レーティング:★★★★★☆☆
故・色川武大さんが麻雀小説を書くときに使っていた執筆名が、阿佐田 哲也でした。この本は長らく評判は聞いていて、数少ない麻雀小説の中でも伝説的な一冊ですが、ブックオフでまとまって4冊売りに出ていました。迷ったのですが、とりあえず(一)と(二)だけ買いました。結論から言って、全部買っておけばよかった…という感じです。
昨今の麻雀人口減少時代の今になっては化石のような小説ですが、書き出しは戦後間もなくの上野界隈となります。その後、銀座や横浜も舞台として出てきますが、殆どが上野近辺を舞台として話が進みます。まず、この街に今も息づく独特の雰囲気が舞台セッティングに生きてきます。また、話の内容は明るく楽しいものではなく、否応なく博打、特に麻雀をプロ、セミプロとして続けていく人々のもので、極端なバイオレンスこそないものの、正直言ってどしようもない部分も多いのは事実です。しかし、博打の息詰まるやりとりやかけひき、そして本当に濃厚なキャラクター一人一人が生き生きと描写されている点が戦後直後の暑苦しい混沌とした雰囲気と渾然一体となって迫ってきます。
麻雀の話が中心ですので、ルールが分からないと読んでいても半分は理解不能かと思いますので、この時点で若い読者の9割は除外されてしまいそうですが、サブタイトルにあるように青春編と銘打ってあることからもわかる通り、20前後の方はなにかおとなに変わるころの切実なもどかしさに共感できるのではないかと思います。社会性は低いわけですが、能力や鋭利さの高まる年代に苦しむ一人の男性が、魅力的な大人とともに描かれ、青春小説としてもとても素晴らしい出来だと思います。自慢できる話ではありませんが、18~20歳の頃、私も本当によく雀荘に行っていました…。良くも悪くもこれも良い青春の思い出で、徹夜で麻雀して朝の凍てつく空気を吸った時の爽快感と後悔を含んだ気持ちを今でも忘れません。
このBlogの目的は、シンプルです。ただ、私が読んだ本を評していくこと、それだけです。ちなみにジャンルの限定はなく、ただ一つのルールは、私が最初から最後までリアルタイムに読んだ本、それを書評することだけです(従って、昔読んだ本や全て読まなかったものは対象外)。
2015年11月23日月曜日
2015年10月24日土曜日
第127回:「オレたち花のバブル組」池井戸 潤
レーティング:★★★★★★☆
昨年一世を風靡したドラマ「半沢直樹」シリーズを構成する一冊です。2008年刊行で第22回山本周五郎賞候補となりました。ドラマの半沢直樹は後半からリアルタイムで見たのですが、キャストの良さ、テンポの小気味よさなどから最後までかなり楽しみに見ました。そして少し時間が経ちましたが原作を読んだ順番です。こういう時事もの、エンタメものには割と厳しいレーティングを付けるのですが、本作品は小説でもとても面白く、同時にドラマがかなり原作を忠実に再現していることを思い知りました。
基本的にはすでにご存じの方が多いと思いますが、主人公の半沢が銀行の中で急に重要取引先の伊勢志摩ホテルを押し付けられ、金融庁の黒崎検査官との対決を迎える・・という話です。しかしその中には同期の助け合いや友情、サラリーマンの挫折と復活などのとても身近で身につまされるような話がふんだんに盛り込まれています。
月並みですが半沢直樹の行動は、銀行員として正しいことをするという信念に基づいており、銀行員に限らず正しいことをそのまま言う、行動にするという会社の中では時としてとても難しいことが描かれているからこそ大ヒットしたのではないでしょうか。裏返せば社会の人々は色々な矛盾や挫折や限界を感じながらも日々頑張って仕事をしているということかもしれません。半沢シリーズの他の本も読み進めていきたいと思います。
