レーティング:★★★★★★☆
岩波書店から出ている大古典が、本年一冊目のレビューです。中村 元さんは日本を代表する仏教学者ですが、大学時代にある授業をとった時、その先生のお師匠ということで、講義で何度も絶賛されていたのを今でも覚えています。岩波文庫での発刊は1976年、文庫なのに1,000円を超えています。
本書は教団化が進んでいない原始仏教の経典を邦訳したものであり、真理のことばは「ダンマパダ」(パーリ語)、感興のことばは「ウダーナヴァルガ」(同)を出店としており、翻訳に際しては漢語、英語などの後世の役も参考にしているとのことです。特に真理のことばはとても平明な短文で構成されていて、今の世の中でも十分我々の生き方を考えさせられるようなごく日常的な宗教色がほとんどない警句集といった趣です。感興のことばは、それに比較すれば少し長い感じがあり、もう少し論理構成
が長くなっている感じがします。
この原始仏教の良さは、その後の世俗化や高度に複雑化してしまった仏教の書物とは違い、もっと当時の人々の息遣いが聞こえるような切実さとシンプルさがあることです。ここ数年、日本や世界の古典を徐々に読もうとしているので、その意味で本書を読めたのはとても嬉しく、聖書やコーランも読んでみたいところです。本書は注釈を除けはそんなに長い本ではないので折に触れて取り出し、読む機会がありそうです。
このBlogの目的は、シンプルです。ただ、私が読んだ本を評していくこと、それだけです。ちなみにジャンルの限定はなく、ただ一つのルールは、私が最初から最後までリアルタイムに読んだ本、それを書評することだけです(従って、昔読んだ本や全て読まなかったものは対象外)。
2019年1月20日日曜日
2018年12月30日日曜日
第204回:「隠蔽捜査」今野 敏
レーティング:★★★★☆☆☆
最近、本を読むのは結構体力というか知力というか、要は力が居ることなんだなと実感します。10代の頃はそれこそ一日中読んでも大丈夫だったし、一週間に大げさではなく数冊というペースで読めていました。今はそんな時間が日々取れないことは別にしても、結構集中して読むと疲れを感じることがあり、202回、203回及び今回のようなやや軽めというかエンタメ系の読み物に走ってしまいます。難しい哲学の本なんて読んだら、五分で寝てしまいそうです。
さて、本書は今野さんという方の小説で、この方の本は初めて読みます。吉川英治文学新人賞受賞作で、もともとは2005年に刊行とのこと。どうしてこの本を選んだかですが、この前古書店にいってぶらぶらと見ていたら綺麗なのに安くなっており、お試しということで買ったものです。最初の方は慣れない文体で、なんだかあまり盛り上がらない感じでしたが、主人公(警察官僚)の意外な家族の悩みが露呈してから、一気に話が面白くなりました。後半は文字通りぐいぐいと一気に読んでしまいました。
本書で今年のレビューは最後となりそうです。振り返るとしめて25冊ということで、最少であったら昨年よりはぐっと回復しましたが、このブログを始めてからはかなり少ない水準となりました。来年はもう少し時間が取れそうな感じもあり、好きな本をどんどん読み続けていきたいと思います。
最近、本を読むのは結構体力というか知力というか、要は力が居ることなんだなと実感します。10代の頃はそれこそ一日中読んでも大丈夫だったし、一週間に大げさではなく数冊というペースで読めていました。今はそんな時間が日々取れないことは別にしても、結構集中して読むと疲れを感じることがあり、202回、203回及び今回のようなやや軽めというかエンタメ系の読み物に走ってしまいます。難しい哲学の本なんて読んだら、五分で寝てしまいそうです。
さて、本書は今野さんという方の小説で、この方の本は初めて読みます。吉川英治文学新人賞受賞作で、もともとは2005年に刊行とのこと。どうしてこの本を選んだかですが、この前古書店にいってぶらぶらと見ていたら綺麗なのに安くなっており、お試しということで買ったものです。最初の方は慣れない文体で、なんだかあまり盛り上がらない感じでしたが、主人公(警察官僚)の意外な家族の悩みが露呈してから、一気に話が面白くなりました。後半は文字通りぐいぐいと一気に読んでしまいました。
