の中のマインドフルネス本は、そのやり方や効能にフォーカスしているのに対して、本書は脳科学的なアプローチで疲労の正体が身体的というより脳からくるものであることを丹念に説き起こしています。そして慢性疲労症候群など幅広い疾病に脳の疲労というものが関連していること、そしてマインドフルネスのプラクティスによりどのような脳への変化が期待されるかが書かれています。実証的なデータを引用しながら、とても中立的に書かれていますので、これさえやれば健康になるとか、これさえやればみんなハッピーという軽率さがないところがよいところでしょう。
面白いのは競争が人を疲弊させるという下りです。アメリカにいる著者は競争を叩き込まれるアメリカ人の生き方に共感しつつも、深い憂慮を抱いていることが分かります。しかし競争的な社会や環境であっても、疲労の感じ方にはとても大きな個人差があるということであり、要はどういう考え方をするか、感じ方をするかという受け止め方が重要であることが説かれています。今年の目標の一つとして、いろいろな気付きをもって生きていくことを大事にしたいと思います。
さて、昨年は18冊と本ブログ開始(2011年)以来、最低の読破数となってしまいました。単純に最大の理由は仕事や育児に追われて時間がなかったことにつきますが、平日も帰りにスマホばかりみてしまって読書量が減ってしまった面もあります。本としては趣味寄りの軽い本が多かったために、今年はもう少し(今読んでいるものも含めて)古典的なものや超大作にも取り組んでみたいと思います。
前回レビューしたマインドフルネス関係の類書ですが、米国で医師をしている精神科医の本です。入門編的になじみやすいエピソードを展開しつつ、専門知識を交えた解説を加えていくスタイルで、最近(といってももうしばらくそうですが)はやりの形をとっています。古本屋で買ったのですが、昨年さかんに新聞などで宣伝されていた一冊であり、中古でも1000円近くと値を保っているところをみると結構人気がある一冊のようです。
世の中のマインドフルネス本は、そのやり方や効能にフォーカスしているのに対して、本書は脳科学的なアプローチで疲労の正体が身体的というより脳からくるものであることを丹念に説き起こしています。そして慢性疲労症候群など幅広い疾病に脳の疲労というものが関連していること、そしてマインドフルネスのプラクティスによりどのような脳への変化が期待されるかが書かれています。実証的なデータを引用しながら、とても中立的に書かれていますので、これさえやれば健康になるとか、これさえやればみんなハッピーという軽率さがないところがよいところでしょう。
面白いのは競争が人を疲弊させるという下りです。アメリカにいる著者は競争を叩き込まれるアメリカ人の生き方に共感しつつも、深い憂慮を抱いていることが分かります。しかし競争的な社会や環境であっても、疲労の感じ方にはとても大きな個人差があるということであり、要はどういう考え方をするか、感じ方をするかという受け止め方が重要であることが説かれています。今年の目標の一つとして、いろいろな気付きをもって生きていくことを大事にしたいと思います。
さて、昨年は18冊と本ブログ開始(2011年)以来、最低の読破数となってしまいました。単純に最大の理由は仕事や育児に追われて時間がなかったことにつきますが、平日も帰りにスマホばかりみてしまって読書量が減ってしまった面もあります。本としては趣味寄りの軽い本が多かったために、今年はもう少し(今読んでいるものも含めて)古典的なものや超大作にも取り組んでみたいと思います。
2017年12月17日日曜日
第179回:「グーグルのマインドフルネス革命」サンガ編集部
レーティング:★★★★★☆☆
前回のレビューからなんと2か月ほど空いてしまいました。おそらくこのブログを始めてから一番間隔があいてしまったような感じがします。一つには仕事がやたら忙しく、マルチタスクを強いられ、拘束時間が極めて長い環境になってしまっていることが原因で、当然心身ともにストレスを感じる状況にありました。そんな中で久々に手を伸ばした一冊がマインドフルネスに関するものであったのは、まったく偶然ではなく、自分のニーズがあったのだと思います。