昨年一世を風靡したドラマ「半沢直樹」シリーズを構成する一冊です。2008年刊行で第22回山本周五郎賞候補となりました。ドラマの半沢直樹は後半からリアルタイムで見たのですが、キャストの良さ、テンポの小気味よさなどから最後までかなり楽しみに見ました。そして少し時間が経ちましたが原作を読んだ順番です。こういう時事もの、エンタメものには割と厳しいレーティングを付けるのですが、本作品は小説でもとても面白く、同時にドラマがかなり原作を忠実に再現していることを思い知りました。
基本的にはすでにご存じの方が多いと思いますが、主人公の半沢が銀行の中で急に重要取引先の伊勢志摩ホテルを押し付けられ、金融庁の黒崎検査官との対決を迎える・・という話です。しかしその中には同期の助け合いや友情、サラリーマンの挫折と復活などのとても身近で身につまされるような話がふんだんに盛り込まれています。
月並みですが半沢直樹の行動は、銀行員として正しいことをするという信念に基づいており、銀行員に限らず正しいことをそのまま言う、行動にするという会社の中では時としてとても難しいことが描かれているからこそ大ヒットしたのではないでしょうか。裏返せば社会の人々は色々な矛盾や挫折や限界を感じながらも日々頑張って仕事をしているということかもしれません。半沢シリーズの他の本も読み進めていきたいと思います。
2015年10月12日月曜日
第126回:「こころの読書教室」河合 隼雄
レーティング:★★★★★★☆
河合さんの著作は今までかなり読んできましたが、そのユーモアや優しい語り口を感じるにはこのような口述(セミナー)形式の本がとても良いのではないかと思います。村上春樹さんとの対談も同じような雰囲気のある本で、名著だと思います。
さて、河合さんは大臣まで務めたマルチな方でしたが、本業はユング派の臨床心理士でした。夢というものを入り口に無意識というものを考え、その後、各国の神話や昔話、はては児童文学などまで縦横無尽に読み、その意味について広く論じてきた方で、本人は謙遜されていますがものすごく文学的な能力や関心の高かった方ではないかと思います。
本書はタイトルから分かる通り、先生が生前に愛された沢山の本を紹介しながら、心理学的な見方についても同時に触れていくというものです。4つのチャプターから分かれていますが、最初は「私と”それ”」というもので、いわゆる意識と無意識、ペルソナとエス、そういったものについて触れています。2つめは「心の深み」というもので内界、外界、病といったものについて書いています。3つめは「内なる異性」ということでジェンダーやセクシャリティについて、最後は「心」というもので創造的病いや十牛図といった先生の著作でよく出てくるモチーフで締められます。
自分のための備忘録になってしまいますが、下に本書で紹介されている本のうち、近々読んでみたい、再読してみたいとおもった本を書いておきたいと思います。皆さまも良ければ本屋で除いて頂ければと思います。
山田 太一『遠くの声を探して』
フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』
村上 春樹『アフターダーク』(再読)
井筒 俊彦『イスラーム哲学の原像』
ルーマー・ゴッデン『ねずみ女房』
エマ・ユング『内なる異性-アニムスとアニマ』
C・G・ユング『ユング自伝-思い出・夢・思想』
白洲正子『明恵上人』
どれもタイトルを書くだけで色々と想像が膨らみ、とても面白そうです。時間はかかると思いますが一冊ずつ見つけて読んでいきたいと思います。
河合さんの著作は今までかなり読んできましたが、そのユーモアや優しい語り口を感じるにはこのような口述(セミナー)形式の本がとても良いのではないかと思います。村上春樹さんとの対談も同じような雰囲気のある本で、名著だと思います。
さて、河合さんは大臣まで務めたマルチな方でしたが、本業はユング派の臨床心理士でした。夢というものを入り口に無意識というものを考え、その後、各国の神話や昔話、はては児童文学などまで縦横無尽に読み、その意味について広く論じてきた方で、本人は謙遜されていますがものすごく文学的な能力や関心の高かった方ではないかと思います。
