レーティング:★★★☆☆☆☆
村上春樹氏翻訳の文庫新刊が出るということを聞き、ファン故の愚かさで発売直後に買ってしまいました。『ライ麦畑でつかまえて』はすごく好きというレベルではありませんが、それなりに好きだったのですが、本作品はまったく良さが分からず閉口してしまいました。おそらく作者、翻訳者をブラインドにして読み始めたら、半分読まずにギブしてしまっていたと思います。
村上氏は本書を若いころ(といっても10代だそうですが)に読んで良さがわからなかったけど、近年再読してその良さに惹かれたそうです。私は既に10代とはほどとおいところに来ていますが、いつか再読したらその良さが分かるようになるのでしょうか。手短になぜ閉口したかを書くと、まず文章がやたらに装飾的でまわりくどく、文意がつかみにくい。主題がわからず、かといってディティールや雰囲気にも没入することができない、というものです。何度か読むのをやめようかと思いましたが、単純にもったいない、また後半良くなるのではないかという淡い期待で読み進めました。
近年読書の大漁状態が続いていたので、小休止的な意味でこういう期待外れに終わるものがあってよかったのかもしれません(とせめて前向きに考えてみます。
このBlogの目的は、シンプルです。ただ、私が読んだ本を評していくこと、それだけです。ちなみにジャンルの限定はなく、ただ一つのルールは、私が最初から最後までリアルタイムに読んだ本、それを書評することだけです(従って、昔読んだ本や全て読まなかったものは対象外)。
2014年3月23日日曜日
2014年3月16日日曜日
第89回:「戦略プロフェッショナル(増補改訂版)」三枝 匡
レーティング:★★★★★★★
第81、82回で三枝さん三部作のうち残りの2冊をレビューしています。いずれも素晴らしいものですが、残る1作の本作も期待を裏切らないものでした。今回ご紹介するバージョンは、すでに文庫化(2002年)されたオリジナルの増補版であり、著者へのインタビューや各種の解説が追記された一冊です。
3部作すべて同様の構成であり、実際にあったビジネスストーリーをほぼそのまま使いながら、解説を挟んで経営とは、戦略とは、その中でのリーダーシップとはといった話が展開されます。どれも三枝さんの実業経験を踏まえて書かれており、今回も納得度が極めて高い上にプロローグ、エピローグおよびインタビューで著者自身の体験を余すことなく書いており、大げさかもしれませんが感動すらする内容です。また、ネタバレになるので控えますが、本書では実際のエピソードの裏側が明かされ、三枝氏の来歴も本人の口からかなり詳細に語られます。氏も語られているとおり、増補版を出したのは次世代育成に力を入れている三枝さんにとって非常に意味のある仕事であったと思われ、その意気に感じるものがあります。
記号的に書くとよくいるビジネスエリートかという感じになってしまいますが、三枝さんは三井石油化学に入社、その後、BCG東京オフィスの日本人初採用、同社ボストンオフィス勤務、スタンフォードMBA、米国企業に就職し、同社と某財閥系化学会社の合弁会社を経営(30前半で代表取締役)、製薬企業系の不振企業の再建、ベンチャーキャピタルの運営、個人事務所開設からコンサルティングへの復帰、東証一部上場企業の社長(現在に至る)となっています。ご本人も書かれていますが、この一つ一つにかなり壮絶なエピソードがあり、どれも密度が濃く、特に留学のくだりなどそのまま小説になりそうな話です。
タイトルからもそうですが、面白いのは経営のプロはどうやって育てられるのかについて、かなり公式化して要件を明示しているところです。豊富な経験と年数の積み上げによりここまではっきりと示せるのであり、相当の自信をもたれていることが伺えます。三枝さんの凄みは理論を理解し、実践しつつ、さらに高いレベルで結果を出し続けていることだとおもいますが、その説得力たるや経営学者の頭でっかちなものではなく、またたたき上げの根性論だけに偏る経営者のものとも大きく離れています。面白いですし、励まされる一冊です。この分野に関心のある人に素直にお勧めです。