本書で今年のレビューは最後となりそうです。振り返るとしめて25冊ということで、最少であったら昨年よりはぐっと回復しましたが、このブログを始めてからはかなり少ない水準となりました。来年はもう少し時間が取れそうな感じもあり、好きな本をどんどん読み続けていきたいと思います。
2018年12月25日火曜日
第203回:「オレたちバブル入行組」池井戸 潤
レーティング:★★★★★★☆
第96回でレビューをしていますが、ほぼ3年ぶりくらいに再読しました。正直にいって読んでいる間中、なんか読んだ気がかなりするなと思いつつ、面白いのでそのまま読んでしまいました。2度目ですが、改めてよくできている一冊だと思いました。
内容ですが、支店長の強引な決定により融資を決定した取引先が、突然倒産。いろいろと調べているとどうも計画倒産の疑いがあり・・というものです。本作は様々なテーマを織り込んでおり、下請けに甘んじる中小企業の困難さ、銀行の支店に圧し掛かるプレッシャー、その中でいかに正義を貫くか、またどうして道を誤るか、更にはいちかばちかの中国進出など現代的なテーマを多数読み取れます。
年末年始にはこういうさらりと読めるエンタメものを読むのが結構好きです。また、出張などにもっていくにも重くなく良いかと思います。
第96回でレビューをしていますが、ほぼ3年ぶりくらいに再読しました。正直にいって読んでいる間中、なんか読んだ気がかなりするなと思いつつ、面白いのでそのまま読んでしまいました。2度目ですが、改めてよくできている一冊だと思いました。
内容ですが、支店長の強引な決定により融資を決定した取引先が、突然倒産。いろいろと調べているとどうも計画倒産の疑いがあり・・というものです。本作は様々なテーマを織り込んでおり、下請けに甘んじる中小企業の困難さ、銀行の支店に圧し掛かるプレッシャー、その中でいかに正義を貫くか、またどうして道を誤るか、更にはいちかばちかの中国進出など現代的なテーマを多数読み取れます。
年末年始にはこういうさらりと読めるエンタメものを読むのが結構好きです。また、出張などにもっていくにも重くなく良いかと思います。
第202回:「銀翼のイカロス」池井戸 潤
レーティング:★★★★★★☆
久々に池井戸さんの一冊を読みました。いわゆる半沢直樹シリーズの第4冊目で、JALの再生を扱った一冊です。基本的には、JALの債権者である半沢直樹属する東京中央銀行が、政権が作ったタスク・フォースに債権放棄を迫られるが・・というお話です。この関係ではよく半沢シリーズで出てくる金融庁もいつもどおり出てきます。たぶん著者の問題意識、すなわち恣意的な航空行政、自身を顧みなかった航空業界、人気取りに走り正当性を失った時の政権などが強く念頭にあり、現実をデフォルメしながらもなぞる展開となっており、相当の取材をしたうえで批判的に状況を読み解いていきます。
中堅中小企業を取り扱った半沢直樹シリーズの前作までとは異なり、本作はダイナミックに政府、行政、ほかの債権者などのプレーヤーが出てくるので、スケール感がありとても面白い内容となっています。最近は半沢シリーズ新作が連載されているのかどうか知りませんが、ぜひまた大きなテーマを取り扱ってもらえると面白いものが仕上がるのではないかと思います。これを書いている12/25現在、日経平均が1000円以上下げていますが、2019年はどういうマーケットになるのでしょうか。システミックなリスクや戦争といった大きな顕在化した地政学リスクがなければ大きく底割れすることはないような気がしますが、来年もボラタイルなマーケットになりそうな気がします。
久々に池井戸さんの一冊を読みました。いわゆる半沢直樹シリーズの第4冊目で、JALの再生を扱った一冊です。基本的には、JALの債権者である半沢直樹属する東京中央銀行が、政権が作ったタスク・フォースに債権放棄を迫られるが・・というお話です。この関係ではよく半沢シリーズで出てくる金融庁もいつもどおり出てきます。たぶん著者の問題意識、すなわち恣意的な航空行政、自身を顧みなかった航空業界、人気取りに走り正当性を失った時の政権などが強く念頭にあり、現実をデフォルメしながらもなぞる展開となっており、相当の取材をしたうえで批判的に状況を読み解いていきます。