本書はタイトルから分かる通り、先生が生前に愛された沢山の本を紹介しながら、心理学的な見方についても同時に触れていくというものです。4つのチャプターから分かれていますが、最初は「私と”それ”」というもので、いわゆる意識と無意識、ペルソナとエス、そういったものについて触れています。2つめは「心の深み」というもので内界、外界、病といったものについて書いています。3つめは「内なる異性」ということでジェンダーやセクシャリティについて、最後は「心」というもので創造的病いや十牛図といった先生の著作でよく出てくるモチーフで締められます。
自分のための備忘録になってしまいますが、下に本書で紹介されている本のうち、近々読んでみたい、再読してみたいとおもった本を書いておきたいと思います。皆さまも良ければ本屋で除いて頂ければと思います。
山田 太一『遠くの声を探して』
フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』
村上 春樹『アフターダーク』(再読)
井筒 俊彦『イスラーム哲学の原像』
ルーマー・ゴッデン『ねずみ女房』
エマ・ユング『内なる異性-アニムスとアニマ』
C・G・ユング『ユング自伝-思い出・夢・思想』
白洲正子『明恵上人』
どれもタイトルを書くだけで色々と想像が膨らみ、とても面白そうです。時間はかかると思いますが一冊ずつ見つけて読んでいきたいと思います。
2015年9月21日月曜日
第125回:「小太郎の左腕」和田 竜
レーティング:★★★★★☆☆
最近よくレビューしている和田さんの一冊です。奥付を見ると2009年(単行本)発行ということで、著者にとっては初期の作品になるのでしょうか。これは「村上海賊の娘」のようなスケールの大きさはありませんが、こじんまりとしていながら味わいのある一冊です。著者の好きな火縄銃、忍といった主題がふんだんに出てきており、後の作品につながる内容であることが分かります。
最初はある小国が国境付近で衝突するシーンから始まります、そこで一方が敗退し、籠城に備えた準備を始めます。同時に戦いがおこった付近には気難しい爺さんと天才的な技能を持つ若者が居て・・・という展開です。この若者の技量がやや超人的すぎるところが、かなりリアリティを減殺していますが、著者は大胆に超能力的な人や技量というものを描くので、そこは確信犯的なものがあるのだと思います。伝統的な歴史ファンからしたら、歴史小説とは言えない、という声が聞こえてきそうですが・・。
この一冊で面白いのは、日本において如何に早く火縄銃が普及したかというところです。種子島に伝来してから相当早く複製が可能となり、堺では量産からほどなく全国への流通ルートが確立されたということなので、当時から日本の工業と貿易が高度に発展していたことを実感します。読みやすい一冊なので5時間程度で十分に読めるお勧めの一冊です。
最近よくレビューしている和田さんの一冊です。奥付を見ると2009年(単行本)発行ということで、著者にとっては初期の作品になるのでしょうか。これは「村上海賊の娘」のようなスケールの大きさはありませんが、こじんまりとしていながら味わいのある一冊です。著者の好きな火縄銃、忍といった主題がふんだんに出てきており、後の作品につながる内容であることが分かります。
最初はある小国が国境付近で衝突するシーンから始まります、そこで一方が敗退し、籠城に備えた準備を始めます。同時に戦いがおこった付近には気難しい爺さんと天才的な技能を持つ若者が居て・・・という展開です。この若者の技量がやや超人的すぎるところが、かなりリアリティを減殺していますが、著者は大胆に超能力的な人や技量というものを描くので、そこは確信犯的なものがあるのだと思います。伝統的な歴史ファンからしたら、歴史小説とは言えない、という声が聞こえてきそうですが・・。
この一冊で面白いのは、日本において如何に早く火縄銃が普及したかというところです。種子島に伝来してから相当早く複製が可能となり、堺では量産からほどなく全国への流通ルートが確立されたということなので、当時から日本の工業と貿易が高度に発展していたことを実感します。読みやすい一冊なので5時間程度で十分に読めるお勧めの一冊です。