第81、82回で三枝さん三部作のうち残りの2冊をレビューしています。いずれも素晴らしいものですが、残る1作の本作も期待を裏切らないものでした。今回ご紹介するバージョンは、すでに文庫化(2002年)されたオリジナルの増補版であり、著者へのインタビューや各種の解説が追記された一冊です。
3部作すべて同様の構成であり、実際にあったビジネスストーリーをほぼそのまま使いながら、解説を挟んで経営とは、戦略とは、その中でのリーダーシップとはといった話が展開されます。どれも三枝さんの実業経験を踏まえて書かれており、今回も納得度が極めて高い上にプロローグ、エピローグおよびインタビューで著者自身の体験を余すことなく書いており、大げさかもしれませんが感動すらする内容です。また、ネタバレになるので控えますが、本書では実際のエピソードの裏側が明かされ、三枝氏の来歴も本人の口からかなり詳細に語られます。氏も語られているとおり、増補版を出したのは次世代育成に力を入れている三枝さんにとって非常に意味のある仕事であったと思われ、その意気に感じるものがあります。
記号的に書くとよくいるビジネスエリートかという感じになってしまいますが、三枝さんは三井石油化学に入社、その後、BCG東京オフィスの日本人初採用、同社ボストンオフィス勤務、スタンフォードMBA、米国企業に就職し、同社と某財閥系化学会社の合弁会社を経営(30前半で代表取締役)、製薬企業系の不振企業の再建、ベンチャーキャピタルの運営、個人事務所開設からコンサルティングへの復帰、東証一部上場企業の社長(現在に至る)となっています。ご本人も書かれていますが、この一つ一つにかなり壮絶なエピソードがあり、どれも密度が濃く、特に留学のくだりなどそのまま小説になりそうな話です。
タイトルからもそうですが、面白いのは経営のプロはどうやって育てられるのかについて、かなり公式化して要件を明示しているところです。豊富な経験と年数の積み上げによりここまではっきりと示せるのであり、相当の自信をもたれていることが伺えます。三枝さんの凄みは理論を理解し、実践しつつ、さらに高いレベルで結果を出し続けていることだとおもいますが、その説得力たるや経営学者の頭でっかちなものではなく、またたたき上げの根性論だけに偏る経営者のものとも大きく離れています。面白いですし、励まされる一冊です。この分野に関心のある人に素直にお勧めです。
2014年2月16日日曜日
第88回:「反転」田中 森一
レーティング:★★★★★★★
検事を辞めて、検事と相対する弁護士になる人をヤメ検というそうです。その動機は様々なようですが、検事の経験や人脈があるため、弁護に強いことから人によってはかなりの活躍をするそうです。同時に、一部では強引な弁護手法や検事との距離感などについて批判も根強くあるとのこと。そんなヤメ検として非常に有名になった田中氏のノンフィクション、出色の出来であり、さすが幻冬舎という一冊です。素晴らしい内容と情感をもった一冊だと思います。
簡単に中身をご紹介すると、佐賀の海近くの貧しい村に生まれた氏は、父から勉強など不要、進学も無用と言われていましたが、苦学して岡山大学に入学します(ここまでのいきさつも相当面白いです)。当時は村の出身者が大学まで進むなどというのは本当にレアで、家族はもとより村の期待を背負ってのことでした。その後、法曹を目指し、猛勉強の末に合格、裁判官を目指しますが、左派全盛の時代背景もあり、ひょんなことから裁判官になることが困難になり、検事の道に進みます。
検事になってからは、佐賀、大阪等で活躍、その後に東京地検特捜部に着任します。特捜部の前は割と単純な軽犯罪から地方自治体の首長を巻き込む贈収賄まで意欲的に手掛け、検事としての力量を高め、適性について確信を深めます。他方、具体的に記述されていますが、検察の上層部からの横やりや圧力が入ったことも一度ならずあり、一部は捜査や起訴を断念したことについても書かれています。本書で認識させられましたが、検察は法務省の傘下にあり、政府の法の番人であることから、政治や政府の意向を強く受けるようです。政府の一組織としてどういう事件を立件するか、捜査するかについてはかなり取捨選択や自主規制があるようです。著者はそうした検察の制約に違和感を感じ、またプライベートでいろいろあったこともあり、検事をやめ、弁護士に転身します。ここらへんの検察組織の特殊性については、内部の第一線に居た人だけに非常にリアルですし、特捜部の捜査を受けて著作を書いた人々の見方があながち滑稽ではないことも伺えます。
