レーティング:★★★★☆☆☆
第42回の樋口氏同様に、好きなビジネスパーソンである冨山氏の本です。第5、6、36回でも著者の本をレビューしていますので、おそらくこのブログで最も頻出かもしれません。樋口氏を上回る有名人で、過去にもご紹介しているので改めての説明は不要かと思いますが、国内の独立系戦略コンサルティング会社の経営者から産業再生機構のCOOに転じ、現在は企業再生系のコンサルティング会社の代表取締役CEOをされています。
本書は2011年2月初版であり、東日本大震災の少し前の本です。非常にざっくり要約すれば、早いうちの挫折経験は成長する上で欠かすことのできない大事なものであり、積極的に(チャレンジし)挫折すべし、というものです。もちろん単に挫折して腐るのではなくて、真摯に反省し、前向きに学べ、ということも書いてあります。こう書いてしまうと、なんだそんなことかと身も蓋もない感じですが、良くも悪くもこのメッセージが本書のほぼすべてかと思います。
面白いのは、著者の挫折経験に触れた部分です。挫折例の一つとして出てくる、自信を持って司法試験を受けて落ちた(その翌年には合格していますが・・)というのはあまり適切な例とは感じられませんが、もう一つの例であるビジネススクールを出て日本に凱旋して、会社に戻ってみると大変な状況になってしまっていて、関西に携帯電話の会社を作るため出向するストーリーがいい感じです。このストーリーは著者の他の本でもかなり触れられているので本当に大変かつ有益な経験だったと思いますが、30代で出向して苦労する、といったところは世の中の私を含めた一般的な働き手にも身近な話題であり、共感もできるところです。
なお、矛盾するようですが著者の挫折経験に触れた部分は本書の半分以上というわけではなく、期待したよりずっと少なく、やや親父の説教的な部分が長いので著者に思い入れのない方などは飽きてしまう本かもしれません。それでも文中で出てくる「禍福は糾える縄の如し」(史記)や「人生は意外に長い」(著者)はなかなか良い言葉かと思いました。また、著者の父方の祖父母と父のエピソードは心打たれるものがあります。若手や中間管理職に向けて書かれた熱い本ですのでご興味のある方はぜひどうぞ。
このBlogの目的は、シンプルです。ただ、私が読んだ本を評していくこと、それだけです。ちなみにジャンルの限定はなく、ただ一つのルールは、私が最初から最後までリアルタイムに読んだ本、それを書評することだけです(従って、昔読んだ本や全て読まなかったものは対象外)。
2012年7月8日日曜日
2012年6月23日土曜日
第45回:「プレイバック」レイモンド・チャンドラー
レーティング:★★★★★★★
既に2作をレビューしているアメリカのハードボイルド作家であるレイモンド・チャンドラーの遺作です。1958年の作品、舞台は今までの作品ではロサンジェルスが中心だったのですが、今回はエスメラルダという仮想の町です。
今回も主人公のマーロウは、不本意ながらも難事件に巻き込まれていくのですが、突然ある人物を見つけ出し、居場所を特定してほしいという電話がかかってくるところから話が始まります。ネタばれしてはどうしようもないのですが、居場所を特定する対象の女性の抱える秘密が殆ど最後まで明かされず、長い小説ではありませんが、その秘密が強い求心力となってどんどん読み進めることができると思います。
私が読んだバージョンは、ハヤカワから出ている清水俊二氏の出ている訳(正直、少し不親切な訳)ですが、その後ろについている「あとがき」が秀逸です。全編に貫かれているやや暗い雰囲気、ホテルのロビーで語られる本筋にほとんど影響がないように思えるエピソード(内容はかなり強烈)など、いままでのチャンドラーのマーロウ・シリーズには見られないものが指摘されており、確かにそうだと非常に納得してしまいます。安易な解釈をするのは可能だと思いますが、あれこれ後講釈を垂れるよりは、素直にそういう側面をもった作品だということで楽しむことができると良いかと思います(念のため清水氏は安易な解釈も後講釈もしていません)。閉塞感と明るさが同居したなんとも魅力的な雰囲気を持つ作品です。
残るマーロウ・シリーズも読み進めたいと思います。アメリカのハードボイルドに関心ある方に、お勧めの一冊です。
既に2作をレビューしているアメリカのハードボイルド作家であるレイモンド・チャンドラーの遺作です。1958年の作品、舞台は今までの作品ではロサンジェルスが中心だったのですが、今回はエスメラルダという仮想の町です。