第124回:「人生を変える「習慣」の力」齋藤 孝
レーティング:★★★★☆☆☆
夏に「七つの習慣」を読んで以来、習慣というものに関心を持つようになりました。たしかに日々の様に無意識に実践するからこそ、その積み重ねは人生に大きな影響を与えるのは確実であり、ちょっと気を付けたいと考えています。
最近気を付けたいと思っているのは、摂取カロリーと運動です。20代は好きなものをどれだけ食べても太らず、ライス大盛りとか飲み会の後にラーメンなど普通にやっていたのですが、30代を過ぎると徐々に食べたものが2週間~1カ月後に如実に体脂肪率と体重に跳ね返ってくるようになったことを発見しました。毎週一度はジムで体組成計に乗っているのですが、本当にストレートに日々の生活が反映されます。仕事や会食などで帰りは概して遅く、また出張で思うように休日も時間が取れないので、まとまって運動するのは週1のジムが限界とすれば、なんとか口から入れるものを制限するしかありませんが・・。
さて、本書は齋藤先生が体験的に獲得したいくつかの優れた習慣について紹介しているものです。どれも分かりやすく、また先生が認めているように他の先生の本でもっと詳細に紹介されたりもしているものが大半ですが、幾つか真似してみようかと思うものもあります。備忘も兼ねて、一部だけ列挙します。
1.手帳を一日10回見る
2.疲れたら3秒吸って、2秒止めて、15秒吐く
3.自分のストレス許容量を把握する(何人会うか、何時間働くかを決める)
意外と少ないですが、他にも沢山の習慣が紹介されています。どれも面白いヒントに満ちているので、人によってこれはよいなと思うのは異なると思いますが、それぞれに読み甲斐があると思います。仕事をするときにストップウォッチで測る、というのもよさそうですが、あまり自分にプレッシャーをかけないためにもこれはやめておこうかと思いました。なにより職場でひかれそうですし。
夏に「七つの習慣」を読んで以来、習慣というものに関心を持つようになりました。たしかに日々の様に無意識に実践するからこそ、その積み重ねは人生に大きな影響を与えるのは確実であり、ちょっと気を付けたいと考えています。
最近気を付けたいと思っているのは、摂取カロリーと運動です。20代は好きなものをどれだけ食べても太らず、ライス大盛りとか飲み会の後にラーメンなど普通にやっていたのですが、30代を過ぎると徐々に食べたものが2週間~1カ月後に如実に体脂肪率と体重に跳ね返ってくるようになったことを発見しました。毎週一度はジムで体組成計に乗っているのですが、本当にストレートに日々の生活が反映されます。仕事や会食などで帰りは概して遅く、また出張で思うように休日も時間が取れないので、まとまって運動するのは週1のジムが限界とすれば、なんとか口から入れるものを制限するしかありませんが・・。
さて、本書は齋藤先生が体験的に獲得したいくつかの優れた習慣について紹介しているものです。どれも分かりやすく、また先生が認めているように他の先生の本でもっと詳細に紹介されたりもしているものが大半ですが、幾つか真似してみようかと思うものもあります。備忘も兼ねて、一部だけ列挙します。
1.手帳を一日10回見る
2.疲れたら3秒吸って、2秒止めて、15秒吐く
3.自分のストレス許容量を把握する(何人会うか、何時間働くかを決める)
意外と少ないですが、他にも沢山の習慣が紹介されています。どれも面白いヒントに満ちているので、人によってこれはよいなと思うのは異なると思いますが、それぞれに読み甲斐があると思います。仕事をするときにストップウォッチで測る、というのもよさそうですが、あまり自分にプレッシャーをかけないためにもこれはやめておこうかと思いました。なにより職場でひかれそうですし。
2015年8月23日日曜日
第123回:「のぼうの城」和田 竜
レーティング:★★★★★★☆