さて、ここからが後半ですが、バブル華やかな時代には数多くのバブル紳士がいましたが、大阪、東京を舞台にした数々の経済犯罪や闇の組織とのつながりをもっていった著者は、金が乱れ飛ぶ中で必死に仕事をし(このあたりは相当批判はあると思います)、自分でも書かれているやや悪趣味な金の使い方もしながら、しかし自身の正義と思うところで弁護活動を行っていきます。この間もヤメ検として検察と対峙しつつも、いろいろと人脈を保っており、圧巻です。著者自身の人生も非常に読んでいて面白いのですが、バブル紳士たちの派手すぎる生き方、強引なビジネス手法、法律との戦い方などが生き生きとしており、ポストバブルの現在からは到底理解できないような興味深い内容となっています。
その後、著者自身が特捜部との全面対決をしていき・・・。という話ですが、本当に面白いのでノンフィクション好きの方にはぜひというレベルのお勧め本です。単行本で400ページくらいありますが、あっというまに読めると思います。こういう確かな時代の記録を、自分の人生をさらけ出して書いた著者に感謝したいと思います。
検事を辞めて、検事と相対する弁護士になる人をヤメ検というそうです。その動機は様々なようですが、検事の経験や人脈があるため、弁護に強いことから人によってはかなりの活躍をするそうです。同時に、一部では強引な弁護手法や検事との距離感などについて批判も根強くあるとのこと。そんなヤメ検として非常に有名になった田中氏のノンフィクション、出色の出来であり、さすが幻冬舎という一冊です。素晴らしい内容と情感をもった一冊だと思います。
簡単に中身をご紹介すると、佐賀の海近くの貧しい村に生まれた氏は、父から勉強など不要、進学も無用と言われていましたが、苦学して岡山大学に入学します(ここまでのいきさつも相当面白いです)。当時は村の出身者が大学まで進むなどというのは本当にレアで、家族はもとより村の期待を背負ってのことでした。その後、法曹を目指し、猛勉強の末に合格、裁判官を目指しますが、左派全盛の時代背景もあり、ひょんなことから裁判官になることが困難になり、検事の道に進みます。
検事になってからは、佐賀、大阪等で活躍、その後に東京地検特捜部に着任します。特捜部の前は割と単純な軽犯罪から地方自治体の首長を巻き込む贈収賄まで意欲的に手掛け、検事としての力量を高め、適性について確信を深めます。他方、具体的に記述されていますが、検察の上層部からの横やりや圧力が入ったことも一度ならずあり、一部は捜査や起訴を断念したことについても書かれています。本書で認識させられましたが、検察は法務省の傘下にあり、政府の法の番人であることから、政治や政府の意向を強く受けるようです。政府の一組織としてどういう事件を立件するか、捜査するかについてはかなり取捨選択や自主規制があるようです。著者はそうした検察の制約に違和感を感じ、またプライベートでいろいろあったこともあり、検事をやめ、弁護士に転身します。ここらへんの検察組織の特殊性については、内部の第一線に居た人だけに非常にリアルですし、特捜部の捜査を受けて著作を書いた人々の見方があながち滑稽ではないことも伺えます。
さて、ここからが後半ですが、バブル華やかな時代には数多くのバブル紳士がいましたが、大阪、東京を舞台にした数々の経済犯罪や闇の組織とのつながりをもっていった著者は、金が乱れ飛ぶ中で必死に仕事をし(このあたりは相当批判はあると思います)、自分でも書かれているやや悪趣味な金の使い方もしながら、しかし自身の正義と思うところで弁護活動を行っていきます。この間もヤメ検として検察と対峙しつつも、いろいろと人脈を保っており、圧巻です。著者自身の人生も非常に読んでいて面白いのですが、バブル紳士たちの派手すぎる生き方、強引なビジネス手法、法律との戦い方などが生き生きとしており、ポストバブルの現在からは到底理解できないような興味深い内容となっています。