今回も主人公のマーロウは、不本意ながらも難事件に巻き込まれていくのですが、突然ある人物を見つけ出し、居場所を特定してほしいという電話がかかってくるところから話が始まります。ネタばれしてはどうしようもないのですが、居場所を特定する対象の女性の抱える秘密が殆ど最後まで明かされず、長い小説ではありませんが、その秘密が強い求心力となってどんどん読み進めることができると思います。
私が読んだバージョンは、ハヤカワから出ている清水俊二氏の出ている訳(正直、少し不親切な訳)ですが、その後ろについている「あとがき」が秀逸です。全編に貫かれているやや暗い雰囲気、ホテルのロビーで語られる本筋にほとんど影響がないように思えるエピソード(内容はかなり強烈)など、いままでのチャンドラーのマーロウ・シリーズには見られないものが指摘されており、確かにそうだと非常に納得してしまいます。安易な解釈をするのは可能だと思いますが、あれこれ後講釈を垂れるよりは、素直にそういう側面をもった作品だということで楽しむことができると良いかと思います(念のため清水氏は安易な解釈も後講釈もしていません)。閉塞感と明るさが同居したなんとも魅力的な雰囲気を持つ作品です。
残るマーロウ・シリーズも読み進めたいと思います。アメリカのハードボイルドに関心ある方に、お勧めの一冊です。
2012年6月17日日曜日
第44回:「やさしくわかる会社税務」白土 英成(編著)
レーティング★★★☆☆☆☆
学生のころは一部の学校・学部の人を除いてほとんど関係がないのに、社会人になってみるとでわりと多くの業界・職種で馴染みが出てくるものの一つが、会計かと思います。帳簿を付ける、自社他社の財務諸表を見る、決算の仕事をするなど触れる機会が色々あります。一方、本書が対象とする税務は仕事上、触れるには触れるわけですが、体系だった研修や大学の授業も少なく、なかなか理解しがたい世界です。勤め人の多くが確定申告などする必要もないし、所得税、酒税など払う機会は多くてもなかなか学ぶ機会がない(そもそもあまり学ぶ必要も差し迫ってない)ものかと思います。
この本は1999年刊行とずいぶん古く、しかも税務の世界は税理士試験を受ける人がかなり頻繁にチェックしないといけないほど、制度や税率の改正が多い世界だそうなので、情報の細部は既に使えなくなっていると思いますが、会社税務の大枠について知るにはなかなか良い本でした。おそらく類書は(会計と違ってそこまで)多くはないと思いますが、すぐれたものがたくさんあるかと思います。
こういう所謂ハウツーというかノウハウ本の類は、評価するのが困難ですが、私のようなド初心者にも理解可能なレベルで最低限の知識は載せているという意味では十分かと思います。
学生のころは一部の学校・学部の人を除いてほとんど関係がないのに、社会人になってみるとでわりと多くの業界・職種で馴染みが出てくるものの一つが、会計かと思います。帳簿を付ける、自社他社の財務諸表を見る、決算の仕事をするなど触れる機会が色々あります。一方、本書が対象とする税務は仕事上、触れるには触れるわけですが、体系だった研修や大学の授業も少なく、なかなか理解しがたい世界です。勤め人の多くが確定申告などする必要もないし、所得税、酒税など払う機会は多くてもなかなか学ぶ機会がない(そもそもあまり学ぶ必要も差し迫ってない)ものかと思います。
この本は1999年刊行とずいぶん古く、しかも税務の世界は税理士試験を受ける人がかなり頻繁にチェックしないといけないほど、制度や税率の改正が多い世界だそうなので、情報の細部は既に使えなくなっていると思いますが、会社税務の大枠について知るにはなかなか良い本でした。おそらく類書は(会計と違ってそこまで)多くはないと思いますが、すぐれたものがたくさんあるかと思います。
こういう所謂ハウツーというかノウハウ本の類は、評価するのが困難ですが、私のようなド初心者にも理解可能なレベルで最低限の知識は載せているという意味では十分かと思います。
2012年5月27日日曜日
第43回:「金融アンバンドリング戦略」大垣 尚司
レーティング:★★★★★★☆
2004年に初版を迎えた1冊、著者の大垣氏は興銀出身で当時は立命館大学大学院教授という肩書になっています。米国でロースクールを出ていることもあるのか、極めて理路整然と日本の金融界(特に規制、技術及び競争環境)について整理がなされ、規制緩和による業態クロスの進出、機能毎の分化(アンバンドリング)が進んでいるか述べられます。しかし著者の見立てでは、いずれも不十分であり、特にアンバンドリングが持つ破壊力(金融業界の変革可能性)とそのメリット、デメリットが詳細に検討されます。