中堅中小企業を取り扱った半沢直樹シリーズの前作までとは異なり、本作はダイナミックに政府、行政、ほかの債権者などのプレーヤーが出てくるので、スケール感がありとても面白い内容となっています。最近は半沢シリーズ新作が連載されているのかどうか知りませんが、ぜひまた大きなテーマを取り扱ってもらえると面白いものが仕上がるのではないかと思います。これを書いている12/25現在、日経平均が1000円以上下げていますが、2019年はどういうマーケットになるのでしょうか。システミックなリスクや戦争といった大きな顕在化した地政学リスクがなければ大きく底割れすることはないような気がしますが、来年もボラタイルなマーケットになりそうな気がします。
2018年11月23日金曜日
第201回:「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」加藤 陽子
レーティング:★★★★★★★
発行時にベストセラーになった一冊です。著者は加藤さんで、東大の文学部の教授をされています。平易な語り口ですが、深い洞察力と相手国側や国際社会側の視点も持って語られ、歴史が立体的に浮き上がってきます。ちなみに神奈川を代表する栄光学園で5日間講義を行った際の記録がまとめられたのが本書です。その内容の素晴らしさと教育的な価値に気づかれたのでしょう、ご本人と先生方が一緒にまとめられた本ということです。
本書は、日清、日露、日中そして太平洋戦争を俯瞰することで、どうしてかくも立て続けに戦争を行ったのか、また国民や指導部はどのように戦争に突き進んでいってしまったのかを書いています。よくある俗説のように軍国主義の一部の勢力が国民を抑圧し、騙すことで戦争に突き進んだという簡単な見方は消え、むしろ国民運動としての積極的な支持があり、さらにその中心には日本の国家としての安全保障という確信的な利益をいかにして列強との間で確保するかという長期的戦略がベースにあったことが明らかにされていきます。
日清はアジアからの独立、日露は欧米からの独立(福沢諭吉の脱亜入欧もでてきます)、資源確保と列強との間の勢力争いとなった日中(しかしながら中国の戦略もあり内部に深く取り込まれていく)、更に勝利の目算がないままそれでも国民の多くが熱狂的に支持した太平洋戦争。この過程では普通選挙や人権擁護といった普通の議論が巷ではなされ、しかし土地本位の政治体制が金持ち優遇を脱せず、軍部が民衆を代表するいわゆる野党として現れ、与党のような実権を掌握する過程が描かれます。国内の分裂や政治不全が戦争への道を敷いたという意味で、更には国民もそれを多くの場合に支持をしたという意味で、現代の荒れる世界にも考えうるような課題を突き付けていることが分かります。
このボリュームで戦争終了までの極めて質の高い近代通史が読めるというのは画期的なことで、最上位レーティングとしました。
発行時にベストセラーになった一冊です。著者は加藤さんで、東大の文学部の教授をされています。平易な語り口ですが、深い洞察力と相手国側や国際社会側の視点も持って語られ、歴史が立体的に浮き上がってきます。ちなみに神奈川を代表する栄光学園で5日間講義を行った際の記録がまとめられたのが本書です。その内容の素晴らしさと教育的な価値に気づかれたのでしょう、ご本人と先生方が一緒にまとめられた本ということです。
本書は、日清、日露、日中そして太平洋戦争を俯瞰することで、どうしてかくも立て続けに戦争を行ったのか、また国民や指導部はどのように戦争に突き進んでいってしまったのかを書いています。よくある俗説のように軍国主義の一部の勢力が国民を抑圧し、騙すことで戦争に突き進んだという簡単な見方は消え、むしろ国民運動としての積極的な支持があり、さらにその中心には日本の国家としての安全保障という確信的な利益をいかにして列強との間で確保するかという長期的戦略がベースにあったことが明らかにされていきます。
日清はアジアからの独立、日露は欧米からの独立(福沢諭吉の脱亜入欧もでてきます)、資源確保と列強との間の勢力争いとなった日中(しかしながら中国の戦略もあり内部に深く取り込まれていく)、更に勝利の目算がないままそれでも国民の多くが熱狂的に支持した太平洋戦争。この過程では普通選挙や人権擁護といった普通の議論が巷ではなされ、しかし土地本位の政治体制が金持ち優遇を脱せず、軍部が民衆を代表するいわゆる野党として現れ、与党のような実権を掌握する過程が描かれます。国内の分裂や政治不全が戦争への道を敷いたという意味で、更には国民もそれを多くの場合に支持をしたという意味で、現代の荒れる世界にも考えうるような課題を突き付けていることが分かります。