その後、著者自身が特捜部との全面対決をしていき・・・。という話ですが、本当に面白いのでノンフィクション好きの方にはぜひというレベルのお勧め本です。単行本で400ページくらいありますが、あっというまに読めると思います。こういう確かな時代の記録を、自分の人生をさらけ出して書いた著者に感謝したいと思います。
2014年2月9日日曜日
第87回:「われ悩む、ゆえにわれあり」土屋 賢二
レーティング:★★★★★☆☆
土屋さんのエッセイを紹介されたのは、もう10年くらいまえでしょうか。現在の(初婚ですが)妻におもしろいよと当時紹介され、2冊ほど読んだ記憶があります。このたび1週間ほど時間がとれそうだったので、久々に土屋さんの本を読みたいと思い借りてきました。10年ほど前に読んだ時はお茶の水大学教授の肩書だった気がしますが、本書では同大名誉教授になってました。1944年生まれということなので、もう実質引退されているということでしょうか。ちなみに哲学の教授です。
さて、土屋さんの本業の著作は読んだことがないのですが、本書を含む一般向けに書かれているのは軽妙なエッセイが多く、どの本も面白くお勧めです。視点が徹底的に自虐的で、自虐ネタの書きものでは日本でも有数の方ではないかと勝手に思っています。哲学の教授というと難しそうとか高尚そうというイメージがありますが、正直言って息抜きに書いているのか、その真逆でゆるいネタばかりです。カントもヘーゲルも出てきません。
前置きが長くなりましたが本書は2012年に刊行されたもので、元々は雑誌PHPに連載された氏の人生相談から取っているそうです。相談ネタもユニークなものが多く、例えば「自然の美しさに無関心な子ども」について、とか「アリとキリギリス、どちらがトクか」などしょーもない(が当事者にとっては大事な)ものが並びます。しかし、こうして客観的に見てみると下らないなあと思える悩みも、実は自分に生じるとやっかいだったりして、私たちの抱える悩みもはたから見たらその程度なのかもしれません。土屋さんは、いつもどおり力の抜けた、真面目半分、不真面目半分な回答を繰り広げます。どれもかなり笑えるものばかりで公共の乗り物で読むのが困難なのですが、その自由すぎる発想を読んでいくと、単に笑えるだけでなく様々な角度からものをみることで、正当な悩みの評価や新たな抜け出し方を見つけられると言っている気がします(あえて教訓を抽出しようとすれば)。
面白いのはいくつもありますが、備忘まで挙げると「新幹線の肘掛け問題」、「夢がかなったらほんとうに幸せか」、「夢を捨てさせるには」、「仲良しの度合い」などでしょうか。旅に持っていったり、なんとなくふわっと笑いたい時などにお勧めの一冊です。人気のある土屋さんなので、引き続き著作はどんどん出るものと思われます。
土屋さんのエッセイを紹介されたのは、もう10年くらいまえでしょうか。現在の(初婚ですが)妻におもしろいよと当時紹介され、2冊ほど読んだ記憶があります。このたび1週間ほど時間がとれそうだったので、久々に土屋さんの本を読みたいと思い借りてきました。10年ほど前に読んだ時はお茶の水大学教授の肩書だった気がしますが、本書では同大名誉教授になってました。1944年生まれということなので、もう実質引退されているということでしょうか。ちなみに哲学の教授です。
さて、土屋さんの本業の著作は読んだことがないのですが、本書を含む一般向けに書かれているのは軽妙なエッセイが多く、どの本も面白くお勧めです。視点が徹底的に自虐的で、自虐ネタの書きものでは日本でも有数の方ではないかと勝手に思っています。哲学の教授というと難しそうとか高尚そうというイメージがありますが、正直言って息抜きに書いているのか、その真逆でゆるいネタばかりです。カントもヘーゲルも出てきません。