圧巻なのは、著者の知識と構想の深さと広さ。金融業といっても色々な業態があるわけですが、投資銀行、商業銀行、信託、保険、ファイナンス会社など幅広いものを的確につかんで、それらを機能に分解して議論しています。また、単に現状を解説するのに留まらず、望ましい規制変更の方向性、アンバンドリング後のバンドリング(再組み合わせ)戦略についても具体性をもって言及しています。また、金融機関の経営陣であった経験も生かして、机上の空論にならず新ビジネスモデルを数量的にも意味があることを検証しており、説得力があります。
本書が世に出てから8年、内容の一部が実現しているものがありますが、多くはまだまだ実現していないようです。当然ながら、だからといって本書の価値が傷つくことはありません。ただ、なんでそうならなかったのかを考えると、幾つか仮説が思いつきます。一つは、予想以上に厳しい経済状況/収益環境が続いたため、既存の業態の改廃、新規の業態の創設がコスト的に困難だった可能性があります(リスクをとるには相応の収益裏付けや資本蓄積が必要になるわけで。ただし、逆にいえば後述のとおりアンバンドルせざるを負えないほど追い込まれもしなかった、ともいえるかもしれません。)。
もう一つは、日本の金融業がアンバンドリングに大きな魅力を感じなかった可能性です。たとえば、機能分化して競争力のない部門を分社化したり、売却したりというのは相当なコストや経営上の手数、ステークホルダーからの反発を招くわけですが、それをリスクをとってやるくらいなら現状を維持したほうが良いという判断があったのかもしれません。
著者は数年に一度著作を出されているようで(現状では本書しか読んだことがありませんが・・)、ぜひ今の時点でのアップデート版も出してほしいと思いました。歴史の風雪に検証されていないという意味でレーティングは6にしていますが、本当に舌を巻いてしまう中身の濃い1冊だと思います。
2004年に初版を迎えた1冊、著者の大垣氏は興銀出身で当時は立命館大学大学院教授という肩書になっています。米国でロースクールを出ていることもあるのか、極めて理路整然と日本の金融界(特に規制、技術及び競争環境)について整理がなされ、規制緩和による業態クロスの進出、機能毎の分化(アンバンドリング)が進んでいるか述べられます。しかし著者の見立てでは、いずれも不十分であり、特にアンバンドリングが持つ破壊力(金融業界の変革可能性)とそのメリット、デメリットが詳細に検討されます。
圧巻なのは、著者の知識と構想の深さと広さ。金融業といっても色々な業態があるわけですが、投資銀行、商業銀行、信託、保険、ファイナンス会社など幅広いものを的確につかんで、それらを機能に分解して議論しています。また、単に現状を解説するのに留まらず、望ましい規制変更の方向性、アンバンドリング後のバンドリング(再組み合わせ)戦略についても具体性をもって言及しています。また、金融機関の経営陣であった経験も生かして、机上の空論にならず新ビジネスモデルを数量的にも意味があることを検証しており、説得力があります。
本書が世に出てから8年、内容の一部が実現しているものがありますが、多くはまだまだ実現していないようです。当然ながら、だからといって本書の価値が傷つくことはありません。ただ、なんでそうならなかったのかを考えると、幾つか仮説が思いつきます。一つは、予想以上に厳しい経済状況/収益環境が続いたため、既存の業態の改廃、新規の業態の創設がコスト的に困難だった可能性があります(リスクをとるには相応の収益裏付けや資本蓄積が必要になるわけで。ただし、逆にいえば後述のとおりアンバンドルせざるを負えないほど追い込まれもしなかった、ともいえるかもしれません。)。
もう一つは、日本の金融業がアンバンドリングに大きな魅力を感じなかった可能性です。たとえば、機能分化して競争力のない部門を分社化したり、売却したりというのは相当なコストや経営上の手数、ステークホルダーからの反発を招くわけですが、それをリスクをとってやるくらいなら現状を維持したほうが良いという判断があったのかもしれません。
著者は数年に一度著作を出されているようで(現状では本書しか読んだことがありませんが・・)、ぜひ今の時点でのアップデート版も出してほしいと思いました。歴史の風雪に検証されていないという意味でレーティングは6にしていますが、本当に舌を巻いてしまう中身の濃い1冊だと思います。
2012年5月20日日曜日
第42回:「変人力」樋口 泰行
レーティング:★★★★★☆☆