マインドフルネスについては、いまさら解説不要なほど人口に膾炙しているトピックであり、本書も昨年あたりは本屋でとてもよく見かけました。表紙に斜めにGoogleと書いてある一冊です。内容は、同社でマインドフルネスに関するプログラムの中心的な人物として活動しているビル・ドウェイン氏へのインタビューに解説を加え、さらに簡単なプラクティスのためのCDが付いています(まだ聴いてません)。内容はとても平易であり、どうしてGoogleがマインドフルネスを大胆に導入したのか、また、同氏がなぜ瞑想というものをし始めたのか(仏教徒だそうです)などが書いています。本書は強く実践を意識していて、どうやって入り口に立って、実際にやるよう促すかに力点が置いてあり、その意味で深い内容ではありませんが、手っ取り早く読めて忙しい方にはお勧めです。
以前から禅寺での体験座禅でもやってみたいと願っていますが、まだ適っていません。近くのお寺でもやっているようなので、ぜひ仕事や育児に追われる日々の中で一度くらい行ってみたいところです。
前回のレビューからなんと2か月ほど空いてしまいました。おそらくこのブログを始めてから一番間隔があいてしまったような感じがします。一つには仕事がやたら忙しく、マルチタスクを強いられ、拘束時間が極めて長い環境になってしまっていることが原因で、当然心身ともにストレスを感じる状況にありました。そんな中で久々に手を伸ばした一冊がマインドフルネスに関するものであったのは、まったく偶然ではなく、自分のニーズがあったのだと思います。
マインドフルネスについては、いまさら解説不要なほど人口に膾炙しているトピックであり、本書も昨年あたりは本屋でとてもよく見かけました。表紙に斜めにGoogleと書いてある一冊です。内容は、同社でマインドフルネスに関するプログラムの中心的な人物として活動しているビル・ドウェイン氏へのインタビューに解説を加え、さらに簡単なプラクティスのためのCDが付いています(まだ聴いてません)。内容はとても平易であり、どうしてGoogleがマインドフルネスを大胆に導入したのか、また、同氏がなぜ瞑想というものをし始めたのか(仏教徒だそうです)などが書いています。本書は強く実践を意識していて、どうやって入り口に立って、実際にやるよう促すかに力点が置いてあり、その意味で深い内容ではありませんが、手っ取り早く読めて忙しい方にはお勧めです。
以前から禅寺での体験座禅でもやってみたいと願っていますが、まだ適っていません。近くのお寺でもやっているようなので、ぜひ仕事や育児に追われる日々の中で一度くらい行ってみたいところです。
2017年10月28日土曜日
第178回:「黒部の山賊」伊藤 正一
レーティング:★★★★★★★
先日、NHKのブラタモリで黒部ダムや立山をやっていましたが、黒部はいつか行ってみたい土地であり、興味津々で読みました。伊藤さんは大正12年、長野市生まれ。昭和21年に三俣小屋の権利を譲り受け、昭和24年から現在の三俣山荘に住みながら、近隣の山小屋を建設・運営し、どっぷりと黒部の山中に暮らしながら、猟師や営林署、登山客、動物、物の怪(?)との交友を深められました。その様子をとてもユーモラスに、愛情たっぷりに描いたのが本書であり、初版は昭和39年、非常に評価の高い伝説的な本で、今回の復本は平成26年になされたということです。ちなみに巻末には復本に際して高橋庄太郎さんが寄稿されています(なかなか味があります)。
内容ですが、山小屋整備のあたりの山賊たちとの出会い、奇妙な生活、埋蔵金に取りつかれた人々、バケモノ、遭難、動物、後日談という構成になっています。とにかくどのパートもとても面白く、思わずおいおいそれは盛りすぎでは、というストーリーが随所に出てきますが、あの黒部の山奥ではそういうこともあったのかなと思わせる筆致であり、さらに言えばあったかなかったかは別として非常におおらかで人間味が強い時代であり、地域であったんだなということを感じられる本です。山小屋、登山、大自然とったところに関心ある方には必読といえます。