このボリュームで戦争終了までの極めて質の高い近代通史が読めるというのは画期的なことで、最上位レーティングとしました。
2018年11月10日土曜日
第200回:「シンドローム」真山 仁
レーティング:★★★★★☆☆
ハードカバーで上下二巻、900ページ近い力作です。おなじみのハゲタカ・シリーズの最新作であり、2015年から雑誌に連載されていたものをまとめたものです。フィクションの形をとっていますが、多少のフェイクも入れながらかなり大胆に事実をベースにした構成をとっています。上巻はほとんどの部分が福島第一原子力発電所の事故とその後、数日間の動きが描写されます。このあたりは新聞やテレビで十分に繰り返された話をなぞっている感じもあり、正直間延びした感じを受けますが、下巻になり、なぜそこまで丁寧に描いたのかがなんとなくわかるような気がしてきます。あとは、あそこまでページを割いて原発について掘り下げるというのは、著者のエネルギー問題への個人的な関心の高さも感じることができます。
買収者側は資本の論理を推し進めながら、うまく利益をあげる取引を仕込み、被買収側はどうにかして生存を図るわけですが、その対立軸は古来からの勧善懲悪的で図式としてはやや単純すぎるかなという印象を受けました。他方、本作の優れたところは、単に企業買収の話にとどまらず、原発、エネルギー政策といった大きな構図を視野に入れて、広がりのあるストーリーを描き出しているところです。また、これも言い古された話ではありますが、時の政府の対応についても非常に厳しい筆致で描き切っています。
かなり賛否が分かれている様ではありますが、私としては著者の問題意識は十分に伝わってきますし、エンタメ作品でありながら、高い視座と広い視野のある作品に仕上がっていると思いますので、エネルギー関係者やそういう業界に携わる学生さんなどにも十分面白く読めるのではないかと思います。著者にはポスト原発のFiT制度下の再生可能エネルギーを巡るビジネスなども続編として描いてほしいと願っています。
そういえば気づくと第200回目のレビューとなりました。最初のポストが2011年1月(東日本大震災の2か月前)ですから、足掛け7年9か月での200巻達成となりました。変動はありますが、1年30冊弱のペースでしょうか。今後もぼちぼち読んではアップしていきたいと思います。
ハードカバーで上下二巻、900ページ近い力作です。おなじみのハゲタカ・シリーズの最新作であり、2015年から雑誌に連載されていたものをまとめたものです。フィクションの形をとっていますが、多少のフェイクも入れながらかなり大胆に事実をベースにした構成をとっています。上巻はほとんどの部分が福島第一原子力発電所の事故とその後、数日間の動きが描写されます。このあたりは新聞やテレビで十分に繰り返された話をなぞっている感じもあり、正直間延びした感じを受けますが、下巻になり、なぜそこまで丁寧に描いたのかがなんとなくわかるような気がしてきます。あとは、あそこまでページを割いて原発について掘り下げるというのは、著者のエネルギー問題への個人的な関心の高さも感じることができます。
買収者側は資本の論理を推し進めながら、うまく利益をあげる取引を仕込み、被買収側はどうにかして生存を図るわけですが、その対立軸は古来からの勧善懲悪的で図式としてはやや単純すぎるかなという印象を受けました。他方、本作の優れたところは、単に企業買収の話にとどまらず、原発、エネルギー政策といった大きな構図を視野に入れて、広がりのあるストーリーを描き出しているところです。また、これも言い古された話ではありますが、時の政府の対応についても非常に厳しい筆致で描き切っています。
かなり賛否が分かれている様ではありますが、私としては著者の問題意識は十分に伝わってきますし、エンタメ作品でありながら、高い視座と広い視野のある作品に仕上がっていると思いますので、エネルギー関係者やそういう業界に携わる学生さんなどにも十分面白く読めるのではないかと思います。著者にはポスト原発のFiT制度下の再生可能エネルギーを巡るビジネスなども続編として描いてほしいと願っています。