今月一度レビューした和田さんのデビュー作です。こちらも本屋では当時かなりのヒットでしたし、盛んに新たな時代小説ということで宣伝されてましたのでご存知の方も多いかもしれません。遅ればせながらやっと読みました。
舞台設定は1590年の羽柴秀吉軍の壮大な小田原攻めの一環として、石田三成が大谷吉継などを率いて忍城(現在の埼玉県行田市付近)を攻める話です。忍というキーワードからなんとなく人じゃものなのかなどと想像していましたが、城攻めでありとても変わった城主(正確には城代)をめぐる話です。読んだばかりの「村上海賊の娘」と比べてしまうのですが、テンポが速く軽やかな展開です。このデビュー作からすでにキャラクター描写が際立っており(ある意味分かりやすい)、毎度和田さんの小説の最後の後日談の部分を読むとせつない気持ちにさせられ、それだけ各登場人物に自然と入れ込んでしまっていることに気づきます。
歴史好きの方にはなにをいまさらという話かもしれませんが、戦国時代は善悪を超えて今とはかなり違うパラダイムが流れていたようです。侍にとっては武士道や生き様、武辺、名誉といったものがとても大事であり、忠義や忠誠も強調される一方、頻繁な裏切りや裏切りの約束、金銭や俸禄による雇用(主)の変更があったりとかなりのフレキシブルさも見られます。また、農民も元武士であったものや、無力さと団結することによる力の結集が表裏一体であったり、割と利害関係で明確に領主と結ばれていたり、封建時代ならではの思考や行動様式が見られるようです。この部分はどんな歴史小説を読んでもいまだに尽きず新しいものが出てきて、とても不思議ですし興味があります。
さわやかな一冊であり、2日程度で十分読めますので関心ある方はぜひ手に取ってみてください。
今月一度レビューした和田さんのデビュー作です。こちらも本屋では当時かなりのヒットでしたし、盛んに新たな時代小説ということで宣伝されてましたのでご存知の方も多いかもしれません。遅ればせながらやっと読みました。
舞台設定は1590年の羽柴秀吉軍の壮大な小田原攻めの一環として、石田三成が大谷吉継などを率いて忍城(現在の埼玉県行田市付近)を攻める話です。忍というキーワードからなんとなく人じゃものなのかなどと想像していましたが、城攻めでありとても変わった城主(正確には城代)をめぐる話です。読んだばかりの「村上海賊の娘」と比べてしまうのですが、テンポが速く軽やかな展開です。このデビュー作からすでにキャラクター描写が際立っており(ある意味分かりやすい)、毎度和田さんの小説の最後の後日談の部分を読むとせつない気持ちにさせられ、それだけ各登場人物に自然と入れ込んでしまっていることに気づきます。
歴史好きの方にはなにをいまさらという話かもしれませんが、戦国時代は善悪を超えて今とはかなり違うパラダイムが流れていたようです。侍にとっては武士道や生き様、武辺、名誉といったものがとても大事であり、忠義や忠誠も強調される一方、頻繁な裏切りや裏切りの約束、金銭や俸禄による雇用(主)の変更があったりとかなりのフレキシブルさも見られます。また、農民も元武士であったものや、無力さと団結することによる力の結集が表裏一体であったり、割と利害関係で明確に領主と結ばれていたり、封建時代ならではの思考や行動様式が見られるようです。この部分はどんな歴史小説を読んでもいまだに尽きず新しいものが出てきて、とても不思議ですし興味があります。
さわやかな一冊であり、2日程度で十分読めますので関心ある方はぜひ手に取ってみてください。
2015年8月22日土曜日
第122回:「流星ワゴン」重松 清
レーティング:★★★★★★★
今年ドラマ化された一冊なので、タイトルを聞いたことがある方、ドラマは見たという方も多いのではないでしょうか。有名な重松さんの一冊であり、遅ればせながら読みました。実は高い評判を聞いていながら重松さんの作品を読むのは初でした。きっかけはドラマが面白いと聞いて何話か断片的にみたことです。香川 照之さんが出てるということでみたのですが、正直前提知識ゼロで設定の意味がよくわからず、やめてしまいました。しかしあの不思議な設定は何なんだろうということが気になり読んでみました。