前置きが長くなりましたが本書は2012年に刊行されたもので、元々は雑誌PHPに連載された氏の人生相談から取っているそうです。相談ネタもユニークなものが多く、例えば「自然の美しさに無関心な子ども」について、とか「アリとキリギリス、どちらがトクか」などしょーもない(が当事者にとっては大事な)ものが並びます。しかし、こうして客観的に見てみると下らないなあと思える悩みも、実は自分に生じるとやっかいだったりして、私たちの抱える悩みもはたから見たらその程度なのかもしれません。土屋さんは、いつもどおり力の抜けた、真面目半分、不真面目半分な回答を繰り広げます。どれもかなり笑えるものばかりで公共の乗り物で読むのが困難なのですが、その自由すぎる発想を読んでいくと、単に笑えるだけでなく様々な角度からものをみることで、正当な悩みの評価や新たな抜け出し方を見つけられると言っている気がします(あえて教訓を抽出しようとすれば)。
面白いのはいくつもありますが、備忘まで挙げると「新幹線の肘掛け問題」、「夢がかなったらほんとうに幸せか」、「夢を捨てさせるには」、「仲良しの度合い」などでしょうか。旅に持っていったり、なんとなくふわっと笑いたい時などにお勧めの一冊です。人気のある土屋さんなので、引き続き著作はどんどん出るものと思われます。
2014年2月6日木曜日
第86回:「ザ・プロフェッショナル」大前 研一
レーティング:★★☆☆☆☆☆
言わずと知れた大前さんが2005年に出版された一冊です。いつか時間ができたら読もうかなぁと思っているうちにもう9年も経ってしまったことが驚きですが、遅ればせながら図書館で借りてきました。既にレビューしている大前さんの代表作「企業参謀」が素晴らしいものであったのに、本書は読んでみて非常に残念でした。人の時間は限りがあるので、途中で読むのをやめようかと思いましたが、後半良くなるかもしれないと読み続け、そして不可解な印象と混乱が残ってしまいました。
勝手に低レーティングを付けるのも失礼なので、その理由を列挙してみます。
①内容がとびとびで「ザ・プロフェッショナル」という21世紀のビジネスパーソンのあるべき姿から拡散しており、なにが言いたいのか殆ど分からない。
②コンサルタントスタートだからか、どこまでいってもデルやGE、マイクロソフトといった如何にもビジネススクールが好きな企業の例が並び、その分析がどれも巷の経済雑誌に書かれているレベルで、独自のものが殆どない。
③(①につながる点ですが)サブタイトルが「21世紀をいかに生き抜くか」というものですが、21世紀の企業競争の要諦について、20世紀的なロジックのアプローチが通じるといってみたり、通じないといってみたりぶれており、結局20世紀と21世紀の特徴、違いがごちゃごちゃになっている。
そこらへんの経済評論家やゼミの課題作文ではなく、大前さんなのでこのようなタイトルの大上段の本をだされる以上はもっと整理されたものになっているのかと期待してたのですが、かなり混乱した内容になっている気がします。やはり経営者の一代記のようなリアリティのあるもの、学者でも突っ込んで事例を調べているものの方が面白く、また為になるなあということを再確認する事例でした。残念です。
言わずと知れた大前さんが2005年に出版された一冊です。いつか時間ができたら読もうかなぁと思っているうちにもう9年も経ってしまったことが驚きですが、遅ればせながら図書館で借りてきました。既にレビューしている大前さんの代表作「企業参謀」が素晴らしいものであったのに、本書は読んでみて非常に残念でした。人の時間は限りがあるので、途中で読むのをやめようかと思いましたが、後半良くなるかもしれないと読み続け、そして不可解な印象と混乱が残ってしまいました。
勝手に低レーティングを付けるのも失礼なので、その理由を列挙してみます。
①内容がとびとびで「ザ・プロフェッショナル」という21世紀のビジネスパーソンのあるべき姿から拡散しており、なにが言いたいのか殆ど分からない。