また、表紙は畦地梅太郎さんの絵であり、とても素敵です。また、巻頭や途中に写真がふんだんに使われており、どれも貴重で目が釘付けになるようなものばかりです。さらに冒頭に書いた通り、高橋庄太郎さんの短文もぜひ読んでいただきたいところです。
先日、NHKのブラタモリで黒部ダムや立山をやっていましたが、黒部はいつか行ってみたい土地であり、興味津々で読みました。伊藤さんは大正12年、長野市生まれ。昭和21年に三俣小屋の権利を譲り受け、昭和24年から現在の三俣山荘に住みながら、近隣の山小屋を建設・運営し、どっぷりと黒部の山中に暮らしながら、猟師や営林署、登山客、動物、物の怪(?)との交友を深められました。その様子をとてもユーモラスに、愛情たっぷりに描いたのが本書であり、初版は昭和39年、非常に評価の高い伝説的な本で、今回の復本は平成26年になされたということです。ちなみに巻末には復本に際して高橋庄太郎さんが寄稿されています(なかなか味があります)。
内容ですが、山小屋整備のあたりの山賊たちとの出会い、奇妙な生活、埋蔵金に取りつかれた人々、バケモノ、遭難、動物、後日談という構成になっています。とにかくどのパートもとても面白く、思わずおいおいそれは盛りすぎでは、というストーリーが随所に出てきますが、あの黒部の山奥ではそういうこともあったのかなと思わせる筆致であり、さらに言えばあったかなかったかは別として非常におおらかで人間味が強い時代であり、地域であったんだなということを感じられる本です。山小屋、登山、大自然とったところに関心ある方には必読といえます。
また、表紙は畦地梅太郎さんの絵であり、とても素敵です。また、巻頭や途中に写真がふんだんに使われており、どれも貴重で目が釘付けになるようなものばかりです。さらに冒頭に書いた通り、高橋庄太郎さんの短文もぜひ読んでいただきたいところです。
2017年10月22日日曜日
第177回:「米中もし戦わば」ピーター・ナヴァロ
レーティング:★★★★★★★
トランプ政権における国家通商会議の委員長であり、学者でもある著者の一冊です。もともとは経済学者ということですが、今回の一作は経済、外交、地政学、軍事戦略など多くの領域にまたがる、冷静でありながら本質的な分析をわかりやすく提示しています。
まず、世界地図を中国からみることで、軍事や貿易戦略の観点から、どうやって一次列島線が中国によって設定されたかが描かれます。中国にとっては、海洋進出を実現し、シナ海を中心に軍事プレゼンスを高めて、海洋支配を固めていくことは、単に拡張的な思想に基づくだけでなく、国家存続の観点からも緊要性が高いことが明かされていきます。このあたりは、内外の豊富な中国研究を活かしながら、とても明快で事実に基づいており、その見事さを感じます。色々な見方を比較検討して妥当性を評価しているあたりも、説得力を増す要素となっています。
あと知らなかった点が多々あるのですが、とりわけ、アメリカが先端技術や兵器の開発をしつつ、核兵器を含めて軍縮を進める中で、中国はハッキングをフル活用しながら技術のキャッチアップを進め、対艦ミサイルや宇宙兵器においては米国を上回るレベルに来ているということです。物量も味方につけ、ひと昔のように旧式兵器ばかりということは事実ではなくなっているということです。
米中関係の今後についてはかなり悲観的なことが書かれていますが、なんとか両国が折り合いをつけて平和に共存してほしいところです。もちろんその最前線にいる日本にとっても重大な影響があるので、いろいろなことを考えさせられる一冊でした。なんとか次の世代が英知を発揮して、平和を追求してほしいと思います。
トランプ政権における国家通商会議の委員長であり、学者でもある著者の一冊です。もともとは経済学者ということですが、今回の一作は経済、外交、地政学、軍事戦略など多くの領域にまたがる、冷静でありながら本質的な分析をわかりやすく提示しています。
