レーティング:★★★★★☆☆
遅ればせながら、あけましておめでとうございます。この冬はかなり寒い感じがしますが、いかがお過ごしでしょうか。2014年は結局26冊をレビューしました。2013年よりは少し多く、ほぼ2012年と並ぶ水準です。さて、今年は何冊読めるのか分かりませんが、引き続きマイペースに続けていきたいと思います。
この一冊は最近よく読んでいる池井戸さんの一冊です。ちょっと続いていますが、次はかなりテイストの違う一冊ですので・・。池井戸さんはミステリー仕立ての作品が結構多いのですが、昭和に浮かんでは消えたM資金を題材とした作品です。ある経営者の満たされざる欲、そこに勤める人々の志と挫折、仕事もプライベートも。ここまで書くとなんだかありきたりな作品に思えますが、登場人物、特に悪役の人々が屈折しており、なんとも魅力的な造形となっていますので、ミステリー好き以外にも十分お勧めできる内容です。
実はこの1冊、12月中に読み終わっていたのですがなかなか事情がありレビューできず・・、ちょっと簡単ですがまず今年1回目のレビューでした。
このBlogの目的は、シンプルです。ただ、私が読んだ本を評していくこと、それだけです。ちなみにジャンルの限定はなく、ただ一つのルールは、私が最初から最後までリアルタイムに読んだ本、それを書評することだけです(従って、昔読んだ本や全て読まなかったものは対象外)。
2015年1月22日木曜日
2014年12月28日日曜日
第108回:「かばん屋の相続」池井戸 潤
レーティング:★★★★★☆☆
池井戸さんの作品を11月あたりから順次読んでいるんですが、結構多作な作家のようでかなりの作品を量産されています。元々長編のイメージがあったのですが、短編も結構面白いものが多く、むしろ短編の方があっているのではないかと余計なお世話を思ってしまったりします。標題の短編を含む5作品が収められています。
いつもどおり、大体はメガバンクで下町の支店に勤め、中小企業を担当している若手銀行員が主人公ですが、表題作は信金職員がでてくる珍しい作品です。中小企業の業況の傾きと銀行の対応、また銀行内部での不正や上司の横暴といった池井戸さん得意のテーマで書かれていきますが、表題作はむしろ借り手である中小企業のお家騒動を中心に描いていて趣向が変わっています。ネットなどでは盛んに書かれていますが、有名なカバンメーカーの内紛を下敷きとしていることは明白で、あくまでフィクションですが、レビュー済の「空飛ぶタイヤ」のようなスタイルです。
中身としては必ずしも明るくはありませんが、短編でさっと読めるので年末年始のやや気ぜわしい時でもお勧めです。池井戸さんの作品はどの書店に行っても沢山ならんでいるので見つけるのが難しいということもないと思います。私の地元の駅の書店は本当に品ぞろえが良くないのですが、池井戸さんの本だけはこれでもかと並んでいます。それだけ売れ筋なんでしょうね。
池井戸さんの作品を11月あたりから順次読んでいるんですが、結構多作な作家のようでかなりの作品を量産されています。元々長編のイメージがあったのですが、短編も結構面白いものが多く、むしろ短編の方があっているのではないかと余計なお世話を思ってしまったりします。標題の短編を含む5作品が収められています。
いつもどおり、大体はメガバンクで下町の支店に勤め、中小企業を担当している若手銀行員が主人公ですが、表題作は信金職員がでてくる珍しい作品です。中小企業の業況の傾きと銀行の対応、また銀行内部での不正や上司の横暴といった池井戸さん得意のテーマで書かれていきますが、表題作はむしろ借り手である中小企業のお家騒動を中心に描いていて趣向が変わっています。ネットなどでは盛んに書かれていますが、有名なカバンメーカーの内紛を下敷きとしていることは明白で、あくまでフィクションですが、レビュー済の「空飛ぶタイヤ」のようなスタイルです。
中身としては必ずしも明るくはありませんが、短編でさっと読めるので年末年始のやや気ぜわしい時でもお勧めです。池井戸さんの作品はどの書店に行っても沢山ならんでいるので見つけるのが難しいということもないと思います。私の地元の駅の書店は本当に品ぞろえが良くないのですが、池井戸さんの本だけはこれでもかと並んでいます。それだけ売れ筋なんでしょうね。
2014年12月27日土曜日
第107回:「プロフェッショナルマネジャー」ハロルド・ジェニーン
レーティング:★★★★★★☆
年の瀬も年の瀬になってしまいました。12月は前半に色々あり、なかなか自宅のPCに触れることもできずこんなタイミングになってしまいましたが、本書を含めて3冊読み終わっていますので、なんとか年内にすべてレビューをアップしたいと思います。