読んでの感想ですが、これは反則だろうというものです。テーマは一読して分かるとおり父と子(とりわけ息子)です。男性、特に30~40代で自分に息子が居る方にはぐっと身につまされる本ではないでしょうか。正直読み進むのが辛いところが何度もあります。世代、生と死、運命といったものをまざまざと提示してきます。父親と息子の関係はとてもとらえどころがなく、微妙な感じです(母親と娘も違った意味でそうだと思いますが)。わが身を振り返っても解説で見事に書かれているように接している総時間数が圧倒的に足りない気がしましたし、コミュニケーションが(一般的な話ですが)やや両方とも下手だったりするので、ますます疎遠になりがちです。
本書の秀逸なところは単に親子関係を描写するだけではなく、死者の視線を通してこの世界を描くことで、逆説的に生きること、一生懸命生きることについて描いていくところです。そしてそれを可能にする車がワゴンになるのですが、このワゴンに関する下りは何度も泣けるところがでるので公共交通機関では読めません。本書はいわゆるお涙ちょうだいではないのですが、切実な叫びを沢山含んでおり、とてもよい意味で文学的ですし映画的でもあります。
日ごろ見過ごしていること、聞き流していること、なんでもないと思っている時間、父の、息子の目線に立って考えること、そういう凡庸ですが大事なことを思い出させられ、大げさに言えば日々を大切に生きていかないといけないと思われられる一冊です。とてもよい一冊で、お父さん世代はもちろんのことで10代、20代の方にもぜひ読んでいただきたいと思います。
今年ドラマ化された一冊なので、タイトルを聞いたことがある方、ドラマは見たという方も多いのではないでしょうか。有名な重松さんの一冊であり、遅ればせながら読みました。実は高い評判を聞いていながら重松さんの作品を読むのは初でした。きっかけはドラマが面白いと聞いて何話か断片的にみたことです。香川 照之さんが出てるということでみたのですが、正直前提知識ゼロで設定の意味がよくわからず、やめてしまいました。しかしあの不思議な設定は何なんだろうということが気になり読んでみました。
読んでの感想ですが、これは反則だろうというものです。テーマは一読して分かるとおり父と子(とりわけ息子)です。男性、特に30~40代で自分に息子が居る方にはぐっと身につまされる本ではないでしょうか。正直読み進むのが辛いところが何度もあります。世代、生と死、運命といったものをまざまざと提示してきます。父親と息子の関係はとてもとらえどころがなく、微妙な感じです(母親と娘も違った意味でそうだと思いますが)。わが身を振り返っても解説で見事に書かれているように接している総時間数が圧倒的に足りない気がしましたし、コミュニケーションが(一般的な話ですが)やや両方とも下手だったりするので、ますます疎遠になりがちです。
本書の秀逸なところは単に親子関係を描写するだけではなく、死者の視線を通してこの世界を描くことで、逆説的に生きること、一生懸命生きることについて描いていくところです。そしてそれを可能にする車がワゴンになるのですが、このワゴンに関する下りは何度も泣けるところがでるので公共交通機関では読めません。本書はいわゆるお涙ちょうだいではないのですが、切実な叫びを沢山含んでおり、とてもよい意味で文学的ですし映画的でもあります。
日ごろ見過ごしていること、聞き流していること、なんでもないと思っている時間、父の、息子の目線に立って考えること、そういう凡庸ですが大事なことを思い出させられ、大げさに言えば日々を大切に生きていかないといけないと思われられる一冊です。とてもよい一冊で、お父さん世代はもちろんのことで10代、20代の方にもぜひ読んでいただきたいと思います。
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