まず、世界地図を中国からみることで、軍事や貿易戦略の観点から、どうやって一次列島線が中国によって設定されたかが描かれます。中国にとっては、海洋進出を実現し、シナ海を中心に軍事プレゼンスを高めて、海洋支配を固めていくことは、単に拡張的な思想に基づくだけでなく、国家存続の観点からも緊要性が高いことが明かされていきます。このあたりは、内外の豊富な中国研究を活かしながら、とても明快で事実に基づいており、その見事さを感じます。色々な見方を比較検討して妥当性を評価しているあたりも、説得力を増す要素となっています。
あと知らなかった点が多々あるのですが、とりわけ、アメリカが先端技術や兵器の開発をしつつ、核兵器を含めて軍縮を進める中で、中国はハッキングをフル活用しながら技術のキャッチアップを進め、対艦ミサイルや宇宙兵器においては米国を上回るレベルに来ているということです。物量も味方につけ、ひと昔のように旧式兵器ばかりということは事実ではなくなっているということです。
米中関係の今後についてはかなり悲観的なことが書かれていますが、なんとか両国が折り合いをつけて平和に共存してほしいところです。もちろんその最前線にいる日本にとっても重大な影響があるので、いろいろなことを考えさせられる一冊でした。なんとか次の世代が英知を発揮して、平和を追求してほしいと思います。
2017年10月1日日曜日
第176回:「仏の発見」五木 寛之・梅原 猛
レーティング:★★★☆☆☆☆
わざわざ解説がいらないと思われるお二人の対談です。ホストは五木さんという構成であり、発見シリーズというものの一冊だそうで、ほかには「気の発見」、「息の発見」などがあるそうです(いずれも読んでません)。五木さんは親鸞や蓮如などについての小説があり、仏教に造詣が深いということ(読んでいません)で、哲学者であり仏教の大家の梅原さんと対談となった、というわけです。
しかしながら、正直言ってとても物足りない一冊です。五木さんの話を期待する方も梅原さんの深い話を期待する方も、この内容ではやや失望するのではないでしょうか。二人が自分たちの著作を紹介しつつ、親鸞、蓮如、法然などについての考え方を意見交換していきますが、正直言ってものすごく新しい内容もないですし、対談ならではの深まりもありません。お二人の知識が仏教について同じように深く、またベクトルが近いからか、対談ならではの意見の違いから浮き彫りにされる論点などもありません。
五木さんのエッセイは何冊か読んでいますが、代表作である「青春の門」や親鸞、蓮如を扱った作品は読んでいなかったので、これはこれで面白そうですし、読んでみようと思います。
わざわざ解説がいらないと思われるお二人の対談です。ホストは五木さんという構成であり、発見シリーズというものの一冊だそうで、ほかには「気の発見」、「息の発見」などがあるそうです(いずれも読んでません)。五木さんは親鸞や蓮如などについての小説があり、仏教に造詣が深いということ(読んでいません)で、哲学者であり仏教の大家の梅原さんと対談となった、というわけです。
しかしながら、正直言ってとても物足りない一冊です。五木さんの話を期待する方も梅原さんの深い話を期待する方も、この内容ではやや失望するのではないでしょうか。二人が自分たちの著作を紹介しつつ、親鸞、蓮如、法然などについての考え方を意見交換していきますが、正直言ってものすごく新しい内容もないですし、対談ならではの深まりもありません。お二人の知識が仏教について同じように深く、またベクトルが近いからか、対談ならではの意見の違いから浮き彫りにされる論点などもありません。
五木さんのエッセイは何冊か読んでいますが、代表作である「青春の門」や親鸞、蓮如を扱った作品は読んでいなかったので、これはこれで面白そうですし、読んでみようと思います。
2017年9月16日土曜日
第175回:「野村證券第2事業法人部」横尾 宣政
レーティング:★★★★★★☆
かなり面白い一冊でした。著者のお名前にピンと来た方もいらっしゃるかと思いますが、そうです、野村證券出身で退職してからずいぶん経って、オリンパスの粉飾に関与したということで逮捕されてしまった方です。大きく分けて2部構成になっており、第1~7章が野村證券在籍時代、第8~11章がポスト野村時代です。