②コンサルタントスタートだからか、どこまでいってもデルやGE、マイクロソフトといった如何にもビジネススクールが好きな企業の例が並び、その分析がどれも巷の経済雑誌に書かれているレベルで、独自のものが殆どない。
③(①につながる点ですが)サブタイトルが「21世紀をいかに生き抜くか」というものですが、21世紀の企業競争の要諦について、20世紀的なロジックのアプローチが通じるといってみたり、通じないといってみたりぶれており、結局20世紀と21世紀の特徴、違いがごちゃごちゃになっている。
そこらへんの経済評論家やゼミの課題作文ではなく、大前さんなのでこのようなタイトルの大上段の本をだされる以上はもっと整理されたものになっているのかと期待してたのですが、かなり混乱した内容になっている気がします。やはり経営者の一代記のようなリアリティのあるもの、学者でも突っ込んで事例を調べているものの方が面白く、また為になるなあということを再確認する事例でした。残念です。
2014年1月26日日曜日
第85回:「バイアウト」幸田 真音
レーティング:★★★★☆☆☆
新幹線や飛行機のなかで、暇つぶしに読む感じで楽しむのに最適な一冊だと思います。決してネガティブな意味ではなく、長さは丁度良く、文章は読みやすく、複雑すぎないので適度に楽しめます。正直にいってあまり期待せずに読み始め、前半だれて読み続けるのをやめようかと思いましたが、後半の意外な展開におおっと読み続けました。良い意味で期待を裏切られた感じです。
さて、内容てすが、現実世界の人をモチーフにして、架空の音楽エンタメ会社を巡るTOB合戦を描いたものです。経済小説にありがちですが、その過程で主人公である女性証券ウーマンの生い立ちと成長が語られます。読めばすぐにわかりますが、一世を風靡した村上ファンド、筋にはあまり関係しませんがホリエモンなどが出てきます。主人公の所属する会社はリーマンブラザーズでしょうか。詳細を書いてしまうとすぐネタバレになりそうですが、時代背景としてはリーマンショック前のやや上向いた経済状況の中、資本主義を標榜するファンドが大きな資産含み益を持つ会社をターゲットに買収を計画するところからスト―リーから始まります。
展開はやや陳腐であり、現実に起きたこと、例えばTBSの買収騒動などの方が部外者としてはずっとエキサイティングだったように思えるのが少し残念です。また、著者の人間描写がやや単線的で感情移入しづらく、更に主人公以外の人物の深みに欠けるところが目立ってしまいます。経済小説でありしかたがない面はあるのですが、経済事象だけ読みたければノンフィクションを読めば良いわけで、そこはかなり残念でした。なお、本書は語りつくされた感のある疑問「会社はだれのものか」を問うものですが、この問いは立場によって見方によって色々な答えがあるので、あまり突き詰めて考えても仕方がないように思えます。
新幹線や飛行機のなかで、暇つぶしに読む感じで楽しむのに最適な一冊だと思います。決してネガティブな意味ではなく、長さは丁度良く、文章は読みやすく、複雑すぎないので適度に楽しめます。正直にいってあまり期待せずに読み始め、前半だれて読み続けるのをやめようかと思いましたが、後半の意外な展開におおっと読み続けました。良い意味で期待を裏切られた感じです。
さて、内容てすが、現実世界の人をモチーフにして、架空の音楽エンタメ会社を巡るTOB合戦を描いたものです。経済小説にありがちですが、その過程で主人公である女性証券ウーマンの生い立ちと成長が語られます。読めばすぐにわかりますが、一世を風靡した村上ファンド、筋にはあまり関係しませんがホリエモンなどが出てきます。主人公の所属する会社はリーマンブラザーズでしょうか。詳細を書いてしまうとすぐネタバレになりそうですが、時代背景としてはリーマンショック前のやや上向いた経済状況の中、資本主義を標榜するファンドが大きな資産含み益を持つ会社をターゲットに買収を計画するところからスト―リーから始まります。