現在マイクロソフト日本法人の代表執行役社長の樋口さんの著作です。出版されたのは2007年12月で、再建中のダイエーの社長を辞められて1年2カ月ほどたったころとなります。内容は、ダイエーの社長を務められた2005年5月から2006年10月までの体験を振り返り、その中から経営者に必要な3つの力をピックアップして説明するものとなっています。
樋口さんの著作については第17回にレビューしており、その時にプロフィールも詳細にご紹介していますので、ご興味あるかたはそちらも併せ読んでいただければと思いますが、引き続き(著者のファンであることもあり)面白い内容となっています。以前、学生だったときに好きな経営者について書けという宿題があり、色々考えたのですが結局著者を取り上げたことがあります。
さて、産業再生機構についてはご存じの方が多いと思いますが、その機構が取り組んだ大型案件の一つがダイエーでした。ダイエーは現在もGMS業界の主要プレーヤーですが、80年代、90年代までのダイエーは現在とは比べものにならない存在感と勢いを誇っており、そのダイエーが産業再生機構の支援を受けるというのはかなり象徴的な「事件」でありました。また、同時にスポンサーとして参画したのが国内PEの草分けであるアドバンテッジ・パートナーズと商社の丸紅ということで、これまた興味深い組み合わせであり、色々な意味で注目された案件でした。
その後、産業再生機構はダイエー株を丸紅とイオンに譲渡し、現在も基本的にこの2社が株主として経営に参画しています。一つ残念なのは、この株式譲渡の過程ではダイエーと株主間で大きな軋轢があったとされていたのですが、その内実については十分に語られていない点です。推測のカギとしては「引き続き貢献させてほしい」と記者会見でコメントした(2006年7月)という記述があり、相応に納得していない様子が伺えます。引退した経営者ではないので、さまざまな影響や社会的インパクトを考慮されたのだろうと考えられます。
なお、タイトルは「変人力」という安易な新書かタレント本のような寒いものになっていますが、受けを狙ったタイトル設定の誤り典型例で、樋口さんは「現場力」、「戦略力」及び(最後に)「変人力」が必要だとはっきり書いており、このどちらかというと末節である点のみをタイトルとしてしまったのはいかにも出版社的発想で残念です。残念な部分を連続して挙げてしまったものの、日本政府や企業、ファンドが2000年代に真剣に取り組んだ産業再生の試みを知る上でも、また一人の現役経営者の記録としても非常に面白い良著であることは間違いありません。
現在マイクロソフト日本法人の代表執行役社長の樋口さんの著作です。出版されたのは2007年12月で、再建中のダイエーの社長を辞められて1年2カ月ほどたったころとなります。内容は、ダイエーの社長を務められた2005年5月から2006年10月までの体験を振り返り、その中から経営者に必要な3つの力をピックアップして説明するものとなっています。
樋口さんの著作については第17回にレビューしており、その時にプロフィールも詳細にご紹介していますので、ご興味あるかたはそちらも併せ読んでいただければと思いますが、引き続き(著者のファンであることもあり)面白い内容となっています。以前、学生だったときに好きな経営者について書けという宿題があり、色々考えたのですが結局著者を取り上げたことがあります。
さて、産業再生機構についてはご存じの方が多いと思いますが、その機構が取り組んだ大型案件の一つがダイエーでした。ダイエーは現在もGMS業界の主要プレーヤーですが、80年代、90年代までのダイエーは現在とは比べものにならない存在感と勢いを誇っており、そのダイエーが産業再生機構の支援を受けるというのはかなり象徴的な「事件」でありました。また、同時にスポンサーとして参画したのが国内PEの草分けであるアドバンテッジ・パートナーズと商社の丸紅ということで、これまた興味深い組み合わせであり、色々な意味で注目された案件でした。
その後、産業再生機構はダイエー株を丸紅とイオンに譲渡し、現在も基本的にこの2社が株主として経営に参画しています。一つ残念なのは、この株式譲渡の過程ではダイエーと株主間で大きな軋轢があったとされていたのですが、その内実については十分に語られていない点です。推測のカギとしては「引き続き貢献させてほしい」と記者会見でコメントした(2006年7月)という記述があり、相応に納得していない様子が伺えます。引退した経営者ではないので、さまざまな影響や社会的インパクトを考慮されたのだろうと考えられます。