前半は青春活劇のようでとても臨場感や高揚感があって面白い一冊です。金沢支店を皮切りに、フィーを稼ぐことに邁進し、リテールから始めて、花形の事業法人部に乗り込みます。そこでも末席であったにもかかわらず、人の何倍も努力し、執念と度胸をもって顧客を開拓していきます。ここらへんは多少盛っている部分はあろうかと思いますが、すこぶる詳細かつ具体的な内容で、著者の証券マンとしての凄さをまざまざと感じさせます。しかし、80年代、90年代の証券会社というのは評判が悪かったですが、本当に良くも悪くもなんでもありだったんだということがよくわかりません。バブル崩壊後、証券会社や証券業界は大改革につぐ大改革を行いましたが、いまの株式や資本市場がいかに正常化されてきたのかがよくわかります。そりゃ株をやる人が日本で少ないよな、と実感します。
後半は野村証券を惜しまれながら退社し、ベンチャー投資や投資先の経営に当たる話です。しかし野村の看板は大きく、資本が限られている中で事業はなかなかうまくいかないようです。そこで昔のつてもあり、オリンパスとの接点が出てきます。著者は一貫してオリンパスの関係の関与を否定しており、一定の説得力は感じますが、前半で見せたリスク感度の高さ、真っ当かつ執拗な思考力がオリンパス関連ではすっぽり欠落している部分が、やや気にかかります。当然こういうものだとおもっていた、自分は細かいところにはタッチせず、部下に任せていた、自分が粉飾スキームを考えるのであればもっとうまくやった、など本当にそうなんだろうかという部分がいくつかあります。裁判はまだ続いているので、司法が結論を出す話ではありますが。
前半の生き生きした感じと、後半の苦難が対照的であり、人生論として読んでもとても味わい深い一冊です。証券会社や業界に関心がある方にはお勧めです。
かなり面白い一冊でした。著者のお名前にピンと来た方もいらっしゃるかと思いますが、そうです、野村證券出身で退職してからずいぶん経って、オリンパスの粉飾に関与したということで逮捕されてしまった方です。大きく分けて2部構成になっており、第1~7章が野村證券在籍時代、第8~11章がポスト野村時代です。
前半は青春活劇のようでとても臨場感や高揚感があって面白い一冊です。金沢支店を皮切りに、フィーを稼ぐことに邁進し、リテールから始めて、花形の事業法人部に乗り込みます。そこでも末席であったにもかかわらず、人の何倍も努力し、執念と度胸をもって顧客を開拓していきます。ここらへんは多少盛っている部分はあろうかと思いますが、すこぶる詳細かつ具体的な内容で、著者の証券マンとしての凄さをまざまざと感じさせます。しかし、80年代、90年代の証券会社というのは評判が悪かったですが、本当に良くも悪くもなんでもありだったんだということがよくわかりません。バブル崩壊後、証券会社や証券業界は大改革につぐ大改革を行いましたが、いまの株式や資本市場がいかに正常化されてきたのかがよくわかります。そりゃ株をやる人が日本で少ないよな、と実感します。
後半は野村証券を惜しまれながら退社し、ベンチャー投資や投資先の経営に当たる話です。しかし野村の看板は大きく、資本が限られている中で事業はなかなかうまくいかないようです。そこで昔のつてもあり、オリンパスとの接点が出てきます。著者は一貫してオリンパスの関係の関与を否定しており、一定の説得力は感じますが、前半で見せたリスク感度の高さ、真っ当かつ執拗な思考力がオリンパス関連ではすっぽり欠落している部分が、やや気にかかります。当然こういうものだとおもっていた、自分は細かいところにはタッチせず、部下に任せていた、自分が粉飾スキームを考えるのであればもっとうまくやった、など本当にそうなんだろうかという部分がいくつかあります。裁判はまだ続いているので、司法が結論を出す話ではありますが。
前半の生き生きした感じと、後半の苦難が対照的であり、人生論として読んでもとても味わい深い一冊です。証券会社や業界に関心がある方にはお勧めです。
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