さて、書店で一時期結構平積みされていた本書、ユニクロの柳井さんが「これが私の最高の教科書だ」と写真付きで帯に登場しています。2004年発刊と書いているのでなんともう10年も経っているんですね。光陰矢のごとしです。内容は、米国のITTというコングロマリットを経営した著者が自身のキャリアを振り返りつつ、経営の要諦について語るというものです。まあここまで書くとありきたりな本ということで終わるわけですが、本書は本音と建前が上手く併記されていてとても面白いところに特徴があります。
まず非常に実績を出した経営者なので厳しい記述が随所にあるんですが、他方、そうはいっても人間だから厳しくやるだけじゃだめだよね、とか、成功する経営者は沢山いるけど、アルコールとか異性問題で身を持ち崩す例も非常に多い、とか、給料はやっぱり一つの指標なので高いものを目指すべきだけど、他方若い時は経験の方がずっと大事、などなどと身近なトピックを冷静な観察眼を通して分析していきます。
あと、とても楽しいとおもったもう一つの理由は頭でっかちにならず、率直に過去の失敗についても記述しており、さらに全編にビジネスで前向きに努力して成功していくことについての楽観的でポジティブな見方が満ちているところです。ここは自分の反省にもつながるのですが、やたらむずかしく考えたり、必要以上に高いものを求めたりしていないか、よく振り返る必要があるように感じています。時代はやや古いですが、内容は現代でもまったく遜色なく読めるもので、少し分厚いですがビジネス・パーソンに非常にお勧めです。30代以上の人の方が頭に入りやすい内容かもしれません。
年の瀬も年の瀬になってしまいました。12月は前半に色々あり、なかなか自宅のPCに触れることもできずこんなタイミングになってしまいましたが、本書を含めて3冊読み終わっていますので、なんとか年内にすべてレビューをアップしたいと思います。
さて、書店で一時期結構平積みされていた本書、ユニクロの柳井さんが「これが私の最高の教科書だ」と写真付きで帯に登場しています。2004年発刊と書いているのでなんともう10年も経っているんですね。光陰矢のごとしです。内容は、米国のITTというコングロマリットを経営した著者が自身のキャリアを振り返りつつ、経営の要諦について語るというものです。まあここまで書くとありきたりな本ということで終わるわけですが、本書は本音と建前が上手く併記されていてとても面白いところに特徴があります。
まず非常に実績を出した経営者なので厳しい記述が随所にあるんですが、他方、そうはいっても人間だから厳しくやるだけじゃだめだよね、とか、成功する経営者は沢山いるけど、アルコールとか異性問題で身を持ち崩す例も非常に多い、とか、給料はやっぱり一つの指標なので高いものを目指すべきだけど、他方若い時は経験の方がずっと大事、などなどと身近なトピックを冷静な観察眼を通して分析していきます。
あと、とても楽しいとおもったもう一つの理由は頭でっかちにならず、率直に過去の失敗についても記述しており、さらに全編にビジネスで前向きに努力して成功していくことについての楽観的でポジティブな見方が満ちているところです。ここは自分の反省にもつながるのですが、やたらむずかしく考えたり、必要以上に高いものを求めたりしていないか、よく振り返る必要があるように感じています。時代はやや古いですが、内容は現代でもまったく遜色なく読めるもので、少し分厚いですがビジネス・パーソンに非常にお勧めです。30代以上の人の方が頭に入りやすい内容かもしれません。
2014年11月24日月曜日
第106回:「IMF(上・下)」ポール・ブルースタイン
レーティング:★★★★★★☆
主として1997~1999年のアジア通貨危機への国際社会、とりわけIMFの対応についてノンフィクションの形で書かれた一冊です。欧米の経済ジャーナリズムの質の高さを感じる一冊で、主にワシントンを舞台にはしていますが、ロシアやアジアについても十分に取材されており、大変臨場感のある一冊です。アジア通貨危機はグローバリゼーション黎明期の大きな経済事象(事件)でしたが、その内幕を克明に記録したものとして歴史的にも十分価値のある一冊だと思えます。ただし、なぜか本書(原本)が刊行されてから10年以降経ってから邦訳されており、なんともそのタイミングは拍子抜けします。まだ、性質は違いますがリーマンショックあたりで翻訳していれば商業的にも違ったものになっていたのではないでしょうか。