展開はやや陳腐であり、現実に起きたこと、例えばTBSの買収騒動などの方が部外者としてはずっとエキサイティングだったように思えるのが少し残念です。また、著者の人間描写がやや単線的で感情移入しづらく、更に主人公以外の人物の深みに欠けるところが目立ってしまいます。経済小説でありしかたがない面はあるのですが、経済事象だけ読みたければノンフィクションを読めば良いわけで、そこはかなり残念でした。なお、本書は語りつくされた感のある疑問「会社はだれのものか」を問うものですが、この問いは立場によって見方によって色々な答えがあるので、あまり突き詰めて考えても仕方がないように思えます。
2014年1月19日日曜日
第84回:「35歳からのリアル」人生戦略会議
レーティング:★★★★☆☆☆
ハウツーものともちょっと違いますが、2000年代に入ってから書店で良く見るようになった類の一冊です。類書は28歳やら40代やら色々とありますが、一番年齢に近いものを図書館から借りてきました。以前は、こういう本って世代を十把一絡げにして語り、凄い恥ずかしいよな、意味ないよなと思っていたのですが(今も少し思っています)、読まず嫌いも良くないだろうということと、同世代は典型的にどういうイシューを抱えているのかを知るのは迷いの少なくない年代としてよいかなと思って借りた次第です。
前置きが長くなりましたが、本書は「仕事」「家庭」「お金」「活力」「選択」というカテゴリーにそって豊富な客観データを用いて説明を行っていきます。ちなみに読者を男性と明確に規定した内容ですので、男目線、夫目線が露骨に前面にでており、間違って女性が読むとかなり不快かもしれません。こういう本は全体を通して評価する作品ではないので、自分として気になった点、備忘のため記録しておきたい点に絞って書いてみたいと思います。
まず「仕事」です。全産業的にですが、1997~2007年にかけて30~34歳男性の所得は100~300万円減少している(恐るべき数字です)。1997年に最も多いレンジは500~699万円だったのが、2007年には300~399万円に落ちています。雇用体系ごとの分布のシフトがもっとも効いていると思いますが、そういう厳しい時代に生きているということは認識しとかないといけなさそうです。また、35~49歳は週60時間以上働く割合が最も大きい年代だそうです。60時間というのはやってみると割と普通ですが、まあ長いことは確かです。その上で、選択しとして大きく4つのモデルが提示されます、すなわち①専門職として自分の仕事を追究する、②ゼネラリストとしてマネジメントの道を進む、③出世しなくてよいので定年まで勤め上げる、④転職を考える/独立開業を考える。いずれの選択を行う上でも、1.自分は何が得意か、2.自分が本当にやりたいことはなんなのか、3.何をすることに意味や価値を感じるのか、を良く考えるべきということで、新卒当時とは全く違ったリアルな検討ができるようになっているはずだ、とのことです。
「家庭」では主に結婚と子供/子育てについて、「生活」では家、食事、健康をどうするかについて詳細に記載があります。既に幾つかのライフイベントを経験しているので、それほど驚きのある内容はありませんが、子育てにかんする費用については具体的な数字が多くてよかったです。あくまでモデルケースですが、22歳までの養育費は1640万円、私立中学3年間で380万円(公立141万円)、私立高校313万円(公立156万円)。あと日米の幸福度を比べると、アメリカでは年と取るほどに幸福度があがるのに対して、日本では逆に下がり続けています(平成20年度)。比較的福祉が充実している、かつ勝ち逃げ世代が多いと思われる今のシニアにそういう傾向があるのはなんとも不思議です。アメリカは良く分かりませんが、なぜこうも逆の挙動になるのでしょうか。
最後の「活力」「選択」では、もう35だと思うか、それとも今の知識・経験や人脈などを生かして10年後、20年後を(苦しくとも)見据えるかで大きな差が出ること、保守的でありつつも今やりたいことや今しかできないことをしっかり追求することの意味について書かれます。それを実現するために、楽観的であること、体を鍛えること、まずやってみること、「弱い紐帯」を活用すること、などが書かれます。読む前の先入観とは裏腹に、どれもそうだよなあということが多く、言い訳できない世代に差し掛かっていることを痛感しました。10年、20年の計を考えてみたいと思います。