なお、タイトルは「変人力」という安易な新書かタレント本のような寒いものになっていますが、受けを狙ったタイトル設定の誤り典型例で、樋口さんは「現場力」、「戦略力」及び(最後に)「変人力」が必要だとはっきり書いており、このどちらかというと末節である点のみをタイトルとしてしまったのはいかにも出版社的発想で残念です。残念な部分を連続して挙げてしまったものの、日本政府や企業、ファンドが2000年代に真剣に取り組んだ産業再生の試みを知る上でも、また一人の現役経営者の記録としても非常に面白い良著であることは間違いありません。
2012年4月23日月曜日
第41回:「企業再生の基礎知識」高木 新二郎
レーティング:★★★★☆☆☆
第38回でレビューした本の共著者の一人である高木新二郎氏の著作です。
新書らしく、平易な文章でトピックへの導入として幅広い領域をカバーしています。まず、財務上の倒産に関するキーワードが解説され、倒産についての基礎知識が続き、PEファンドやTAマネージャーといった比較的あらたなコンセプトについての説明、倒産法制の概観で締めくくられます。
本書が書かれたのは、竹中大臣(当時)が不良債権処理プログラムを発表した後の2003年です。当時はバブルの後遺症や長期の景気低迷によって多くの大企業が危機的な状況に陥っていたときであり、本書も不良債権処理プログラムに期待を示しつつ、PEファンド、TAマネージャー(外部からの傭兵)、DIPファイナンスといったものにかなり手放しの賛意表明がされています。それらが必ずしも上手くいったわけではないことは、周知のとおりですが、いずれにせよ2003年当時の時代背景を思い起こすと、本書で書かれていることの(当時の)切実さや高揚感が良く分かります。
なお、著者は弁護士であることからも自明ですが、本書の5チャプターのうち一番内容がコンパクトかつ読み応えがあるのは第5チャプターの「倒産法制の現在」です。本書が書かれてから10年弱が経過していますが、民事再生、会社更生を軸とした法制の形は今と変わっていませんので、現在でも読む価値ありかと思います。
第38回でレビューした本の共著者の一人である高木新二郎氏の著作です。
新書らしく、平易な文章でトピックへの導入として幅広い領域をカバーしています。まず、財務上の倒産に関するキーワードが解説され、倒産についての基礎知識が続き、PEファンドやTAマネージャーといった比較的あらたなコンセプトについての説明、倒産法制の概観で締めくくられます。
本書が書かれたのは、竹中大臣(当時)が不良債権処理プログラムを発表した後の2003年です。当時はバブルの後遺症や長期の景気低迷によって多くの大企業が危機的な状況に陥っていたときであり、本書も不良債権処理プログラムに期待を示しつつ、PEファンド、TAマネージャー(外部からの傭兵)、DIPファイナンスといったものにかなり手放しの賛意表明がされています。それらが必ずしも上手くいったわけではないことは、周知のとおりですが、いずれにせよ2003年当時の時代背景を思い起こすと、本書で書かれていることの(当時の)切実さや高揚感が良く分かります。
なお、著者は弁護士であることからも自明ですが、本書の5チャプターのうち一番内容がコンパクトかつ読み応えがあるのは第5チャプターの「倒産法制の現在」です。本書が書かれてから10年弱が経過していますが、民事再生、会社更生を軸とした法制の形は今と変わっていませんので、現在でも読む価値ありかと思います。
2012年4月22日日曜日
第40回:「渋谷ではたらく社長の告白」藤田 晋
レーティング:★★★★☆☆☆
お陰様で第40回目となりました。さて、この本はサイバーエージェント創業者かつ社長である藤田氏の創業記録といったところです。生い立ち、学生時代、ベンチャーとの出会い、起業、上場そして結婚といったエピソードが包み隠さず語られており、ビジネスに関わるものとしてのみならず、一個人としても興味深い内容になっています。
この本を読んで思い出した一冊があります。同じく若くして経営者となったタリーズコーヒージャパンの松田康太氏の「すべては一杯のコーヒーから」で、こちらは2008年ころ読んで強烈な印象を受けました。丁度、普通の高校生が同年代の学生が出ている甲子園の試合を見てショックを受ける、そんな感じです。松田氏の本はタリーズのコーヒーを飲むというユーザーとしての経験があるので、親近感が湧いたのですが、実は藤田氏の本にも、というか藤田氏自身について個人的に親近感をもって読み進めました。