舞台はワシントンのIMFです。いわずとしれた国際通貨基金であり、世界トップレベルのマクロエコノミストが集うところとして知られています。ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授を始めとしてアンチ国際機関の大物は多数いて、たしかにそういう言説を読むとなかなかすっきりするところではあるのですが、世の中はそんなに単純なものではなく、本書はIMFの功罪を丁寧に客観的に、また独善的にならずに評価しています。
タイ、インドネシア、韓国、ロシア、メキシコなどの事例がつまびらかに紹介されますが、IMFを中心とした国際社会の救済が上手く行ったところもそうでないところもありますが、個人的にもった感想はどれも紙一重だったんだな、ということと多くの場合後付けでしか評価できないんだな、ということです。もちろん当初の見たてや計画からのかい離で評価するわけですが、マクロ経済や国際金融という分野である以上、本当的に外生的なファクターが多くて、ややIMFの職員に同情的な感想を持ちました。他方、米国や日本財務省もこれらの決定には大きな発言権を持っていたことがわかり、単に一つの国際機関に留まらない作品になっています。さらに面白いのは被支援国の内情もつぶさに描いており、グローバルな視点を獲得していてこれまた素晴らしいところです。
難点は最初に書いたとおり、ちょっと題材が古いため、いまさら(書き尽くされた感のあるテーマで)興味を持続させにくいこと、訳がところどころ読みにくく、基本的な経済単語と思われるところに誤りではないと思うのですが、見慣れない用法が見られるところでしょうか。しかしながら、全体としての訳は原書に忠実で正確だと思います。こういう分野を志す方には、本当に面白い一冊ではないでしょうか。長いので年末年始の読書のお供に。
主として1997~1999年のアジア通貨危機への国際社会、とりわけIMFの対応についてノンフィクションの形で書かれた一冊です。欧米の経済ジャーナリズムの質の高さを感じる一冊で、主にワシントンを舞台にはしていますが、ロシアやアジアについても十分に取材されており、大変臨場感のある一冊です。アジア通貨危機はグローバリゼーション黎明期の大きな経済事象(事件)でしたが、その内幕を克明に記録したものとして歴史的にも十分価値のある一冊だと思えます。ただし、なぜか本書(原本)が刊行されてから10年以降経ってから邦訳されており、なんともそのタイミングは拍子抜けします。まだ、性質は違いますがリーマンショックあたりで翻訳していれば商業的にも違ったものになっていたのではないでしょうか。
舞台はワシントンのIMFです。いわずとしれた国際通貨基金であり、世界トップレベルのマクロエコノミストが集うところとして知られています。ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授を始めとしてアンチ国際機関の大物は多数いて、たしかにそういう言説を読むとなかなかすっきりするところではあるのですが、世の中はそんなに単純なものではなく、本書はIMFの功罪を丁寧に客観的に、また独善的にならずに評価しています。
タイ、インドネシア、韓国、ロシア、メキシコなどの事例がつまびらかに紹介されますが、IMFを中心とした国際社会の救済が上手く行ったところもそうでないところもありますが、個人的にもった感想はどれも紙一重だったんだな、ということと多くの場合後付けでしか評価できないんだな、ということです。もちろん当初の見たてや計画からのかい離で評価するわけですが、マクロ経済や国際金融という分野である以上、本当的に外生的なファクターが多くて、ややIMFの職員に同情的な感想を持ちました。他方、米国や日本財務省もこれらの決定には大きな発言権を持っていたことがわかり、単に一つの国際機関に留まらない作品になっています。さらに面白いのは被支援国の内情もつぶさに描いており、グローバルな視点を獲得していてこれまた素晴らしいところです。
難点は最初に書いたとおり、ちょっと題材が古いため、いまさら(書き尽くされた感のあるテーマで)興味を持続させにくいこと、訳がところどころ読みにくく、基本的な経済単語と思われるところに誤りではないと思うのですが、見慣れない用法が見られるところでしょうか。しかしながら、全体としての訳は原書に忠実で正確だと思います。こういう分野を志す方には、本当に面白い一冊ではないでしょうか。長いので年末年始の読書のお供に。
2014年11月22日土曜日
第105回:「銀行総務特命」池井戸 潤
レーティング:★★★★★☆☆
本日2個目の在庫一掃レビューです。3作連続で池井戸さんでまたまた銀行ものですが、本作はミステリーではなく、短編小説の集まりです。テーマは全て一緒で標題のとおり銀行の総務担当が様々な不祥事に対処し、その過程で組織や個人の悲哀を浮かび上がらせるというもので、おそらく最も池井戸さんが得意としているか書きたかったテーマの作品ではないかと思います。