そういえば気づくと第200回目のレビューとなりました。最初のポストが2011年1月(東日本大震災の2か月前)ですから、足掛け7年9か月での200巻達成となりました。変動はありますが、1年30冊弱のペースでしょうか。今後もぼちぼち読んではアップしていきたいと思います。
2018年11月4日日曜日
第199回:「垂直の記憶」山野井 泰史
レーティング:★★★★★★☆
前回レビューから1ヵ月以上不本意にも空いてしまいました。出張もあり、なんやかやと休日もイベントがあり、ゆっくり本を読むことができなかったのですが、11月に入り少し時間が出来ました。
さて、本書は登山、とりわけアルパイン・スタイル、ビッグウォール・クライミング・スタイルにおける名著と言われている一冊です。山野井さんは一般にはそこまで有名ではないかもしれませんが、その道のスーパースターであり、日本における第一人者の一人といって差し支えないのではないでしょうか。また、奥様の妙子さんも女性アルピニストとして世界的に知られています。本書は山野井さんが時に奥様ともチームを組み、ヒマラヤに挑んだ記録を本にまとめたものです。サブタイトルが「岩と雪の7章」ってかっこよすぎます。
私はアルパインもビッグウォールもやったことがないんですが、本書は真のクライマーの物語であり、読んでいるだけでこちらまでドキドキする臨場感があります。最後の「ギャチュン・カン北壁」をピークとして、どの登山も壮絶も壮絶であり、またこういうことをやりきってしまう身体能力や意志の強さというのは想像を絶しています。最近、夜テレビでやっている「クレージー・ジャーニー」という番組を、ちょうど会社から帰ったあたりでやっていることもあり見るのですが、この番組も想像を絶するような旅や挑戦をしている人を紹介しており、ものすごく面白いです。山野井さんもぜひ出てほしいところです。
しかし、8000メートルを超える高峰に一人で突っ込んでいくとかそういう話ばかりなのですが、本当にすごいです。ご本人も認めているようにやや特殊な世界なので、それをもって社会的に偉いとか偉くないというのは全くないのですが、その突き抜けた情熱と実行力と見方にはあこがれを感じます。
前回レビューから1ヵ月以上不本意にも空いてしまいました。出張もあり、なんやかやと休日もイベントがあり、ゆっくり本を読むことができなかったのですが、11月に入り少し時間が出来ました。
さて、本書は登山、とりわけアルパイン・スタイル、ビッグウォール・クライミング・スタイルにおける名著と言われている一冊です。山野井さんは一般にはそこまで有名ではないかもしれませんが、その道のスーパースターであり、日本における第一人者の一人といって差し支えないのではないでしょうか。また、奥様の妙子さんも女性アルピニストとして世界的に知られています。本書は山野井さんが時に奥様ともチームを組み、ヒマラヤに挑んだ記録を本にまとめたものです。サブタイトルが「岩と雪の7章」ってかっこよすぎます。
私はアルパインもビッグウォールもやったことがないんですが、本書は真のクライマーの物語であり、読んでいるだけでこちらまでドキドキする臨場感があります。最後の「ギャチュン・カン北壁」をピークとして、どの登山も壮絶も壮絶であり、またこういうことをやりきってしまう身体能力や意志の強さというのは想像を絶しています。最近、夜テレビでやっている「クレージー・ジャーニー」という番組を、ちょうど会社から帰ったあたりでやっていることもあり見るのですが、この番組も想像を絶するような旅や挑戦をしている人を紹介しており、ものすごく面白いです。山野井さんもぜひ出てほしいところです。
しかし、8000メートルを超える高峰に一人で突っ込んでいくとかそういう話ばかりなのですが、本当にすごいです。ご本人も認めているようにやや特殊な世界なので、それをもって社会的に偉いとか偉くないというのは全くないのですが、その突き抜けた情熱と実行力と見方にはあこがれを感じます。
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