実はもう10年も以上前に一度だけ藤田氏の講演を聞いたことがあります。正確にはサイバーエージェントの採用説明会に出席、私は結構前の方の席に座っていて間近で藤田氏が語り始め、なぜインターネットか、なぜベンチャーかということを熱く語られたというものです。わりと狭い一室に椅子が並べられ、わけもわからず座っている学生たちの前で、相当忙しかったのでしょう、遅刻してきた藤田社長はこころなしかかなりやつれていて、白っぽい顔をしていた記憶がありますが、喋りは大変に流暢でメモなども一切見ずに熱弁をふるいました。今となってはその時の話の中身はあまり覚えていませんが、とにかく社長が若かったこと、そして採用説明会にも関わらず社長自らが熱弁を振るったことが印象に残っており、自身の就職活動を通じてかなり記憶に残った会社でした。
サイバーエージェントは今アメーバピグなどのサービスで人気を博しているよう(私は一度もやったことがありません)ですが、私が就職活動をしていた頃も出始めとはいえ、丁度ネットバブル華やかな頃だったので、日経新聞にも登場していました。その後、本書によればネットバブル崩壊などで会社売却を真剣に模索するなど、かなり厳しい状況に追い込まれたことがあるようですが、現在までこれだけの知名度と業績を残しているのは素直に称賛されていいものかと思います。
インターネット関係の会社でありながら、コアの技術というものがなく始めた割には、社長やその周りの構想力や事業化力、高いセールス能力などに支えられ、独自のポジションを獲得していった裏側には、苦悩と猛烈な努力があったというのはこの本から初めて知ることであり、藤田さんすごいなぁという感を新たにしました。最後に話を伺って10年以上経っていますが、まだまだ進化しているようです。応援したいと思います。
お陰様で第40回目となりました。さて、この本はサイバーエージェント創業者かつ社長である藤田氏の創業記録といったところです。生い立ち、学生時代、ベンチャーとの出会い、起業、上場そして結婚といったエピソードが包み隠さず語られており、ビジネスに関わるものとしてのみならず、一個人としても興味深い内容になっています。
この本を読んで思い出した一冊があります。同じく若くして経営者となったタリーズコーヒージャパンの松田康太氏の「すべては一杯のコーヒーから」で、こちらは2008年ころ読んで強烈な印象を受けました。丁度、普通の高校生が同年代の学生が出ている甲子園の試合を見てショックを受ける、そんな感じです。松田氏の本はタリーズのコーヒーを飲むというユーザーとしての経験があるので、親近感が湧いたのですが、実は藤田氏の本にも、というか藤田氏自身について個人的に親近感をもって読み進めました。
実はもう10年も以上前に一度だけ藤田氏の講演を聞いたことがあります。正確にはサイバーエージェントの採用説明会に出席、私は結構前の方の席に座っていて間近で藤田氏が語り始め、なぜインターネットか、なぜベンチャーかということを熱く語られたというものです。わりと狭い一室に椅子が並べられ、わけもわからず座っている学生たちの前で、相当忙しかったのでしょう、遅刻してきた藤田社長はこころなしかかなりやつれていて、白っぽい顔をしていた記憶がありますが、喋りは大変に流暢でメモなども一切見ずに熱弁をふるいました。今となってはその時の話の中身はあまり覚えていませんが、とにかく社長が若かったこと、そして採用説明会にも関わらず社長自らが熱弁を振るったことが印象に残っており、自身の就職活動を通じてかなり記憶に残った会社でした。
サイバーエージェントは今アメーバピグなどのサービスで人気を博しているよう(私は一度もやったことがありません)ですが、私が就職活動をしていた頃も出始めとはいえ、丁度ネットバブル華やかな頃だったので、日経新聞にも登場していました。その後、本書によればネットバブル崩壊などで会社売却を真剣に模索するなど、かなり厳しい状況に追い込まれたことがあるようですが、現在までこれだけの知名度と業績を残しているのは素直に称賛されていいものかと思います。
インターネット関係の会社でありながら、コアの技術というものがなく始めた割には、社長やその周りの構想力や事業化力、高いセールス能力などに支えられ、独自のポジションを獲得していった裏側には、苦悩と猛烈な努力があったというのはこの本から初めて知ることであり、藤田さんすごいなぁという感を新たにしました。最後に話を伺って10年以上経っていますが、まだまだ進化しているようです。応援したいと思います。
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