さて、中身は短編なので色々なのですが、各種ハラスメント、不正、個人不祥事などが次々勃発し、それに組織の一員として対応していくというものです。人間それぞれ事情がありますが、ペーソスに溢れた話が続き、「銀行仕置人」と似たような話と思いきや作品のクオリティはこちらの方がずっと良いと思いました。ご興味ある方はぜひ読み比べてみてください。
短編で移動中などに少しずつ読めるので、年末年始のお供にどうでしょうか。
本日2個目の在庫一掃レビューです。3作連続で池井戸さんでまたまた銀行ものですが、本作はミステリーではなく、短編小説の集まりです。テーマは全て一緒で標題のとおり銀行の総務担当が様々な不祥事に対処し、その過程で組織や個人の悲哀を浮かび上がらせるというもので、おそらく最も池井戸さんが得意としているか書きたかったテーマの作品ではないかと思います。
さて、中身は短編なので色々なのですが、各種ハラスメント、不正、個人不祥事などが次々勃発し、それに組織の一員として対応していくというものです。人間それぞれ事情がありますが、ペーソスに溢れた話が続き、「銀行仕置人」と似たような話と思いきや作品のクオリティはこちらの方がずっと良いと思いました。ご興味ある方はぜひ読み比べてみてください。
短編で移動中などに少しずつ読めるので、年末年始のお供にどうでしょうか。
第104回:「銀行仕置人」池井戸 潤
レーティング:★★★★☆☆☆
前回に続いて池井戸さんの作品です。あまり有名ではない作品のようですが、2005年に単行本として刊行され、文庫は34刷までいっており、さすが人気作家というところです。
内容ですが、某メガバンクの本店営業第3部次長がある会社向けの融資を焦げ付けさせ、その責任を問われて・・という半沢直樹シリーズにあるパターンです。違うのは、基本的にミステリーとまでは言わないまでも、謎解きを進めていく構成であることと、主人公(黒部)のキャラがあまり立っていないことくらいでしょうか。一つ面白いのは、デジタルフィッシュというIT系の会社がでてくるのですが、これはいっせいを風靡したなんとかフィッシュという会社を題材に(少なくとも意識)しているのではないかと思えるところです。もちろん虚実織り交ぜているはずですが。。。
銀行もの、半沢もの、ミステリーものが好きな方にはお勧めの一冊です。個人的にはあまり響くものはなかったのですが、好みの問題であり、面白いは面白かったです。
前回に続いて池井戸さんの作品です。あまり有名ではない作品のようですが、2005年に単行本として刊行され、文庫は34刷までいっており、さすが人気作家というところです。
内容ですが、某メガバンクの本店営業第3部次長がある会社向けの融資を焦げ付けさせ、その責任を問われて・・という半沢直樹シリーズにあるパターンです。違うのは、基本的にミステリーとまでは言わないまでも、謎解きを進めていく構成であることと、主人公(黒部)のキャラがあまり立っていないことくらいでしょうか。一つ面白いのは、デジタルフィッシュというIT系の会社がでてくるのですが、これはいっせいを風靡したなんとかフィッシュという会社を題材に(少なくとも意識)しているのではないかと思えるところです。もちろん虚実織り交ぜているはずですが。。。
銀行もの、半沢もの、ミステリーものが好きな方にはお勧めの一冊です。個人的にはあまり響くものはなかったのですが、好みの問題であり、面白いは面白かったです。
2014年11月3日月曜日
第103回:「空飛ぶタイヤ」池井戸 潤
レーティング:★★★★★★☆
読書の秋、なのですが中々読書が進みません。しかし、レビューに挙げてないだけで読了しているものが本書以外に一冊あるので、まあまあ悪くないペースかもしれません。皆さんは読書の秋、いかがでしょうか。最近思うのは、ずっと昔は電車の中で漫画を読んでる人、本を読んでいる人、携帯(ガラケー)を見ている人などが分散していたのですが、今は殆どの人がスマホを見ている人になっていることです。自分も結構そうなっているときがあるのですが改めてみると結構びびる光景です。スマホに浸食されて、日本人の読書本数というのは(元々減少しているところ)更に減っているのではないでしょうか。ちなみに日本だけかと思いきや、海外でも正直言って余り変わらない光景を見ますので、グローバルな現象なのかもしれません。
さて、標題の一冊は2000年代に起きた某自動車メーカーにおけるトラックのリコール隠しを題材にしたものです。実際の事故(事件)、それも社会的に大きな反響を読んだものを下敷きにしており、更に登場するメーカー及び同系列の銀行が日本最大の財閥を露骨にイメージさせるものなので、著者の勇気は先ず凄いなと思いました。なかなかタブーとは言いませんが、ここまで批判的に小説として再構築できる覚悟も力量も凄まじいものがあります。ちなみにWikiによれば、さすがにスポンサーとの兼ね合いからか民法では放送できず、WOWOWでドラマ化して高い評価を受けたそうです。ぜひ読んで頂きたい秀作です。