ハウツーものともちょっと違いますが、2000年代に入ってから書店で良く見るようになった類の一冊です。類書は28歳やら40代やら色々とありますが、一番年齢に近いものを図書館から借りてきました。以前は、こういう本って世代を十把一絡げにして語り、凄い恥ずかしいよな、意味ないよなと思っていたのですが(今も少し思っています)、読まず嫌いも良くないだろうということと、同世代は典型的にどういうイシューを抱えているのかを知るのは迷いの少なくない年代としてよいかなと思って借りた次第です。
前置きが長くなりましたが、本書は「仕事」「家庭」「お金」「活力」「選択」というカテゴリーにそって豊富な客観データを用いて説明を行っていきます。ちなみに読者を男性と明確に規定した内容ですので、男目線、夫目線が露骨に前面にでており、間違って女性が読むとかなり不快かもしれません。こういう本は全体を通して評価する作品ではないので、自分として気になった点、備忘のため記録しておきたい点に絞って書いてみたいと思います。
まず「仕事」です。全産業的にですが、1997~2007年にかけて30~34歳男性の所得は100~300万円減少している(恐るべき数字です)。1997年に最も多いレンジは500~699万円だったのが、2007年には300~399万円に落ちています。雇用体系ごとの分布のシフトがもっとも効いていると思いますが、そういう厳しい時代に生きているということは認識しとかないといけなさそうです。また、35~49歳は週60時間以上働く割合が最も大きい年代だそうです。60時間というのはやってみると割と普通ですが、まあ長いことは確かです。その上で、選択しとして大きく4つのモデルが提示されます、すなわち①専門職として自分の仕事を追究する、②ゼネラリストとしてマネジメントの道を進む、③出世しなくてよいので定年まで勤め上げる、④転職を考える/独立開業を考える。いずれの選択を行う上でも、1.自分は何が得意か、2.自分が本当にやりたいことはなんなのか、3.何をすることに意味や価値を感じるのか、を良く考えるべきということで、新卒当時とは全く違ったリアルな検討ができるようになっているはずだ、とのことです。
「家庭」では主に結婚と子供/子育てについて、「生活」では家、食事、健康をどうするかについて詳細に記載があります。既に幾つかのライフイベントを経験しているので、それほど驚きのある内容はありませんが、子育てにかんする費用については具体的な数字が多くてよかったです。あくまでモデルケースですが、22歳までの養育費は1640万円、私立中学3年間で380万円(公立141万円)、私立高校313万円(公立156万円)。あと日米の幸福度を比べると、アメリカでは年と取るほどに幸福度があがるのに対して、日本では逆に下がり続けています(平成20年度)。比較的福祉が充実している、かつ勝ち逃げ世代が多いと思われる今のシニアにそういう傾向があるのはなんとも不思議です。アメリカは良く分かりませんが、なぜこうも逆の挙動になるのでしょうか。
最後の「活力」「選択」では、もう35だと思うか、それとも今の知識・経験や人脈などを生かして10年後、20年後を(苦しくとも)見据えるかで大きな差が出ること、保守的でありつつも今やりたいことや今しかできないことをしっかり追求することの意味について書かれます。それを実現するために、楽観的であること、体を鍛えること、まずやってみること、「弱い紐帯」を活用すること、などが書かれます。読む前の先入観とは裏腹に、どれもそうだよなあということが多く、言い訳できない世代に差し掛かっていることを痛感しました。10年、20年の計を考えてみたいと思います。
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