末尾についている大沢在昌さんの解説が秀逸なので読んで頂きたいのですが、自分として凄いと思った点を。まず上に書いたとおり、著者のプロ小説家として覚悟を固めた批判的記述に凄味があります。そこまで?という程に日本の一流というものへの批判を繰り広げます。これがどれだけあっているのかは密接に接したことに無い私にはよく分かりませんが、著者は元々小説家になる前に内部にこの財閥に所属していたはずなので色々と思う時があるのかもしれません。次に小説家として、無駄もムラもない描写が本当に上手いと感じました。上下(文庫)で900ページほどあったと思いますが、だれることなく、かといって飛ばし過ぎでわけがわからなくなることもありません。初期の村上龍さんはここらへんのコンパクトで情感豊かな描写が特徴でしたが、遜色ないレベルで筆が進んでいきます。三つ目には、よく人物が描かれていて、更に会社や個人の欲、組織の病理に切り込みつつ、人はどうあるべきかということも不合理に生きる多くの人間を出しながら考えさせられるところです。
エンタメ寄りな作家なのかと失礼なとらえ方をしていましたが、時代が変わっても心を打つ、また2000年代の日本の経済や経済事件ということを知るうえ手も非常に優れた作品と思われ、6つ星としていますが、気分的には6.5くらい献上してもよいのではと思う力作でした。著者の他の作品も読んでみようと思います。
読書の秋、なのですが中々読書が進みません。しかし、レビューに挙げてないだけで読了しているものが本書以外に一冊あるので、まあまあ悪くないペースかもしれません。皆さんは読書の秋、いかがでしょうか。最近思うのは、ずっと昔は電車の中で漫画を読んでる人、本を読んでいる人、携帯(ガラケー)を見ている人などが分散していたのですが、今は殆どの人がスマホを見ている人になっていることです。自分も結構そうなっているときがあるのですが改めてみると結構びびる光景です。スマホに浸食されて、日本人の読書本数というのは(元々減少しているところ)更に減っているのではないでしょうか。ちなみに日本だけかと思いきや、海外でも正直言って余り変わらない光景を見ますので、グローバルな現象なのかもしれません。
さて、標題の一冊は2000年代に起きた某自動車メーカーにおけるトラックのリコール隠しを題材にしたものです。実際の事故(事件)、それも社会的に大きな反響を読んだものを下敷きにしており、更に登場するメーカー及び同系列の銀行が日本最大の財閥を露骨にイメージさせるものなので、著者の勇気は先ず凄いなと思いました。なかなかタブーとは言いませんが、ここまで批判的に小説として再構築できる覚悟も力量も凄まじいものがあります。ちなみにWikiによれば、さすがにスポンサーとの兼ね合いからか民法では放送できず、WOWOWでドラマ化して高い評価を受けたそうです。ぜひ読んで頂きたい秀作です。
末尾についている大沢在昌さんの解説が秀逸なので読んで頂きたいのですが、自分として凄いと思った点を。まず上に書いたとおり、著者のプロ小説家として覚悟を固めた批判的記述に凄味があります。そこまで?という程に日本の一流というものへの批判を繰り広げます。これがどれだけあっているのかは密接に接したことに無い私にはよく分かりませんが、著者は元々小説家になる前に内部にこの財閥に所属していたはずなので色々と思う時があるのかもしれません。次に小説家として、無駄もムラもない描写が本当に上手いと感じました。上下(文庫)で900ページほどあったと思いますが、だれることなく、かといって飛ばし過ぎでわけがわからなくなることもありません。初期の村上龍さんはここらへんのコンパクトで情感豊かな描写が特徴でしたが、遜色ないレベルで筆が進んでいきます。三つ目には、よく人物が描かれていて、更に会社や個人の欲、組織の病理に切り込みつつ、人はどうあるべきかということも不合理に生きる多くの人間を出しながら考えさせられるところです。
エンタメ寄りな作家なのかと失礼なとらえ方をしていましたが、時代が変わっても心を打つ、また2000年代の日本の経済や経済事件ということを知るうえ手も非常に優れた作品と思われ、6つ星としていますが、気分的には6.5くらい献上してもよいのではと思う力作でした。著者の他の作品も読んでみようと思います。
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